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考古学の散歩道 田中琢/佐原真
もう覚えてもいない昔、この本を購入して読むこともなく本棚の奥にしまってあったのを先日、発掘した。考古学とは何を研究する学問なのか、以前は専門的な知識はなかったが民族学や民俗学、ひいては考古学(と思われること)に興味があった。 今、改めてこの本を読んで考古学の難しさが若干ではあるけれど理解できたような気がする。考古学における国際化とは何か、特に海外に発信することに意欲的でなかった日本の状況、戦争、大規模な他社の殺戮を伴う争いはいつ始まったか、北海道アイヌおよび沖縄琉球と本州島との関係、北方領土やドイツとポーランドを例に、領土領有権における考古学の役割、文化財保護の考え方など、様々な課題があることが分かった。 「人間は何をしてきたか」を知り、「人間は何をすべきか」を考えることが大切であり、そのために考古学は大きな役割を果たすだろうと。なるほどそうあって欲しい。 |
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白い病 カレル・チャペック/阿部 賢一
チェコの作家、カレル・チャペックが、1937年に上梓した戯曲。 「白い病」は感染した場合高い致死率を示す伝染病。コロナの今だからあえて、このタイミングで刊行したのかな? 時代的に戦争の影が色濃く出た作品で、疫病が蔓延する中でも戦争を始めようとする軍人と、その追随者たちを風刺した内容。
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その日の予定 エリック・ヴュイヤール/塚原 史
フランスのゴンクール賞受賞作。まだ第二次世界大戦に至る以前、ナチスドイツは戦うことなくオーストリアを併合した。その舞台裏を短く簡潔にまとめた物語。あくまで事実に基づいているものの細部の会話は作者の創作、という意味でのフィクションは個人的な好みからすると翻訳のせいかもしれないが文体が少し華美に過ぎるかな。ナチに協力しオーストリア併合に際しても献金を行う今も存続かつ繁栄し続ける大企業家たち、オーストリアの独裁者を呼びつけ恫喝するヒトラー、併合の発表に対する動きを遅れさせるためにくだらない話でイギリスの首相をランチのテーブルに引き止め続けるナチの外交官、一見ばらばらな動きが流血なく一つの国が征服される過程のデタラメさを描き出している。ナチスドイツが権力を握る前に既にハリウッドにはナチの軍服が映画用に準備されそれをユダヤ人が手入れしていたというエピソードや、ヒトラーによって追い落とされるオーストリアの首相と彼の後釜に座るオーストリアナチスのリーダーがブルックナーについて意見を交わす場面など、一見ストーリーに関係のないそれでいて興味深いエピソードの插入も効果的。ちょっと読みにくい部分はあるけどもかなり興味深い物語で面白かった。 |
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陸海の交錯 明朝の興亡 檀上寛
今の中華帝国の片鱗が見え隠れする。この辺りが今と地続きなのは、応仁の乱以降が地続きだと言われる本邦といっしょ。 と言うことは、明の対外諸政策が近隣の周辺諸国の政治を強力に規定しているのか。 |
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不便益のススメ 新しいデザインを求めて 川上浩司
rotulo→rubrica rozar電気工事までgraduacion granduacion de la vista ⇅ rubicundo! alcoholica↑ Una bala le rozo el brazo,rudeza |
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こんどこそ!わかる数学 新井紀子
中学生に向けた数学の入門書。数学について久しぶりに勉強する気になって、手元にあったので読んでみました。中学のときに読めたらよかったのに、とは思いますが、まあ35年ぶりに数学してみるか、という私には軽い準備運動にはなりました。ちなみに牛乳パックの話は印象深いです。 |
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聞き書 緒方貞子回顧録 野林 健/納家 政嗣
聞き書で生い立ちから人生観も含めて緒方さんの歩んできた人生が浮かび上がってくる一冊。 当時の詳細な日記とも併せながら、使命に対する覚悟や情熱が鮮明に描かれていている。自分で手を上げた仕事はなかった、ということには驚いた。 関わる方を大切にされてきた事、ポジティブな考え方や、目の前のやるべき事に淡々と取り組む姿が印象的。 |
