早川書房の本

グリフォンズ・ガーデン

グリフォンズ・ガーデン 早瀬耕

1992年に刊行された早瀬耕のデビュー作である単行本を、改訂し文庫化したもの。先だって刊行され、読んで衝撃を受けた『プラネタリウムの外側』の前日譚ということで発売を楽しみにしていた。元はゼミの卒業制作として書かれた作品と知る。(出典 HAYAKAWA BOOKS & MAGAZINE の 2017/9/13 の記事より) コンピュータや工学系についてはほとんど詳しい知識はないけれど、登場する恋人たちの会話の流れで難しい言葉もある程度、理解できる構造になっている。 結局、最後はどうなったのか。まだ読み終えたばかりで受け取ったものが上手くまとまらない。人によって捉え方も違うと思う。読んだ誰かと語り合いたい気持ち。 『プラネタリウムの外側』のときも思ったけれど、何度も読み返したい本の一冊に仲間入りした。

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放たれた虎

放たれた虎 ミック・ヘロン

前の二作が面白かったエスピオナージュのシリーズもの邦訳最新なので手にとってみた。日本でもリストラ部屋とか報道にのったことがあるけどそれのスパイ版。イギリス諜報部だと007が有名だけど(笑)ポンコツもいて、彼らが押し込められている部署が通称泥の家。しかも遅い馬と呼ばれてる彼らを主人公にしたシリーズももう三作目。 今回は泥の家を率いる往年の名スパイ〜今は昼間から酒飲んで部下の面前でも平気で屁をひる〜の元アル中の秘書が拐われて、という話。最初は設定が荒唐無稽という気もしたが最後には上手くまとめてあって感心。アクションも適度にあって面白かった。これはおすすめ。

翔けゆく風

翔けゆく風 五代ゆう

ようやく新刊。2017年は一冊しか出なくて書き手を2人に増やした割にはなんだかなーと思ってましたが、筆者の1人宵野ゆめさんが健康上の理由でダウン、当面は五代ゆうさん1人で書かれるとのこと。あらまあ、なんということ。。 よって本来宵野さんが書いていたヤガパートに、五代パートのヴァレリウスパートが混ざるような形になって、お話的にはあんまり進展しない形に。 とはいえ、まさかのあのお方再登場が懐かしい。清楚な深窓の美姫として登場しながら、最後は淫語連発の狂気キャラにまで魔改造されてしまった人なので、なかなか完全な更生は難しいのだけど可哀想。グラ爺とか関わってそう気配ですね。

特捜部Q―自撮りする女たち―

特捜部Q―自撮りする女たち― ユッシ・エーズラ・オールスン

デンマークのミステリで本国とドイツでは特に人気があるらしいシリーズの邦訳最新。もう七作目になるんだな。有能だけど偏屈な警部補と謎のシリア人アシスタントというコンビによる未解決事件捜査班もいつのまにか精神的に問題を抱えてるっぽい女性アシスタントにひょろひょろの若手警官という四人チームとなっている。本作ではチームの女性の精神的な問題がついに限界に達してしまう。彼女がなぜそうなったのかを突き止めようとするチームメンバーに、チーム解散の危機までが訪れる。一方で退職した元上司から依頼された未解決となっている女性の撲殺事件、現在発生している失業中の女性を狙った連続轢き逃げ事件という一見関連の無さそうな二つの事件までが発生し、という話。平行していくつかの話が語り手を変えて進んでいくがこれが混乱に陥らず最終的に落ち着くべきところに収斂していく見事な構成が素晴らしい。長く続いているシリーズだがマンネリにも陥らず素晴らしい。早くも次作が楽しみでならない。

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コールド・コールド・グラウンド

コールド・コールド・グラウンド エイドリアン・マッキンティ

1981年、イギリス連合王国の一部である北アイルランドの首都ベルファスト。 当時の北アイルランド地域は、イギリスとアイルランド、プロテスタントとカソリック、ナショナリストとユニオリストという相反する存在が互いに自分の是を声高に主張し殺しあう場所だった。 そこで起こったのは体内に残された楽譜、別の誰かと交換された被害者の手という猟奇的な連続殺人事件。 事件を担当する巡査部長ダフィは、カソリック教徒で、また大学で心理学を学んだという警察隊の中の異分子で、その宗教的、政治的に微妙な立場は、捜査を困難なものにする。 IRAやUDR、UFFと言った名称が頻出するので巻末を確認しながら読み進めたが、慣れてくると苦にはならない。 それよりも各陣営の主張や立場を理解するに従い、犯人探しだけでなく「こいつが悪い」と名指しできないこの紛争の複雑さと矛盾に満ちた政治や宗教の問題についても考え込んだ。

