筑摩書房の本

女将さん酒場

女将さん酒場 山田真由美

 「女将さん酒場」 山田真由美著 筑摩書房 「女将さん酒場」の題名に惹かれた。男社会の料理の世界の中で自分の足ですっと立って、社会に生き方を問い、喜んでもらうための努力の熱量はもの凄いものがあるだろう。そんな女将さんたちに密着した「女将さん酒場」は種類も様々、今の気分だと自然派より街中の店がイイな。それもガヤガヤしてる感じのだったり、今日は静かに飲みたい気分だとかお店を選ぶみたいに楽しめる。 「現代の女将は、自ら包丁を握り、客をもてなす。どこかに所属するのではなく、自分の身銭を切って店を切り盛りする。彼女たちは、何にも依りかからず、自分の足ですくっと立ち、道を切り拓こうとしている。」p.142

ガケ書房の頃 完全版

ガケ書房の頃 完全版 山下賢二

個性的な少年時代からガケ書房の経営、ホホホ座までとこれからのこと すべてを通してかっこいい生き方だなーと思います ガケ書房行ってみたかった! 私たちは自分の町に本屋がいるかどうかの国民投票をしているという一文にハッとしました

生きのびるための流域思考

生きのびるための流域思考 岸由二

「流域」とは「雨の降る大地における固有の凹凸」である。 雨の水を川に変える「流域」という地形は、水循環の基本単位であり、その空間に展開する生物世界を含めて考えれば流域生態系であり、人の暮らしまで含めて考えれば、流域生活圏でもある」p.21~24 「流域思考とは、流域という地形、生態系、流域地図に基づいて工夫すれば、豪雨に対応する治水がわかりやすくなる。さらには、生物多様性保全(自然保護)の見通し、防災・自然保護を超えた暮らしや産業と自然の調整の見通しも良くなる」p.15 著者は「豪雨の時代への適応を進めていくには暮らしの地図の領域に流域という地形、生態系、を単位する「流域地形」を導入していくのがいい。そんな地図を、大小の規模にかかわらず活用し、防災、環境保全の工夫を進めてゆく、流域思考が、生命研再適応のカギになる」として「流域地図」の必要性を唱えるp.190 何故「流域地図」が必要であるかは次の理由による 現在も自治体による「ハザードマップ」が発行され活用されているが、「ハザードマップ」は行政区分の単位によって分かれている。 「豪雨に対応して発生する氾濫は、行政区で起こるのではなく豪雨を洪水に変換するという流域という大地の構造、生態系が引き起こす現象だからです。行政地図をいくら詳細に見つめても、豪雨氾濫のメカニズムはわかりません。行政地図で区切られたハザードマップを頼りに都市の温暖化豪雨への適応策について、市民がどれだけ意見を交換し、ビジョンや計画を工夫しても、ビジョンや計画をくふうしても、わたしたちの暮らしの場、ひいては生命圏に発生する豪雨、水土砂災害の危機の理解に到達することはできないでしょう」p.200~201 つまり「ハザードマップ」はミクロな視点であり、「流域地図」は俯瞰の視点でとらえるということだ。俯瞰性こそが地図の持つ利点であり、これはweb上の地図に対する紙地図の優位性でもある。最も将来的には地形を立体化した「流域地図」が公開されることもあるだろう。 そして著者が関わる鶴見川の例に「流域地図」がどのような意味を持つか説明する。 「横浜市鶴見区、港北区、川崎市幸区、東京都町田市小山田町という町々はそれらをつなぐ水循環の大地、鶴見川流域の地図がなければ、ほとんど関連のない地域かもしれません。 しかし、鶴見川の水系、流域の配置が暮らしの地図に組み込まれている都市市民が育つなら、そんな市民にとって、東京都町田市小山田町に降った豪雨が鶴見川の大増水を促し、横浜市青葉区、緑区を流下し、港北区綱島、川崎市幸区、鶴見区潮田街で大氾濫するかもしれないという危機は、大地の地図の必然と理解されてゆくことでしょう。」p.201 この具体的な地域名を入れた説明が非常に判りやすい。 地図会社が行政へ売り込むビジネスチャンスだとも思う。

東京の生活史

東京の生活史 岸政彦

「150人が語り、150人が聞いた東京の人生」1211ページ2段組のボリューム、目次はあるけれど詳細はわからず、まさに人生のごとくどこで誰に出会うかはわからないけど、ページをめくると偶然という必然のごとく出会ってしまうどこかの誰かの人生。 狭いビジョンをこじ開けられる快感だけど、どんな人でも積み重ねてきた歳月の重さ故 1回で5人の生活史が限度。

「暮し」のファシズム

「暮し」のファシズム 大塚英志

0257 2021/12/11読了 ミニマリストとか田舎の人とのつながりとか、最近よく聞くが、翼賛体制に似ているとは…。 それを聞くと、ミニマリスト目指さなくていいかもとも思ってしまう。 政治家たち、コロナの世の中と戦時中を結びつけるし…。有事かもしれないけど、戦時中にはなりたくない…。 コロナが「生活」や「日常」になりつつある…。 太宰治やサザエさんも改めて読みたくなった。