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太陽の草原を駆けぬけて ウリ・オルレブ/母袋夏生
戦争中、5歳の少年は家族でポーランドからカザフスタンへと逃げる。 優雅な生活から一転、質素な生活へ。 少年視点の冒険のような刺激的な日々。 |
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海洋プラスチック汚染 中嶋亮太
プラスチック問題の現状とプラスチックとの付き合い方を書いてある本です。 さすが研究者。数値のデータ満載です! 例えば、これまで全世界で生み出された83億トンのプラスチックのうち、63億トンは既にゴミになっていて(つまりゴミ箱に捨てるという行為) そのうちの91%はリサイクルされていないとか。 リサイクルされずにどうなっているかというと、埋め立て、焼却、海洋流出…で普通に生活している私たちからは見えなくなっている、ということです。 (ここでいう普通は、一般的な日本人の暮らしという意味で考えてください) あとは日本の「リサイクル」の裏側も数値でしっかり示してくれてます。 手書きの見にくい図ですが見てみてね☺︎ リサイクルって言いつつ、ほとんど燃やしてる&海外に出してただけじゃん!!という衝撃。 様々なポイ捨てと題して列挙されていたのがこちら。 1.マイクロファイバー系 ○フリースを一回洗うと2gのマイクロプラスチックファイバー ○メラミンスポンジ(激落ちくんのことかしら…) ○アクリルたわし ↑これらは下水処理されて、汚泥と共に沈殿して除去されるものの、その除去率は98〜99%なので、すり抜けた数%が浄化された水と共に海へ行くそうです。 2.風船は空へのポイ捨てにつながる いつか空気が抜けて、海へ落下。 それを食べてしまう海の生物たち。 3.チューインガム ポリ酢酸ビニルという木工用ボンドと同じ材質でできており、歩道でポイ捨てされたガムが黒くなって消えないのはプラスチックだからだそう。これは一番びっくりした! 他にもたくさんたくさん問題を挙げてくれてます…。 じゃあ何が出来るかというと、プラごみの発生量を最小限にするということ。 特にsingle use(one way)使い切りを減らすことが大事。 飲料関係のプラごみをゼロにするだけで海のプラごみの1/3を減らせるそうです。 プラスチック製品は「捨てるように」作られているのが問題。 ここをRedesignすることが大事! 例えばドイツのある都市ではコーヒースタンドがグループを作り、提供する紙コップをポリプロピレンのカップ又はタンブラーにして、デポジット制にしたそうです。 どのスタンドに返してもオッケーとのこと。お店はそれを洗ってまた使う。 (ポリプロピレンだけど、使い切りではないし、そういった試みをしてるってだけで素晴らしいと思う!しかも色んなコーヒースタンドがやってるっていうのもステキ)
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哲学 中島隆博
哲学とは人生の晩年である p.1哲学とは尺度なしに概念を創造することである すなわち哲学者が何にもよらず単独で概念を定義することである(ドゥルーズガタリ) p.5 哲学発生の三条件、内在、友愛、オピニオン p.27 発生的方法…原因と目的としての結果を探求しない p.43翻訳とは純粋言語の救済であるすなわちある特定の言語に囚われた状態から解放し普遍化しようとする |
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地域協働による高校魅力化ガイド 地域・教育魅力化プラットフォーム
高校生と地域を学びでつなぐ取り組み、具体的高校の取り組みを紹介しながら進んでいるのでとてもわかりやすい。アンケートの使い方や取り組みを進めてみて分かったことなどが記載されているので、仕事にも使える言い回しや資料作成が充実している。 |
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次郎物語 下村湖人
次郎が先生や仲間に出会って人として成長していく姿を丁寧に描いた小説。ライフイベントごとの心理的葛藤や先生の教えなどが押し付けがましくなく繊細に表現されていてとても好きだった。 |
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ほんとうのリーダーのみつけかた 梨木香歩
同調圧力について。2015年の「講演」のメモ書きをもとに文章化されたもの。
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新・大学でなにを学ぶか
