新潮社の本

八月の銀の雪

八月の銀の雪 伊与原新

何気ない出会いを描いた五つのストーリー。 どの話も大きな波があるわけではなく、淡々と始まる。薄暗く靄がかかったような中を歩いているような不安な気持ちにさせる。ただ読み進めるにつれ、靄が晴れるわけではないけれど、薄らとあたりが明るくなり、あたたかな希望を感じさせる。淡々としていながらも、読み終わった後に「うん。いい本だった」と余韻が残る作品だった。

スマホ脳

スマホ脳 アンデシュ・ハンセン/久山 葉子

人間の進化の過程に比べれば、デジタルデバイスなんか比べ物にならないくらい浅い。脳が追いついてない状態で、こどもの教育に使ってもダメなものはダメ。今まではつい楽だからと言う理由で、子育てに使ってたけど、、、 これからは使わせたくないです。たまに2歳くらいでタブレットやスマホを使いこなしてる子を見ますけど、そういった家庭にぜひ読んで欲しい一冊。別にすごい事じゃないですからね。

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オルタネート

オルタネート 加藤シゲアキ

勝手同じ学校を舞台に3つの物語が交差しつつも並行して進んでいく感じが学校生活として、すごくリアルで、読み進めるにつれ、物語の切り替わりのスピード感が徐々に上がってくる感じが限りある学校生活の時間の流れを良く体現していたのではないかと思う。それぞれの登場人物たちのキャラクターも掴みやすかったし、青春時代に抱える悩みを保ちつつ、目の前にあるものに立ち向かっていく感じは、とても清々しく、読み終えて懐かしさも感じつつ、晴れやかな気持ちになった。直木賞のノミネートも話題性だけではないなと。ジャニーズだからって色眼鏡で見て、ごめんなさい。面白かったです。ホントに。

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赤いモレスキンの女

赤いモレスキンの女 アントワーヌ・ローラン/吉田 洋之

拾ったカバンの中には赤いモレスキン。罪悪感に駆られながらも中身を読み、会ったこともない女に惹かれていく男。 ネコに好かれることの大切さを知る。読書が人と人を繋ぐ。現代の御伽噺。 ツッコミどころも多いのだが、素敵な話なのでコンチクショーと思いながらも、ニマニマ許してしまう作品。

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国道16号線

国道16号線 柳瀬博一

東京を流域から捉え直す文化論。

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湖の女たち

湖の女たち 吉田修一

 なんだろうこの読後感の悪さと佳代に関わる全ての男たちへの嫌悪感は。それはそのままあったことを無かったことにし弱いものを犠牲にしてきた日本のグロテスクな組織体系そのものだと気づかされる。満州の731部隊も令和の警察組織もそれは変わらない。そしてそれを見ていた子どもたちも当然大人の真似をしその連鎖は続いていくのであった。今日の社会を物語のかたちで提示する作者の力量が発揮された。

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午後3時 雨宮教授のお茶の時間 2

午後3時 雨宮教授のお茶の時間 2 鷹野久

「イギリスの食べ物は美味しくない」という話を動画で見たりしますが、その印象を変えてくれるマンガ。 特にスイーツについては。 日本とは違うトラディショナルな文化に接する事ができる。 その味を子供が引き継いでいるっていうのが、すごく良いと思う。 中でも“レモンポセット”は簡単そうなレシピで、外国感溢れていたから「作ってみようかな〜」と気軽に考えられました。 あと、たまに英語の単語が現れるマンガぎ私は割と好きです。 その意味調べるのも楽しいです。

くまちゃん

くまちゃん 角田光代

明確な好きや愛してるでなくても人は付き合い生活を送っていくもの。毎章、一人称が入れ替わり、ふった人、ふられた人。

庭

庭 小山田浩子

ページをめくるたびに涙が止まらないとか胸が暖かくなり励まされました!なんてことは全くなく、読後感は悪いし作中の不穏な空気に何とも言えない居心地の悪さを感じてしまうけどこれは好きな小説だ。むしろそこがイイ。 「動物園の迷子」長回しというのかワンショット?で人物が入れ替わり、句読点なく夫、妻、子どもの会話なのか思考なのかが混沌と交錯するディスコミュニケーションの絶望感。 「名犬」夫の実家での義母との微妙な関係と、恩着せがましい親孝行もうまくいかず奇妙ななりいきで雑種の仔犬を持ち帰る羽目になった夫の姿に笑ったし、それ以降狂ったように世話をする妻に待ち構える結末も人生ってそんなものなんです。

幻のアフリカ納豆を追え!

