東京創元社の本

運命の八分休符

運命の八分休符 連城三紀彦

あまりにも美しく、そして哀しい話ばかりでした。 そして、雨や花といった日常の情景描写や心情の機微の描き方美しさに魅了されてると…肝心なところを読み飛ばす…そんなのばっかりでしたが、それがよかった。 格好いいのに、なのに…というラストの哀切さがいいなあ。 どうしてこんな「構図」を考えられるのだろう、そして仮に思いついても「いや、できたらすごいけど、ムリだよな…」とあきらめそうなところを実現させているという、奇跡の神業が最後まで続いてるような作品集でした。 40年前の作品とは思えない、そしてこの本が、ずっと絶版になっていたのも信じられないです。

空のあらゆる鳥を

空のあらゆる鳥を チャーリー・ジェーン・アンダーズ/市田 泉

動物の言葉が分かる魔法使いの少女パトリシアとタイムマシンを自作する天才科学少年ロレンス。 特殊な能力ゆえに、ともに孤立していた2人は独特な友情を育んでいたが、彼らがいずれ世界を破滅させるという予知に囚われた殺し屋につけ狙われ、家庭や学校を離れ別々の道を歩むことになる。 そして数年後、まさに世界が破滅する寸前に彼らは魔法と科学という両陣営に別れ、敵同士として再会することになるのだが…。 気候変動による地球の破滅、科学と魔法の戦いという壮大なテーマに、ボーイミーツガールというロマンス要素も加わって、盛り沢山のご馳走みたいな物語。 時に相手を信じられずに早合点をして失敗したり、過ちを犯し大切な人を傷つけたりするけれど、一生懸命に償い、やり直そうとする主人公たちに、最後まで引っ張られて一気に読み終えてしまった。 パトリシアに絡む鳥たちのお喋りが小気味良く、ロレンスが自作しパトリシアが育てた人工知能が個性的でラブリー。 ネビュラ賞・ローカス賞・クロフォード賞受賞作

シトロン坂を登ったら

シトロン坂を登ったら 白鷺あおい

2020/8/13読了 大正浪漫×乙女×魔女養成学校もの、と思って読んでたら、妖怪ものでジャングル冒険譚だった。 妖魅としてのキャラクターと、普段学園生活を送っている少女としてのキャラクターが、シリーズが進むごとにそれぞれ出てくると思うから、そのどちらの特性も利用して三人娘が活躍する物語になるといいな。今後の展開が楽しみ。

短編ミステリの二百年1

短編ミステリの二百年1 モーム、フォークナーほか/小森 収

創元推理文庫には江戸川乱歩編の「世界推理短編傑作集」というものがあるらしいのだけどそれに続くアンソロジーとして編纂されたものらしい。二百年間に出た短編ミステリの名作・傑作を全六巻に集約するという一大プロジェクトということでミステリ好きとしては見逃せない感もあって手にとってみた。一作目ということで1800年代から1900年代はじめに出た古典が中心。作家としてはビアス、スティーヴンスン、デイヴィス、サキ、モーム、ラードナー、フォークナー、ラニアン、ウォー、ウールリッチ、コリアというところ。初期ということもあってこれがミステリ?というのもあったりするところがおもしろい。アンソロジーということで編者との相性で楽しみが大きく左右されるのだけどとりあえずは意見保留で2巻目を読んでみたいと思う。それにしても解説というか編者のあとがきというか解説が長い。個人的には編者が作品以外のところで自己主張するのはあまり好ましくないと思うので二作目以降も同じことが無いように祈っています。

薫大将と匂の宮

薫大将と匂の宮 岡田鯱彦

源氏物語のその後をミステリにした小説 古典授業で冒頭をかじったのと 漫画を読んだだけなので知らなかったですが 原文の雰囲気を再現されているらしく 現代文とは違い 紫式部の気持ちがそのまま長々と書かれており 慣れてないので手こずりました ミステリとして面白いのは 匂いという点 これは斬新で面白くて笑ってしまいました このテーマで女性が書いたら 角度違って面白そうなので そんな本も探してみようと思います

リックの量子世界

リックの量子世界 Ambrose, David

タイトルは原題の方が良い。今のはチープだし過度にSFだと押し付けている感がある。妻の交通事故をきっかけに意識が並行世界の自分の中に移った男の話とも読めるし、そういう妄想を抱いた男の話とも読める。そのどっちともつかない曖昧な状態で読者に読ませた方が良かったと思う。途中のメインストーリーがやや単調なのが辛いが、パート2以降で上のような二重性が分かる構成は面白かった。 2020/5/5読了

クララ殺し

クララ殺し 小林泰三

登場人物がすんなりと頭に入ってこないので、いかんせんなにがなんやらわからないままに種明かしされた気分です。 一言言っておくなら、このクララはアルプスの少女ハイジとは関係ないクララです。

