新潮社の本

山本有三

山本有三 

人類の進歩につくした人々

ナニカアル

ナニカアル 桐野夏生

この本は、男性、女性で読みどころがかなり違うと思う。男は、戦時中の官憲の恐ろしさを感じるし、女性は、不倫と出産に目が行くのではないか。それにしてもよく書くことができたと思う。

消えた警官

消えた警官 安東能明

けっこう地味ながら文庫で新作がずっと発売されているところを見ると人気あるのかな、とも思う警察小説のシリーズ最新作。ノンキャリだけども警視庁でそれなりの要職にあった主人公がトカゲの尻尾切りで飛ばされるのだけど飛ばされた先でそれなりにがんばってます、というこのシリーズ。大きな事件、本作の場合は警察官の失踪、がもやもやっと全体を貫いていてそれと関係ないような事件を扱う短編をいくつか並べてその短編の中にもすこしづつ大きな事件の断片が散らばっていて最後に大きな事件も解決する、というのがこのシリーズの特徴。上手いのは主人公がよくある刑事ではなく警務という総務人事畑の警官とされていることで事件だけではなく警察署内の関係も描き出せるようにしてあるところ。最近ちょっと事件に関与し過ぎでは、と思わないでもないが…。特段アクションがあるわけでもなくどちらかというと足を使った地道な捜査で事件の真相に迫っていくところがリアリティも感じさせて実に良い。警察学校を舞台にしたやつなんかよりよっぽど面白いと思うのだけど。

CIAスパイ養成官

CIAスパイ養成官 山田敏弘

タイトルに惹かれて読んだのだけどちょっと肩すかしだったかな。大正生まれの深川のお嬢さんが海外での活躍を志して戦時中にも関わらず英語の勉強に励み、戦後すぐにフルブライト奨学生として米国に渡り米国の軍人と結婚、移住し、夫のペンタゴン勤務に伴ってワシントンに住むことになりそれを機に44歳にしてCIAに日本語講師として採用され70過ぎまで働いていた、というストーリーそのものは確かに興味深いのだが…。対日工作というほどのことは少なくとも本書を読む限りは無かったように見受けられる。戦前でもこんなに逞しく自分の人生を生き抜いた女性がいたんだよ、というだけの話であってここまでの書籍に仕上げる必要があったのか...という疑問が残る。興味深くはあったのだけど。

カズのまま死にたい

カズのまま死にたい 三浦知良

プロ生活35年にして13年ぶりのJ1昇格。53歳の現役サッカー選手カズが現役の間はまだ大丈夫!なにが大丈夫かはわからないけど。硬軟取り混ぜた姿勢だからこそ長続きするのかまさに男が惚れる男。 「飛び抜けて優秀な人が集まるのがプロの世界。どこで差が付いていくのか、日本代表をみても察しはつく。必ずしもスゴイ俊足や肉体の持ち主じゃない人が代表の主将や軸になる。人間的に成長したときに、サッカーでも成長していけるんだよね。これは人の痛みがわかる、あいさつ、片付け、日常の心がけ。抜け出したければ、自分の人間性を高めることだ。」P.160 これはどこの世界にも当てはまる ブラジル時代の話で笑ったのが「チームプレーの大切さを、ブラジル時代によく聞かされた。『みんなが犠牲を払って助け合うんだ!』そう呼びかける当人たちが、5分後に平気でケンカを始める。『なぜパスを出さないんだ!』『おまえこそ!』」p.276 実はサッカーはほとんど詳しくなく、オフサイドはなんとかわかるけど各国リーグの違いや戦術面になるともうお手上げ。そんなド素人にも響いてくるんだから偉大な選手。ブラジルでたたき上げたプライドもしびれるね。

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清明

清明 今野敏

気に入ってる警察小説の第八弾が出たので早速手にとってみた。警察庁キャリアの主人公が裏表がなく正しいと思うことに忠実でそのためにいろいろ苦境に陥るのだけど最後はそれが良い方に働いて、というのがこのシリーズのだいたいのパターン。裏表がない故に家族の不祥事も表沙汰にした結果、警察庁の枢要なポジションから一介の警察署長にされていたのが前作まで。本作から神奈川県警本部の刑事部長に就任し、という新たな展開。就任早々、町田の東京都と神奈川県が入り混じった場所にある公園で死体が発見され警視庁の立てた捜査本部に神奈川県警も協力する、という事態に。しかも見つかった死体が中国人であったことから公安や中華街の大物も絡んできて、という展開。複雑な状況の中で主人公がどう振る舞ってどう捜査をリードするのか、という興味で一気読み。本作も期待を裏切らない面白さだった。