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の教員よる「大学で何を学ぶか」 池上彰、國分功一郎、伊藤亜紗などなど豪華な執筆陣 大学で学べることはひとつではないし、到達するまでのルートも一本道じゃない 抽象的になりがちな答えを具体的に示してくれている良書 |
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大黒屋光太夫 : 帝政ロシア漂流の物語 山下恒夫
「おろしやこく酔夢譚」以来の大黒屋光太夫です。 漂流→ロシアでの帰国までの活動を通して、江戸時代歴史を変える力のある人間が突然出てきたのではなく、そんな人材を育成できる土壌があったという事を強く思います。 作者の山下恒夫さんの文章もよみやすく楽しめました。 |
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教育は何を評価してきたのか 本田由紀
『日本にはいくつもの「異常さ」が見いだされる。異常に高い一般スキル、それが経済の活力にも社会の平等化にもつながっていない異常さ、そして人々の自己否定や不安の異常なまでの濃厚さ。』という文章がある。つまり今の日本の教育は不幸を生み出しているという自覚が我々には必要なのだろう。
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どこからお話ししましょうか 柳家小三治自伝 柳家小三治
少し落語から遠ざかっていたけれど、自粛生活でまた戻ってきました。 |
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庭師の娘 ジークリート・ラウベ/若松宣子
オーストリアのウィーンが舞台。 女性が夢を叶えるのが難しい1768年時代の、庭師になる夢を叶える少女の話。 モーツァルトに詳しい作者により、同時代に実在する歴史上のウィーンの人々が、物語に花を添える。
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奴隷船の世界史 布留川正博
中世から19世期末まで。 400年続いた奴隷貿易の歴史を35000件の奴隷貿易データベースから読み解いていく一冊。 こういう資料が残っていて、各国のデータが統合されて使えるのはスゴイ。 アフリカ大陸で、奴隷を実際に集めて西欧諸国に売り払っていたのが、現地の黒人王国だと言うのがなんとも暗澹たる気持ちに。 人道的な見地から、アフリカ大陸での奴隷貿易は禁止に向かう。 しかし、今度は奴隷貿易廃止!けしからん!の名の下に、欧米列強によって植民地化されていくアフリカ諸国。 帝国主義時代の欧米諸国は本当に酷い。現在に至る騒乱の種はだいたいこの時期に撒かれたものだよね。
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20世紀アメリカの夢 中野耕太郎
中野耕太郎 20世紀アメリカの夢 →よくまとまった良書。以下感想 ●転換期から1970年代までという時代設定について →非常に興味深い時期設定で、タイトルを見たときに??という疑問とワクワクが同時に起きた。 世紀転換期という時代を「アメリカの夢」と設定するならば、1970年代はアメリカがその夢から醒めた時代だという。革新主義の勃興に伴い、アメリカは「社会的なる場」を見つけた。そうしたときに、ニクソン時代以降の経済的停滞と市場における不介入主義、個人の選択肢の最大化がそうした「社会的なるもの」を考える領域を狭めていく。なるほどという時代設定だった。「ニューディール連合」の形成と崩壊に時代が貫徹される。 さて、その「夢のあと」はいつまで続くのだろうか。個人主義や「社会的なるもの」に対する冷笑的な視線は、現代も根深い。ニクソンの時代にすでに見られる萌芽は、80年代・90年代に大きく社会的優位を作った。レーガン、ブッシュ、サッチャー、中曽根、中曽根が先日亡くなった今、「夢のあと」の時代も終わったのだろうか、いや。 ●100pの「「アジア」は、今やアメリカへのどうか能力を欠く移民の属性ーすなわち、「人種」として身体化されてしまったのである。」 →的確な表現に思う。こうした地理的・もしくは言語的な空間領域がある身体性を持った人々の属性として策定されていくに当たっては、「人種化」の他にあるエスニック・コミュニティへの割り当てが起きる。そこにホワイト・エスニックのアメリカというネイションへの包摂が起きるということは、アメリカにおいては人種とナショナリズムが重なり合う。さらにそこに暴力という中隊が機能するならば、さらにジェンダー的な規範が織り込まれている。
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