プラネタリウムの外側

プラネタリウムの外側 早瀬耕

とにかくびっくりした。 読んでいて、ヤバイヤバイナニコレヤバイと、のたうちまわる感覚のまま読み切った。 前日譚となる『グリフォンズ・ガーデン』よりも先に読んだので、IDA-10がどんな格好をしているのか想像もつかなかったけれど、さらには削除という概念がないというバイオ・コンピュータの概念もよくわからなかったけれど、それでも仮想世界が現実世界を凌駕していく危うさは理解できた。というより、現実世界がどれほど危うく脆い世界なのか、ということを意識させられた。 「めったにない何度も読みたくなる作品」の一つに仲間入りした。

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謎まで三マイル モース主任警部

謎まで三マイル モース主任警部 コリン・デクスター

モース主任警部の若き日のTVシリーズを視聴して、ついモースのオックスフォード時代の話がでてくるアレは何だっけ?と本棚を探して再読。 いやーやっぱり面白い! 頭と手足の切られた死体から、次々に湧き出るモースの直観と推理。 これは誰の死体なのか? たった一つの質問に、書いては消し書いては消される可能性のパズル。 個人的にシリーズ屈指の名作だと思う。

おばあちゃんのごめんねリスト

おばあちゃんのごめんねリスト フレドリック・バックマン

主人公は七歳の女の子。一言で言うとこまっしゃくれたガキ、という感じで友達はエキセントリックな祖母だけ。その祖母が亡くなってしまい彼女にいろんな人に謝罪の手紙を届けてほしい、と言い残す。祖母の遺言を果たしていくうちに折り合いの悪かった周囲の人達の過去の繋がりが見えてきて、という話。こう書くとよくある感動ものみたいな印象なのだがそこはかなりひねってあって、こう来たか!という感じ。亡くなった祖母が元外科医で世界中の戦争や災害地帯で活躍してきた人で年老いてからもかなり破天荒だった、という設定。祖母の過去と周囲の人たちの繋がりが明らかになっていく中で、主人公が手紙を通じて交流していくことでじょじょに成長していく描写が素晴らしい。主人公と祖母が二人で作っていたおとぎ話が実は現実の暗喩になっていて、という重要なパーツなのだけどファンタジー系が苦手なので個人的にはその部分だけは読みにくかった。全体的にはかなり面白く万人におすすめできる作品だとは思いました。

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アルテミス 上

アルテミス 上 アンディ・ウィアー

「火星の人」のアンディー・ウィアーの2作目。今作も最高でした。リアルな宇宙科学をふんだんに盛り込んでいるのが魅力で、今回は観光で栄えるドーム型の月面都市とより大きな世界が舞台。禁輸品の運び屋をしている女の子が、ふとしたことから面倒な事件に巻き込まれていきます。

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フォールアウト

フォールアウト サラ・パレツキー

邦訳される度にとりあえず手に取る作者の一人。シカゴの女性探偵のシリーズ。本作ではいつものシカゴを離れてカンザスが舞台となっている。黒人女優の草分けと共に姿を消したいとこを探してほしい、という依頼を受けてカンザスを訪れた主人公、女優が自らの生い立ちをドキュメンタリーでまとめようとしたその過程でタブーに触れてしまったのだろうと気づくのだが、という話。冷戦時代のミサイル基地があった田舎町でいつもと勝手が異なる状況のなか奮闘する、という話なのだが…正直言ってちょっと冗長では、という気もした。登場人物が多過ぎるのでストーリーがこんがらがって最後の会話で全て整理する、という流れは少しいただけない。力があって優れた作者の作品だけに少し残念。次作に期待。あと、くさしついでに言わせてもらうとこの安っちいイラストの表紙もいただけない。少なくとも僕のイメージしてる主人公とは全然違ってこれも興醒め。

赤いオーロラの街で

赤いオーロラの街で 伊藤瑞彦

太陽フレアの影響で全世界で数年間に渡る停電が起こる。電気通信が必須な時代に、停電が起こるとどうなるか?人はどう生きるのか?それが、とても前向きに書かれています。面白かったです!

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スウェーデンで家具職人になる!

スウェーデンで家具職人になる! 須藤生

木工を全くやったことがないので、細かい技術の話などはついて行けない部分もありましたが、そこを流し読みしたとしても楽しめる本でした。 スウェーデンの家具の魅力に引き込まれますし、須藤生さんの作った家具を実際に見てみたくなります。手作りの机、椅子で毎日を過ごせたら、ステキな気持ちになること間違いなしですね。

地下鉄道

地下鉄道 コルソン・ホワイトヘッド

何度も挫折しかけて1ヶ月、後半安心しかけたらまた…揺さぶられた。黒人奴隷といえば大昔「ルーツ」で衝撃受けたのは忘れられないけど、それ以来の、さらに創作、小説の力を突きつけられた読書体験

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