引かれ者でござい

引かれ者でござい 志水辰夫

股旅物は、カッコいい。飛脚の世界も、信用が大事なんですね。

デトロイト美術館の奇跡

デトロイト美術館の奇跡 原田マハ

「その日、ジェシカは、初めてDIAを訪問したときに着ていったダンガリーシャツとスラックスを着込んで、口紅をつけ、ほお紅をさして、目一杯おしゃれをした。」(32ページより)

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百年の散歩

百年の散歩 多和田葉子

ベルリンには通りの名前が九千以上もあるらしい。カント通り、ローザ・ルクセンブルク通り他、ルター、プーシキン、ワーグナー、マヤコフスキーなど。 異邦人のわたしは、待ち合わせのためにベルリン市街を歩き回るたびに遭遇する幻想的で夢想的な情景。待ち人に出会うのは百年後か。最近の本はカバーのデザインがとても良いが、この文庫も素敵なカバーだ。

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東京湾景

東京湾景 吉田修一

二人の20年後が追加されたバージョン。 とても良いエピローグ!

スタン・ゲッツ

スタン・ゲッツ ドナルド・L・マギン/村上 春樹

ジャズも好きだしゲッツの音楽も好きなので手に取ってみた評伝。村上春樹さんの訳とは知らなかったが彼もゲッツのファンを公言されているのでさもありなん、という印象。彼も書いていたがゲッツが好きだ、と認めるのは今はどうか知らないが昔の若いジャズファンにはけっこう難しくて…下手したらイージーリスニングめいた綺麗なメロディを巧く吹いているだけと感じてしまう…ゲッツよりはマイルスやコルトレーンが好きだ、と言っていたほうがかっこいいような気がする…そういうアーティストではある。言ってみれば古典落語の名人といった趣で、他にこの名人枠にはロリンズが入る…そんな感じ。黒人のジャズミュージシャンはミンガスを筆頭に差別について声高に話す人が多く、その反動か白人のミュージシャンにはなんとなく恵まれた育ちの道楽の果て、という印象が個人的にはあったのだけどゲッツの祖父はウクライナからロンドンを経てアメリカに渡ってきたユダヤ人で生活力のない父親のせいでニューヨークはブロンクスのほぼ貧民街で生まれ育った、ということにまず驚き。そして神が才能を与えた、としか解釈ができないのだが…まともに音楽を学んだのは高校に入ってからでその高校もドロップアウトして17歳にして両親と弟をテナーサックス一本で養っていたというから凄い。生まれながらの絶対音感とリズム感覚、そして短期間しか学んでいないにも関わらず圧倒的な読譜能力と楽譜の記憶力を武器にスターダムに上り詰めていく過程が見事。その能力と引き換えとでもいうようにアルコールとヘロインで人生をスポイルされていくわけだがその辺りも包み隠さず明らかにされてしまっている。アルコールと麻薬の恐ろしさを知るにももってこいの作品かも知れない。本作を読んでからゲッツの音楽がまた違った印象で興味深く聴けるようになった。その意味でも素晴らしい作品。関係ないけどスタン・ゲッツではなくてスタンリー・ガエツキスじゃやっぱりこれだけ売れなかっただろうな…。しかし私生活が破綻してたのに死ぬ直前まで第一線で活躍し続けていたのは本当に見事。ということで今宵もゲッツを聴きながら過ごします。

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とるとだす

とるとだす 畠中恵

虚弱体質でお馴染みの、お江戸の綿入れ重ね着探偵=一太郎。どこかが必ずズレている妖達の力を借りながら、今回も謎解き冒険てんこ盛りの活躍ぶり。 寝込むまでのほんのひと時を懸命に使って突き進む姿がすっかり板についてきたなーと感心。思えばこの子は、第1作の時からいつも肝心な場面では真っ向勝負をするのだよな。意外とヒーロータイプです、虚弱だけど。次作も楽しみ。

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古くてあたらしい仕事

古くてあたらしい仕事 島田潤一郎

お守りのように思える本で、巾着に入れて本が傷つかないように、注意しながら通勤時間に読みました。 (普段は本の汚れが気にならないのですが、この本はそれだけ物として大切にしたいと思ったのです…。) 「時間をかけることがそのまま成果となる仕事。」という文章があって、ああ、自分も今の仕事にそうやって向き合えていたらいいなと、心から思いました。 何かを大切に思うこと、敬意を払うことって、時間とは切っても切り離せない。 まじめに仕事をするということの尊さを感じて、胸がいっぱいになりました。

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