東京創元社の本

ボーンヤードは語らない

ボーンヤードは語らない 市川憂人

主要メンバー短編4篇 久しぶりに会えて嬉しい満足でした 好みは『赤鉛筆は要らない』 登場する九条蓮と 日本家屋のベタな密室ミステリが 意外な組み合わせで面白かった どれも良かったけど いつもの幻想的な長編がそろそろ読みたい

自由研究には向かない殺人

自由研究には向かない殺人 ホリー・ジャクソン/服部 京子

わが町で5年前に起きた少女失踪事件の真相を明らかにすること。 それが高校生ピップの自由研究のテーマだ。 さすがにセンシティブな研究テーマなので教師からも重々注意を受けているけれど、彼女は鋭い頭脳と軽いフットワークで次々に新事実を明らかにしていく。 コンビを組むのは、失踪した少女の恋人で犯人扱いされて亡くなったサリルの弟ラヴィ。 彼と2人、真相を明らかにする過程で、ほのかなロマンスも進展するか…というお楽しみも。 学生時代に読んだ少女探偵ものを思い出すけれど、現代に生きる少年少女たちは家庭環境も変化し、SNSなどネットトラブルに巻き込まれたり蔓延する薬物の誘惑に晒されたり、少女探偵ナンシーの頃とはさすがに危険度が違う。 しかし一方でピップをはじめどの登場人物も女の子だからと何かを諦めたり、子どもだからと言って発言することを臆することはない。 今を生きる少年少女の伸びやかさに嬉しくなると同時に、思ったよりも本格的な謎解きも相まって大好きな一冊になった。

風よ僕らの前髪を

風よ僕らの前髪を 弥生小夜子

第30回鮎川賞優秀賞作品。 裕福な家に生まれながら、複雑な生い立ちゆえに過酷な青春時代を過ごした志史。 成人した志史の周囲で相次ぐ不審な死。その背後に隠された昔年の愛憎を描く。 ミステリというよりは、ビターな青春小説の要素の方が強いかな。 探偵役の事件にこだわる理由が、一応あるにはあるんだけど、そこまでする理由になってるのかやや疑問。プライバシーに踏み込み過ぎなのでは、とも感じる。

見知らぬ人

見知らぬ人 エリー・グリフィス/上條 ひろみ

教師、その娘、刑事、3人の登場人物たちがそれぞれの視点で学校を舞台にした恐ろしい連続殺人事件の語り手となる。 そして事件と微妙にリンクするヴィクトリア朝時代の(架空の)作家ホランドの短編「見知らぬ人」。 学生たちの肝試しが、次々に悲惨な死に繋がっていくというこの怪談の断片が、本筋で語り手が交代する合間にタイミング良く割り込み、ひたひたと恐怖を煽る。 ちょっと複雑な構造に戸惑うものの、この「見知らぬ人」の挿入がなければ、本書はありがちな犯罪小説で終わっていたかも。 スマホを駆使する現代と魔術や呪いが日常に満ちていた時代の雰囲気がうまくブレンドされていた。 同じ出来事をまるで違う感性と語彙で語る3人の女性たちは、個性豊かで鼻につく欠点を含めてとても魅力的。 そして真犯人の正体と共にホランドにまつわる謎も最後に解き明かされ、すっきりした読後感が得られる作品だった。

兇人邸の殺人

兇人邸の殺人 今村昌弘

待ってた第3弾 前2作を超えないだろうと 期待しなかったのですが 今村ワールド大炸裂! 館ものクローズド等々の仕掛けが 特盛てんこ盛り! もうね、複雑な犯行の穴を探す作業なんざ 私には到底、無理 何回も館内図を見ながら ウヒョー!と童心に帰って楽しんでました 非現実な設定に 守られた論理 人間模様のバランスが 今までで一番良かった作品だと思います 3作の中で一番好きですね エンタメはこうでなくちゃ!

