白水社の本

かくしてモスクワの夜はつくられ、ジャズはトルコにもたらされた

かくしてモスクワの夜はつくられ、ジャズはトルコにもたらされた ウラジーミル・アレクサンドロフ/竹田 円

あまりにも魅力的なタイトルだったので手にとってみた。第一次大戦前にモスクワとイスタンブールで活躍していた黒人興行師がいた、という話。作者は亡命ロシア二世の大学教授でアメリカにおけるロシア文学研究の第一人者。たまたま主人公の存在を知って伝記を書いてみたくなったということらしい。主人公の両親は解放された奴隸なのだけどやり手でミシシッピでかなり大規模な農場を経営していた。しかし取引相手の白人農城主に農園を騙し取られ、訴えるのだけど、そして勝訴するのだけども上告され、結局農園は弁護費用のカタに取られてしまう...。しかたなくメンフィスで下宿屋を始めた父親だが下宿人に惨殺されてしまい…主人公はレストランの給仕として働き始める。サービスマンとして優秀だった主人公、メンフィスからスタートしてシカゴを経てニューヨークからロンドンに。当時の欧州では黒人が珍しかったこともあってアメリカにいる頃のような差別を受けないことを知ったので欧州を渡り歩いた結果、モスクワに腰を落ち着け給仕から最終的には流行りのレストラン兼クラブのオーナーとなる。呼び物としてミュージシャンや芸人を目利きしてステージに送り込んでいたことから興行師と言われてるわけだがこちらもかなり好評でモスクワの一等地に住居を構えるまでになるのだが革命で一文無しとなりまさに身一つでイスタンブールに逃亡、そこでもクラブを開き再起を図りいいところまでいくのだがトルコの革命などの結果、最後は落ちぶれて死んでしまうというかなり波乱万丈の人生。現代においては無名の人物だけどこういうフィクションであれば逆に嘘くさくなるほどのストーリーを見つけてまとめた手腕が素晴らしい。非常に面白かった。

東ドイツ史1945-1990

東ドイツ史1945-1990 ウルリヒ・メーラート/伊豆田 俊輔

ナチスに因(よ)る要因(イタリア(第1次ファシスト政権時)と違い、降伏を拒否した事に因る本土決戦での、敗戦が東西分割(分裂ならば同じドイツ語圏のオーストリアも含む為(ため)ですが、ドイツのみの為分割と記述しました)の要因)かと想いきや…地勢上の歴史に拘(かかわ)ってたとは…。 (公共施設(市立図書館)からの貸借書籍からの試読なので…)他のアプリに登録中の書籍(東ドイツ限定では無いものの、独裁系で類似性が有る某書籍)と共に(記述の2冊以外にも貸借中ですが)…主要に読みたいと想(おも)います。

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倒壊する巨塔(上)

倒壊する巨塔(上) ローレンス・ライト/平賀秀明

これも内容が重たいはずなのでなかなか手が出なかったのだが…とある本でこの作品に言及されていて読んでみようかということで。言わずとしれた2001年9月11日のアメリカ同時テロ事件についてニューヨーカーのスタッフライターである著者が五年を費やし膨大なインタビューをもとになぜこの事件が起こったのか、に迫った作品。途中何度か掲載したとはいえライターに5年間も著作に専念させる、という辺りが一流誌の一流誌たる所以なんだろうな…。先入観ではいわゆる9.11の準備段階からテロの詳細、という感じだろうかと思っていたのだが良い意味で裏切られたのはほぼ半分を費やしていわゆる「イスラム原理主義」がどのような背景で生まれ組織化されていったのかということを掘り下げていること。イスラム原理主義の大きな流れからビンラディン、ザワヒリの二人がアルカイダをどのように立ち上げていったのか、についても人間中心の描かれ方をしておりいわゆる狂信者ではなく普通に家庭を持っていて富裕層でもあった二人の姿が描かれている。一方、標的となったアメリカ側はテロ対策捜査官のオニールという個性的な人物を中心にテロといかに戦いなぜ9.11を防げなかったのか、ということがこちらも人間中心に描かれている。あのツインタワーの惨劇は本当に作品の最後に出てくるだけでそこに向かって大きな流れが収斂されていくところが見事。イスラム原理主義とは何か?ということを学ぶのにも役立った。数年前にニューヨークに行った際、グランド・ゼロに行ってみたのだがこれを読んでからだとまた見方が違ったかもしれない。今更ですがピューリッツァー受賞も文句なしの優れた作品でした。

マーラーの思い出新装版

マーラーの思い出新装版 アルマ・マーラー/酒田健一

マーラーの愛妻?恐妻?女神アルマが書いたマーラーの姿がすべて真実かどうかは分からないらしい。でも音楽に向かい合うマーラーの思想や苦悩、どんなにアルマを愛していたか⁈が綴られている。少しずつ読みながらマーラーの音楽を聴いている。

