ワニ・プラスの本

エレクトリック・マイルス1972-1975

エレクトリック・マイルス1972-1975 中山康樹

元スイングジャーナル編集長の音楽評論家だけどこの人の書くものがけっこう好きなので手にとってみた。帝王マイルスの、作品で言うと「オン・ザ・コーナー」から「パンゲア」まで、いわゆるジミ・ヘンドリクスとスライ・ストーンに影響を受けたとされる時代について本人と関係者の証言から何が行われていたのか、を解明しようとした作品。マイルス・デイビスはメジャーな会社から出てる作品は一通り全部持ってるアーティストの一人で個人的には凄く好きなんだが、特に賛否が分かれるこの時代の諸作品について個人的には好きだと言ってたのだけどそれはたぶんに「そう言ってたほうがかっこいい」みたいな見栄というかなんか頭で聴いてたな、という反省もあって今回読書と共に久しぶりに聴きなおしてみた。多重録音だったり大人数でドヒャーと訳のわからないことをやっている、という印象だったのだけど改めて聴くと全然真っ当な音楽でフリージャズの類いとは一線を画していることが分かった(フリーもけっこう好きなんだけど)。ド素人なので的外れな事を言ってるのかもしれないがコード分解のバップからスケール中心のモードと来たマイルスが次に取り組んだのがリズムで、ドラムが4分の4のところにパーカッションが8分の6にギターがまた別の拍子で二番目のギターはまた別の、といった感じでどんどん人数が増えていって…という感じ。その意味では影響を受けたのは間違いないだろうけどジミやスライとはまた違った方向に進んで行こうとしていた、という本作の指摘はよく理解できる。酷評にも全く動じることなく己の信ずる道を行く姿は帝王の帝王たる由縁という印象でやはりかっこいい。巻末の関連ディスコグラフィーも楽しくて~Apple Musicに入ってるから聴き放題!(笑)〜凄く楽しく読めました。

京都が観光で滅びる日

京都が観光で滅びる日 村山祥栄

京都の地域政党「京都党」党首が著したオーバーツーリズムに対する警告書。のはずだったけど、最後の二章はオーバーツーリズムから離れた地域財政論、政治批判になってるのが何とも野党ぽい。 ここ10年の京都の観光潮流をざっと把握するには便利な一冊。京都市政の迷走はよく伝わる。 ただ、文中で触れられる主張に呼応する統計データや出典を伴う引用が一切ないのが、主張の胡散臭さと「市政批判したいだけ?」感を醸し出してしまってる一因。もっとその辺りを織り込めば良書になったかもしれないのに。ページ数が●のまま出版されるなど、ところどころ残念な新書。