中央公論新社の本

ロヒンギャ危機ー「民族浄化」の真相

ロヒンギャ危機ー「民族浄化」の真相 中西嘉宏

何故、あの民主主義の顔のようなアウンサンスーチー氏がいて、ジェノサイドが起きるのか。そして、自国民を平然と殺害する軍事政権が生まれてしまうのか。 かつてカンボジアではポルポト政権があった。軍事クーデター、ファシズム、人類の最も醜い部分を少しでも理解出来ないかと。 読み終えたらもう一度書き込もう。 読了した。絶望的な思いに襲われた。国軍、少数民族の武力組織、仏教徒、イスラム。この独立以来、紛争に明け暮れてきた国に国際社会は何が出来るのだろう。 最後に著者が挙げた哲学者ハンナ・アーレントの言葉が悲しい。「単に人間であるということからは何らの権利も生じなかった。」

架空の犬と嘘をつく猫

架空の犬と嘘をつく猫 寺地はるな

一気読み。あることをきっかけに、家族であるために嘘を積み重ねていく必要な嘘。 嫌な感じではなく、読了感はすっきり。

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呉漢(上)

呉漢(上) 宮城谷昌光

呉漢という人の物語。 特に裕福でもなく賢いわけでもないが生きていく中で学び、成長していく。西暦が始まった後の中国を舞台にした話。 上巻最後に大将軍に登った出世力。 何によって評価を得て、何によって登り行けるのかを淡々と読ませてくれます。 下巻も楽しみ。時代は三国志の少し前くらいだと思われます。

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五・一五事件

五・一五事件 小山俊樹

日本人の殆どがこの事件の名前だけは知っていて、ではどういう事件で何があったのかは説明できないのでは、と思ったので。なんとなく漠然と、時の首相が軍人に殺された重大なテロ事件なのにその後に起こった二・二六事件と比べて処分も妙に軽かったような気がしていつかはちゃんと内容を追ってみようと思っていたので手にとってみた。冒頭、事件の概要が説明されているのだが...まぁ後知恵ではなんとでも言えるのだがかなり粗く正直なところかなりお粗末でこれでよく時の首相を殺せたものだと思ったほど。計画はグダグダだし移動手段は主にタクシーで旧式の手榴弾は不発だらけ...ちょっと恥ずかしくなったほどだ。しかしこの事件の本質はそこではなく、いわば社会の捨て石となって世の中に警鐘を鳴らしたいというところが目的で...そのようなテロは古今東西まれなのではないかと。つまり革命を起こし権力を奪取するという目的が皆無な、極めて日本的というか世界史的にも変わったテロ事件でそれ故にその処理もかなり特殊。結果として政党政治が終わってしまい軍が政治をも支配する道を開いてしまったという...。分かりやすく非常に興味深い内容でした。これはおすすめ。

「グレート・ギャツビー」を追え

「グレート・ギャツビー」を追え ジョン・グリシャム/村上春樹

なんとなくお久しぶりねの作家だし、訳者もなんとなくこの人の作品を翻訳するのか、という驚きがあったので手にとってみた。原題は味も素っ気もないのだけど邦題もなかなにベタでタイトルだけ見たらシドニー・シェルダンか、と思ったかも知れない。邦題については訳者もかなり悩んだ末のことらしいけれど。ストーリーはほぼタイトルどおりでプリンストン大学からフィッツジェラルドの生原稿が盗まれる。犯人グループは主犯以外すぐに逮捕されるのだけど原稿と主犯が行方を晦ましてしまう。フロリダで有力な独立系の書店を営む書店主が闇取引に関わっており原稿を所持していると疑われ、保険会社は彼のもとに独自にスパイを送り込む。このスパイがなかなか魅力的な女性で学資ローンと二作目がなかなかできないことに苦しんでおり...という設定。正直この作家がこんな作品を書けるんだという驚きがあった。そろそろ法廷シーンかと思ったけど最後まで出てこなかった!物語も良くできているのだけど書店主と舞台となるフロリダの島の設定が実に魅力的。素晴らしく楽しい作品でした。

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今も未来も変わらない

今も未来も変わらない 長嶋有

『「で、このカラオケのテーマは?」多忙を極める天才医師がついに難手術に着手する、その直前にクランケの患部を尋ねる、みたいな問い方を志保はした。』 こんなにカラオケシーンのある小説は初めてだったけど、著者と年齢が近いのもあり終始楽しかった。 時事ネタ、固有名詞が散りばめられているので、同時代に読めて良かったというのと、何十年か先に読むと、こんなこともあったと懐かしくなるだろう 著者近影がマスク姿なのも世相を表している

生と死をめぐる断想

生と死をめぐる断想 岸本葉子

無駄と知りつつ何かに熱心に取り組むことができるかどうかが、われわれの人生の質を決めることになる。いや、むしろ「なにをしても無駄」と覚悟していることが、「それでも、なおこれをする」という決断に重みを加える前提でさえある。

あとは切手を、一枚貼るだけ

あとは切手を、一枚貼るだけ 小川 洋子/堀江 敏幸

抽象的で比喩が多いのに、こんなに心地良い。 現実から目を背けたくなるほど、この本は綺麗すぎて呑まれる。 一つの事物でも、互いの解釈は違うのだと気付かされた。 作家二名が絡める書簡のやり取りが新鮮で、儚いなんて表現しか思いつかない自身を恥じた。 詩的なものが好きな皆さん、この本はいかがでしょうか。