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道 ダニ・ロドリック

筆者の意見をまとめると、 「ある国の統治能力、つまり政治の力と貿易取引量は比例する。 また、貿易はあくまで各国が利益を最大化するための手段であって、今のグロバリゼーションを目的とした動きは疑問視すべきだ。 これらの観点から、導かれる今後の世界の貿易の在り方についての答えは、障壁を完全になくしたハイパーグローバリゼーションではない。 各国に制限政策の余地を残した、セーフガードの適用に工夫したり、まだまだ自由化の余地がある労働市場のグローバル化を進めることだ。」 となる。 素人の私でも分かりやすく纏められているが、この理論を一から組み立てて、作り出せる筆者は天才だと思う。

路地裏の子供たち

路地裏の子供たち スチュアート・ダイベック/柴田 元幸

ここ数年読んだ中で特に印象に残り、再読したいと思ったので図書館で借りて読んだ2作品(『シカゴ育ち』『僕はマゼランと旅した』)を改めて購入した作家。彼の初期短編集ということでこれはもう最初から購入しました。古き良きというのかシカゴの裏町で育った子供時代のことを瑞々しく描いた2作品が気に入ったのでその意味ではそのものずばりのタイトルではないか、ということで。結果だけどもかなり荒削りな作品があったりちょっと幻想的に過ぎるのではという作品があったりでなるほど初期の作品はこんな感じだったんだな、という印象。正直なところ個人的には先に挙げた2作品には全体的には及ばないなとは思ったもののいくつかの作品では荒削り故に先の2作品よりもインパクトがある作品があったな、という印象。やはり優れた作家だなと改めて思った。面白かった。

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マルコムX(上):伝説を超えた生涯

マルコムX(上):伝説を超えた生涯 マニング・マラブル

ジャズミュージシャンとかスパイク・リーとかが取り上げるのでなんとなくかっこいいなと思っていたマルコムXについて。そういえばきちんとどういう人だったのか読んだことがないなと思っていたらちょうどピュリッツァー受賞の評伝が出たので手にとってみました。ベストセラーの「マルコムX自伝」もあるけれど客観的な評価の方がよいのでは、とは思ったのだけどかなり赤裸々な内容ではあった。元々まともな教育を受けておらずはっきり言ってチンピラだったマルコムはついに空き巣を働き刑務所に入れられる。刑務所でイスラム、というより当時アメリカで勃興しつつあったネイション・オブ・イスラム(NOI)の信仰を知り、刑務所内で猛勉強、釈放後は宗教団体NOIの看板導師として教団の拡大と黒人の地位向上に務めるのだが真剣に考えれば考えるほどNOIに疑問を感じて、というところが素晴らしい転換点。イスラムを名乗りつつ「白人は悪魔」というイスラムの本来の教えとはかけ離れた教義とか自身が教団を拡大すればするほど教祖や幹部達の生活が潤っていくこととか…。そしてついにNOIから離れメッカ巡礼も果たし、真のイスラム教徒としての活動を始めようとした矢先に彼を敵視するNOIの者たちの手で暗殺されてしまう。元々NOIの教義が白人は悪魔というものであったこともあり、人種融合を目指した同時代のマーティン・ルーサー・キングとは異なって人種隔離政策を支持し、KKKなどとも協力関係を構築していた団体の看板導師だった時代が圧倒的に長く、解放運動の観点からは残念なところもある。しかし一個人として本当に正しいことは何か、を有名になっても考え続け信念に従ったところがやはりかっこいい。評伝としては思い入れもあるのか詳細にすぎ少し冗長なところが残念ではあったものの読み応えがある素晴らしい内容でした。面白かった。

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移民の政治経済学

移民の政治経済学 ジョージ・ボージャス

移民を受け入れることは良いことか? その問いに対して様々な理論と実例から迫る。 結論は、時と場合によるというもの。 単純に労働力の追加として捉えることはできない。 低技能労働者の大量流入によって、元いた人も低いほうへ引っ張られるということもある。

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台湾生まれ 日本語育ち

台湾生まれ 日本語育ち 温又柔

「母語」と「国語」の複雑な関係性、著者は始めは嫌悪していた台湾語、中国語、日本語が混ざり合う母親の「ママ語」からそのすべての言語が「母語」であると「発見」する、為政者の都合により変化する言語、その中で生きるとはそういう事なのだろう。 「そもそも中国語と台湾語と日本語とひとつづつ数える必要はないのかもしれない。三つの母語がある、というよりもひとつの母語の中に三つの言語が響きあっている、としたほうが自分の言語的現実をぴたりと言い表せるのではないか。考えてみればわたしは、中国語や台湾語を外国語として、というよりは、自分のニホンゴの一部のように感じている。わたしはもう、母たちの声を「和訳」しない。むしろ、記憶に向かって耳を凝らし、日本語として発せられたのではない音をたぐりよせる。」P.244 白水社Uブックスによる増補版。

中級フランス語 よみとく文法

中級フランス語 よみとく文法 西村牧夫

ニッチなところを突いてくる感じで、思ったほどフランス語能力の補強にはならなかった。あと、教えてくれてるポイントは有難くても、説明が独りよがり。

天井に星の輝く

天井に星の輝く ヨハンナ・ティデル

初めは、なんなんだこの話は? って思うくらいつまらないな。と思ったけど 読み進めるうちにどんどん興味が湧いてくるような一冊です!