幻のアフリカ納豆を追え! 高野秀行

前にたまたま手にとってみた同作者のソマリアの紀行文がやたらと面白かったので手にとってたみた本作はタイトルのとおり世界の納豆を食べ歩くというもので、自分も納豆というものは日本固有の食べものでは、と思っていたのですがアフリカとアジアの一部では納豆が日常的に食べられているのだとか。本作で取り上げられているのはナイジェリア、セネガル、大韓民国、ブルキナファソ。アフリカ系のものは大豆ではなく現地のパルキア豆を使うのが一般的だがブルキナファソにはバオバブの実やハイビスカスの種から作る納豆もある。そしてこれは懺悔しなければいけないのだけどアフリカの内陸部では人は手に入るものをしかたなく素朴な味付けで食べているんだろう、と勝手に決めつけていたのだけど彼の地ではかなり手の混んだ手法で納豆を作り、しかも多くのケースで出汁や調味料としていわば贅沢にそれを使っているということがわかった。むしろ納豆そのままをご飯にのっけて食べるのはほぼ日本人だけ、日本人も江戸時代までは出汁としてしか使っていなかったらしい、ということが分かり非常に興味深かった。お隣の韓国にもほぼ製法が同じの大豆納豆があるものの彼の国ではチゲの材料にしてしまうので日本の一般的な納豆との共通点が見えにくくなっている、など興味深い視点がいろいろと非常に面白かった。結果として今、アフリカ料理とチョングッチャンが凄く食べてみたいです。美味しいところご存知なら教えて下さい(笑) これはすごい作品でした。

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クローゼット

クローゼット 千早茜

主人公たちの過去がうまく絡み合っていく。また二人が会えたからこそ、先に進んでいける。

空気が支配する国

空気が支配する国 物江潤

「空気」は日本人を支配する曖昧な掟。しかもそれは動的に変化する。 掟となった「空気」は同調圧力を生むが、曖昧に発生するだけに誰も責任を取らない。 「空気」から読み解く日本人論。コロナ禍で読むと、より身に染みますね。

堕落刑事

堕落刑事 ジョセフ・ノックス/池田 真紀子

これはタイトルに惹かれて。イギリスはマンチェスターを舞台とした刑事小説。押収品の麻薬をくすねたことがばれた主人公は上層部から新興麻薬組織の内偵を強要される。汚職の疑いで休職中ということにするので麻薬組織に近づき、特に組織に情報を流している警官を特定せよ、という任務。更には有力な政治家から家出した娘がその麻薬組織に近づいているようなので様子を見て知らせるように依頼される。なんとか組織には近づいたのだが…という話。本当のマンチェスターがこんなに麻薬が蔓延した暗黒の街なのかは知らないけれどアルコールと麻薬が全編に渡って溢れかえっており…主人公もスピード(覚醒剤のようなもの?)をきめ酔っ払いながらも麻薬組織に近づいて行く。ちょっと新しい感じのノワールとでも言おうか…とにかく登場人物に良い人間がほとんどいない上に人間関係が醜い。更には組織間の抗争だとか過剰摂取の問題などなど描かれている内容もひどいことばかり。にも関わらず何故か引き込まれてしまう不思議な魅力があった。主人公によってさまざまなことが暴かれたりするのだがこの手の小説にありがちな後半の破綻もなくきちんと話が収まるところに収まっているのは見事。これがデビュー作とは俄かに信じ難い印象。驚いたことにシリーズ化されているようなので次作も楽しみ。

死神の棋譜

死神の棋譜 奥泉光

将棋には深淵がありそうな気はする。小さい頃から勝負の世界で生きてきた棋士たちは純粋なゆえに逃れられぬ世界から抜け出せなくなっていくのかもしれない。