ベネズエラー溶解する民主主義、破綻する経済

ベネズエラー溶解する民主主義、破綻する経済 坂口安紀

ベネズエラというのは未熟な国家が多い南米においては民主主義国家として成功していて産油国でもあり他の資源も多くて生活水準の高い良い国、というイメージだったのだがいつの間にかシリアに次ぐ難民を出している殆ど破綻国家だということ知り何故そうなったのかを知りたくて手にとってみた。問題の所在はチャベス、マドゥロという二代続いた大統領の政策にある、ということで何よりも凄まじいのはこの二人が国を率いた二十年で戦争も自然災害もなかったのにGDPがほぼ半減、世界一の埋蔵量を誇る油田のある国が汲み出す原油は中国やロシアへの返済で外貨収入にはならず、ということでもはやどう建て直して良いのか誰にもわからないくらいの破綻国家に成り果てているのだ、ということがその理由も含めて説明されている。二人の政治指導者も元はと言えば原油価格の下落で貧困層が増えているのに何も有効な手を打とうとしない既存のエリート層への不満から国の舵取りを任されたわけで、結果として尽く打つ手を誤った挙げ句、犯罪的な国家運営に陥っていった様が分かりやすく説明されている。恐ろしいのはチャベスが権力を握った背景が格差解消を謳った彼を教育程度の低い貧困層が強く支持したから、ということでほぼトランプが大統領になった経緯とかぶるという…一歩間違えるとアメリカもこうなっていたかもしれない、という点。ディストピアみたいな話ってフィクションでしかありえないと思っていたのだが国家というものが割と簡単に崩壊するのだ、ということがわかって非常に興味深い作品。

サバイバル家族

サバイバル家族 服部文祥

世の中の本流から逸れた暮らしをする人を多くの人は冷たい眼差しを向けて、変わっていると余計な一言を付け加える。 けれど、横浜でニワトリを買って、それを育てて、締めて、食べて、そんな暮らしをしている方が随分健康的だと思う。 意外にも偏差値を意識してしまっていたと振り返る著者やそんな親父の元、育つ子どもたちと支える妻。 服部家の繁殖期とはよく言ったもので、この本を通じて、血の通った暮らしを垣間見れた。 あぁ、僕もこんな暮らしをしてみたいと、コロナ禍で自宅で朝から晩までパソコンと睨めっこしている不健康な生活を改めようかな。 でも、いくら何でも庭で便をする勇気はないです…

2020年の恋人たち

2020年の恋人たち 島本理生

最初からおかしい男ばっかりで眉間に皺を寄せながら読んだ。主人公に味方がいるのが救い。

デジタル化する新興国

デジタル化する新興国 伊藤亜聖

インフラが整わない新興国の方が、先進国よりデジタル化が劇的に進行する。 世界各地で起きるリープフロッグ現象を読み解く一冊。 中国の例は良く聞くけど、インドや東南アジア、アフリカの動向は無知だったので興味深く読む。 普通なら 固定電話→携帯電話→スマホ と、発達するところを新興国は、固定電話すらも普及してないのに、いきなりスマホから普及が始まってしまう。 過去のインフラ資産や、産業界のしがらみがないこと、国家主導でグイグイ行けることが、違いなのかな。

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音楽の危機

音楽の危機 岡田暁生

集まれなくなれば、人はどうなるのか? 音楽の世界に関わらず、人間の営み全体にも言える問いかけで、コロナ禍だからこそ出来る新しい音楽の姿が有るのではと筆者は説く。 外でホントに音楽聴かなくなったので、切実な気持で読みました。

たちどまって考える

たちどまって考える ヤマザキマリ

2021 年最初の本。 考えることを放棄しないようにしようと思った。 ヤマザキマリさん、日本を客観的に見つつ、海外称賛ではない、本当に冷静でフラットな視線。 こういう人っていいなと思う。

ナチスが恐れた義足の女スパイ

ナチスが恐れた義足の女スパイ ソニア・パーネル/並木 均

市井の立派な人の伝記もの、かな。欧米ではそこそこ有名らしいのだけど、ナチスがフランスを占領した時代に最初はイギリスの特殊作戦部に所属して、次にはCIAの前身OSSの要員として義足というハンデを持ちながら単身フランスに占領しレジスタンスへの武器供給を中心に時に捕虜の脱走を主導するなどして活躍したアメリカ人女性がいたという。本人は外交の世界で活躍することを目指し語学を始めとした教育を受けるのだけど当時のことで女性には大した役職は回ってこない。在外公館の下働きに甘んじることができない彼女は戦争に身を投じる事で本願成就を図るのだけど...とてもものすごいことですごい人もいるものだと大いに感心させられ、また興味深く読んだのだけど、どうしてもフランスの開放やナチスのイデオロギーへの抵抗よりも、個人的なスリルの追求のほうが大きかったのでは...という気もした。片脚が義足であるにも関わらずナチスから逃れてピレネー山脈を歩いて越えるなど超人的な活躍はすごく興味深く読んだのだけどどうしてもその点が引っかかって。でも大変面白い作品であることは間違いないです。良かった。

勝負師

勝負師 坂口安吾

坂口安吾による囲碁・将棋のルポルタージュや対談を編んだ作品集。棋士たちの勝負にかける苦悩や人生を敗戦直後の日本に重ね合わせて描く。安吾の観戦記を読みながら、実際に将棋盤に駒を置いてみる。『勝負師』という作品の95ページ8行目「木村、四十九分考えて、」は木村ではなく塚田名人の誤りではないか。