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赤毛のレドメイン家

赤毛のレドメイン家 イーデン・フィルポッツ/武藤 崇恵

2020年2月課題本 古典にしては読みやすいです 百年前は新鮮で面白かっただろうと思います しかし今読むと描写が長く ミステリを多読されてる方とそうでない方の オチ慣れの差がありました 当時としては斬新な発想や構想の練り方など 後世の作家が部分的に真似て 世に送り出したのでは?と言う話も飛び出しました 面白いんですけど 古典です

集結

集結 マウリツィオ・デ・ジョバンニ/直良 和美

21世紀の87分署シリーズなどと言う声があれば読まざるを得まい、ということで手にとったイタリアの警察小説。一応主人公めいた設定の人物はいるもののほぼ全ての警官が主人公になり得る形式の警察小説。本作品では押収した麻薬を横流しした結果、刑事の全員が逮捕、解雇され引責で署長も辞任したナポリの治安の悪い地域~いちおう架空となっている~にある警察署を舞台としている。そのような理由なので名前を聞くだけでも皆が顔をしかめるような状況。若手でやる気のあるキャリアが志願して署長として赴任してきたが穴埋めに異動してきたのは全員が曲者というか元いた署では持て余されていた者~反社勢力とつながりがあると噂され有能だが浮いている警部、スピード狂で派手好きな若者、暴力衝動を抑えられない男、警察署内で発砲事件を起こした女性刑事~だらけという設定。そこに複雑な個人の事情を抱える元からいた年配の副署長と女性警官という6人が現時点では中核となる登場人物らしい。いきなり寄せ集められた警官達が直面する2つの事件~殺人事件と若い女性の監禁~の謎解きと登場人物それぞれの背景事情が語られる。どのエピソードも今後が楽しみな感じでシリーズの第一作目としてはかなり上出来。観光都市ナポリが舞台で汚らしい犯罪と美しい景観の対比なども面白い。これは是非ずっと邦訳を出していってほしいシリーズだ。面白かった。

蝉かえる

蝉かえる 櫻田智也

面白い! 前よりも面白くなってる!! 前作の読後から妙に気になって 早めに読んで正解でした! 昆虫好きの魞沢泉が絶妙のおとぼけで 愛くるしくて応援したくなります 虫嫌いな方も大丈夫! 軽快で読みやすいのに 短編5篇のどれもが 好みをあげるのも悩むほどの 良作揃いです 読後感は更に良くなって もう、続きが読みたい! このシリーズは追っかけますよ~

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犯罪

犯罪 Schirach, Ferdinand von

「コリーニ事件」が映画化されて気になったので シーラッハ初読してみた 11篇の短編集 正に多種多様な犯罪で 罪とは善悪が表裏一体 善なのに殺人を犯したり 悪だけれど家族のためなど 法で裁くとは何なのかを 読みやすい文章で読者に訴えている 短編集でも一つ一つが重く 読み応えがある 英米とは違う裁判の様子や 移民やナチスなど複雑に絡まったお国事情で ドイツも色々大変なのだと知る 日本も色々あるけれど 治安の良さによかったと思える本でした

冬雷

冬雷 遠田潤子

主人公の生い立ちや境遇が辛くてやらせない気持ちに…土地の習わしに囚われた大人の勝手に巻き込まれてく子供達の様子に胸が苦しくなったけど、これ大人側も苦しんでたのかな。本の装丁も美しくて引き込まれる作品でした。

メグル

メグル 乾ルカ

5つのバイトの話 一晩中死人の手を握っているバイト、病院内にある売店の商品入れ替えのバイト、犬に生肉を与えるバイト、出された食事を食べるバイト、庭の手入れのバイト 明らかに怪しいバイトや一見普通のバイトなのに妙にお金が高いバイトを大学の事務局が紹介していて 案内している事務員の悠木さんは的確に生徒を選んで紹介している バイトをしてみると何故その子が選ばれるのかは理解できる ただなぜそれを悠木さんはわかるのか謎

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短編ミステリの二百年2

短編ミステリの二百年2 チャンドラー、アリンガム他/小森 収

創元推理文庫が満を持して編纂した200年に渡る短編ミステリの集大成全六巻でこれはその第二弾。1920年から1950年までに出された作品から編者が厳選した11篇が収録されている。最初期の作品が収められた第一巻に比べるとこの第二巻はハメットやチャンドラーといったハードボイルド黎明期の作品も収められていて少しミステリっぽくなったかな、という印象。どれも新訳というから力がかなり入っているのは確かかな。個人的に大好きなチャンドラーの「待っている」という作品がこんなに良かったか、という感慨があったのは良かった。ただ本作も第一巻と同じく編者のあとがきというかエッセイが長い。この時代にはこういう作品があってこういる理由でこれらの作品をチョイスした、という話なのだけど脱線があったり世評に対する反論などがあったり…もう少し簡潔に書けるでしょ?という思いがどうしても拭い去れず、で。読まなければいいのだろうけど内容にはやはり興味があってちょっと我慢しながら読んだような感じ。そこが少し残念でした。

おうむの夢と操り人形

おうむの夢と操り人形 大森 望/日下 三蔵

毎年楽しみにしていた年刊日本SF傑作選。こちらで完結のようです。このシリーズのお陰でSF好きになりました。 ありがとうございました!