おまじない

おまじない 西加奈子

「おまじない」 読み終わってタイトルに納得した。 短編集になっていてサクサク、サクサク読み進めてしまうが、その一つ一つのお話に込められた思いがとにかく深い。どのお話も、どの言葉も、どの文字も読み飛ばすことができない程惹き込まれてしまう。(一寸大袈裟か) 登場人物の弱さや脆さが「言葉」によって補完されていく。決して急に強くなったり、美しくなったりはしないのだが、その言葉によって掬われる。泥の沼や真っ暗闇、劣等感や罪悪感。そんな場所から彼女たちは言葉によって掬われていく。決して救われはしない。ただ掬ってもらうだけ。あとはどう考えるか、どう生きるかは彼女たち次第。そんなお話が詰まった1冊だった。 またそれぞれの「おまじない」が厚かましくなくて良い。わざとらしくない、自然と彼女たちの心に触れるように散りばめられている。だから読んでいてすっと入ってくる、感じがする。 西加奈子さんの本はどうしても読み返してしまう。意味が分からないわけじゃないし、難しい表現や言葉が使われているわけでもない。 ただより深く理解したい。より自分のものにしたい。と気づいたら何度も読み返してしまう。 今回は一気に読みすぎたのでまた少ししたら読み返してみたい。

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マーガレット・サッチャー

マーガレット・サッチャー 筑摩書房

新自由主義がイギリスにもたらしたのはきっと功罪両面あるんだろうな。首相までの道のりを辿ったら、自ずとイギリスの政治のしくみが前よりも見える気がする。

須永朝彦小説選

須永朝彦小説選 須永 朝彦/山尾 悠子

旧仮名遣い、擬古文体で綴られる、夜の眷属たちの物語たち。お気に入りは「聖家族」シリーズ。暗黒童話系も好み。美少年系はちょっと苦手。 頻繁に挿入される短歌や俳句が、どれも印象的で追いかけてみたくなる。特に葛原妙子が良かった。

古代史講義

古代史講義 佐藤信

 なぜか忽然と日本の古代史に興味が出てまず手にとってみた作品。飛鳥時代から平安初期くらいまでの事件、戦乱が取り上げられており〜具体的には磐井の乱、蘇我・物部戦争、乙巳の変(大化の改新)、白村江の戦い、壬申の乱、長屋王の変、広嗣の乱、橘奈良麻呂の変、講藤原仲麻呂の乱、対蝦夷戦争、平城太上天皇の変(薬子の変)、応天門の変、菅原道真左遷事件、平将門の乱・純友の乱、前九年合戦・後三年合戦〜で昔、日本史の授業でさらっとは見たことがあるけれども詳しくはよく覚えていないな、という内容。今は大化の改新と言わずに乙巳の変って言うんだね。いろんな専門家がそれぞれの事件について解説する内容になっていてわかりやすい。貴族というとおっとり和歌をよんでいたイメージがあるが天皇家が権力を確立していく過程においてはこんなに血なまぐさい事件がいろいろあったのだなと改めて思わせられた。蘇我・物部の争いにしても単純な仏教受け入れ賛成、反対の争いではなかったのでは、などいくつか新しい目線での解釈もあり興味深かった。

未来のきみを変える読書術

未来のきみを変える読書術 苫野一徳

0271 2022/02/22読了 ノンフィクション読書を全力応援するということがコンセプトの、「ちくまQブックス」シリーズ第一弾。中高生向けシリーズ。 このようなコンセプトのため、読書対象の本はノンフィクションや哲学などについてであり、そういう本の読書法を解説している。 しかし情報をクモの巣のように張り巡らせることができるように読書経験を積むというのは、大人へのメッセージとしても抜群。 読書するときメモを取りながらしていたけど、よくないらしい…。しかしこんなしっかりしたレジュメを作る自信もないなあ。 巻末で紹介されている本もあわせて読みたい。

新版 いっぱしの女

新版 いっぱしの女 氷室冴子

1992年に単行本。1995年に文庫化。そして16年ぶりに再刊されたのがこちら 氷室冴子がジュブナイルの世界から、一般文芸の世界へ越境し始めた頃のエッセイ集 作家本人の特性故ではなく、トップランナーであったから、そして女性作家であったからこそ受けた体験の数々が綴られています。

他者を感じる社会学

他者を感じる社会学 好井裕明

映画やドラマにあるジェンダー的問題や社会的差別問題など、紹介と解説をしてくれるので読みやすい。 映画が好きな人にはオススメの一冊。 差別とは縁遠いと思う人ほど差別性を持ちやすい。 常に考え分かったつもりにはならず、理解の探求を深めたい。 『クレしん』や『ドクタースランプ』から社会性を考えるって、それだけでもう興味唆られない?

勘定奉行の江戸時代

勘定奉行の江戸時代 藤田覚

勘定奉行から読み解く江戸の経済史。 財政だけでなく、交通、司法、農政まで、幅広い政府機能を担った勘定奉行。 求められる能力が高すぎて、旗本だけでは人材が足りず、御家人からでもたたき上げで奉行になれたのは面白い。 実力と運さえあれば身分が低くても勘定奉行になれる!かくして、勘定所は、江戸中期以降、能吏たちがワンチャン狙う役所になっていく。 幕府の台所は常に火の車だったので、新たな課税プラン(御益)が提案されては消え、経済に弱い老中や、諸大名をうんざりさせた話も楽しい。 江戸幕府の経済政策の必殺技は貨幣の改鋳で、良貨を悪貨と交換することで莫大な差益を得ていた。 幕末になるともう、商人たちも改鋳のための交換を渋るようになっていて、仕方ないので、交換したら10%増量!交換するまでの交通費負担します!みたいなキャンペーンがあったというのは笑った。

「色のふしぎ」と不思議な社会

「色のふしぎ」と不思議な社会 川端裕人

自分は正常に分類されたいわけではない。ただ、多様性のマップでいうとこのあたり、と認識しておきたいだけ、というところが印象に残った。個性を尊重するということは、全員が異常にもなり得るわけで、正常か異常かの2分法からの脱却を目指していくことが大切だと思った。