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9784152099198

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見された。人々は真っ先に、「湿地の少女」と呼ばれているカイアを疑う。6歳のときからたったひとりで生き延... 続き

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1960年代のアメリカ、ノースカロライナ州。親兄弟に捨てられ、幼くして孤独な日々を過ごすカイア。

「湿地の少女」として、蔑視と偏見に晒されながらも、強く成長していく姿を描いた一作。タイトルに込められた複数の意図が深い。

アメリカ東海岸の湿地帯は、日本人には馴染みのない地域だけど、匂いや湿度、肌触りまでしっかり想起させてくる、密度の濃い筆致がまず圧巻。

動物学者ならではの、さりげない蘊蓄の数々が、きちんと作品の本質にも関わってくるストーリーテリングも凄い。

青春小説であり、恋愛小説であり、成長小説でもあり、法廷モノの要素まであって、ホントにこれが小説初挑戦作とは思えない一作。年間ベスト級確定。

ひたひたと迫ってくる悲劇の予感が半端ない。

個人的なツボは、ジャンピンの存在でした。少女時代のカイアにジャンピンが居て本当に良かった。

重厚な北米文学。

本当に本当に、すごい物語。
まるでレミゼラブルのような、或いは赤毛のアンを全巻通したような読後感。

貧困、被差別人種、麻薬中毒者、傷病軍人・・・社会的弱者や落伍者を隠すのは未開拓の湿地、沼地だった。

行政が行き届かぬ未開の沼地。
或いは、見てみぬふりをされてきた土地と人々、と言うべきだろうか。

そんな湿地帯から少し離れた街には「文明」社会がある。

しかし、その「文明」社会には有色人種差別、偏見と搾取、反知性に満ちている。

社会福祉の理想も現実的な支援の手も届かない。
それは沼地が支援を拒むのか、文明社会の人間が手を差し伸べないからなのか、答えは出ない。

物語の主人公カイアも貧困と被虐待家庭に生まれた白人の貧困層だった。

食事、衣服、教育どころか基本的な保護と安全でさえ享受できずギリギリの状態で育ち、やがて周囲から保護者はひとり残らず去ってゆく。

p.293『辛いのは、幾度もの拒絶によって自分の人生が決められてきたという現実なのだ。』

そして、この孤独で知性的な女性をある者は嘲笑し、ある者は搾取し、ある者は遠目に見てみぬふりをする。

抑圧、偏見、苦痛、孤独、そして罪と劫罰。

文明社会には何があっただろうか。
およそ彼女が触れる文明社会の住民たちの多くは偏見と搾取に溢れ、その様は冷酷で反知性的である。
そして、彼ら彼女らには多くの隣人・友人、「家族」に囲まれている。

その一方で彼女は言葉を持ち、自然があり、科学を有した。彼女のあり方は知性的でさえある。
そして、彼女は完璧に孤独である。

孤独の中で、いくつかの優しさ、善良さに出会う事ができたのは彼女の僥倖でもある。

沼地という過酷な大地と文明社会という冷酷さ。

これら過酷で冷酷な湿地帯だからこそ、優しさや善良さもまた育まれるのかもしれない。

この物語で何を得る事ができるのだろう。

これはひとりの女性の育ちの物語であり、知性と反知性の物語であり、文明と未開というナラティブなフィールドワークであり、どこまでも孤独の物語である。

知性的かつ善良に、過酷な沼地で孤独に暮らすように生きるか。

反知性的かつ冷酷に、偏見と搾取に溢れた文明社会で大勢と一緒に暮らすように生きるか。

湿地の少女は生き方を迫るようだ。

P.155『できるだけ遠くまで行ってごらんなさいーずっと向こうの、ザリガニの鳴くところまで』

読者

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プロフィール

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