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雨と短銃

雨と短銃 伊吹亜門

前作『刀と傘』の前日譚 坂本龍馬が薩長同盟を結ぶべく 奔走していた最中 京都の稲荷神社で殺人が起こる 被害者は長州藩、傍には薩摩藩の者がいた 主役の尾張藩公用人、鹿野師光は 逃げた薩摩者を探して欲しいと 龍馬に依頼される 幕末の京都で 暗夜そぼ降る雨の雰囲気や フィクションと実在を織り交ぜる塩梅は 前作同様にお見事 幕末のパラレルワールドの感覚で読むと 丁度良かったです

この地獄の片隅に

この地獄の片隅に J・J・アダムズ/中原 尚哉

昔から大好きな加藤直之氏のイラストに誘われて購入。パワードスーツがテーマのアンソロジーだ。様々なお話が収録されているが、あまりバラバラな感じはしないで、どの話も楽しく読めた。 特に「アーマーの恋の物語」が良かった。 シリーズ第二弾も希望!

戦地の図書館

戦地の図書館 モリー・グプティル・マニング/松尾 恭子

アメリカ軍は前線の兵士に本を届けるということを組織だって実行していたらしくその記録。もともとはナチスが自分たちの意に沿わない本を燃やしたことへの抗議から図書館を中心に既存の本を届けるというプロジェクトだったものが前線でも兵士が持ち歩きやすいようにコンパクトな「兵隊文庫」として整備され実に一億4千冊が配布されたのだという。とにかく精神論で飢餓状態で弾もないのに闘え、といった我が国の軍隊とは違って、兵士が良いコンディションで闘えるように、ということを追求する米軍らしい話かなと思いました。戦地に届けられる備品の中で、もちろん飢餓などには無縁だからというのもあるけど本が一番人気があった、というのも興味深い。よりよい状態で人殺しができるように、という目的である、ということさえ気にならなければかなり面白い作品だと思います。面白かった。

ロンドン謎解き結婚相談所

ロンドン謎解き結婚相談所 アリスン・モントクレア/山田久美子

著者のクリスティ好きがよく分かる(笑) 結婚相談所はパーカーパインの悩み解決 探偵ごっこはトミーとタペンス(本家は男女) 時代背景も第1次と第2次で違うが 戦後の物資不足など酷似が多い 内容は庶民寄りで クリスティよりハーレークイン要素が多く 残念ながらミステリは及ばないし 男性にはウケない一冊だろう ただクリスティ好きとしては オマージュと思うとシンプルに嬉しい グヴェンの先行きも気になるし 続編読んでみようか、目下悩み中

はじまりの24時間書店

はじまりの24時間書店 ロビン・スローン/島村 浩子

前作よりも更に童話的、寓話的要素が色濃く、登場人物たちの言葉の裏側にある暗号をなんとか読み取りたいと思ってしまう。 ペナンブラ氏の若かりし頃、24時間書店の誕生秘話。

越境者

越境者 C・J・ボックス/野口 百合子

邦訳が出るたびに読んでいるミステリのシリーズももう14作目とか。アメリカのど田舎ワイオミング州で猟区管理官を勤める主人公。本来は密猟を取り締まりにあたっているのだがトラブルに巻き込まれやすいというか自分から首を突っ込んでしまうというか…なので上司と地元警察との仲はすこぶる悪い。しかしながら型破りな知事に気に入られており確か何度目かになると思うのだけど前作で辞めた職にまた復帰している。密猟を取り締まるのが主な仕事のくせに銃の扱いが下手で突出した能力があるわけでもないのだが「田舎を踏み台に都会で出世しようと思っていない」FBIの支局長、やり手の妻とかなり凄腕の戦闘能力を持つ謎の鷹匠、達の力を借りつつ持ち前の正義感と粘り強さでに事件に対処している様が共感を得ているのだと思う。毎回思うのだけど地方を舞台にしたことによって自然破壊や代替エネルギー、カルト集団など都会を舞台にするよりも幅広いテーマを盛り込めており上手いな、と思う。本作では知事の特命を受けて州内でも特に辺境に派遣されることになる。過疎化が止まらない街に都会から移り住んできた富豪がおり街はほぼ彼の王国のようになっている。偵察に赴いた犯罪捜査官が不審な死を遂げたことから主人公にちょっと現地の様子を見てこい、と言われてのことなのだがそこは主人公。おとなしく偽装に留まるわけもなく…ということで今回も強大な敵と相対する主人公、鷹匠だったり過去の因縁の相手も登場し今回も緊迫感溢れる仕上がりとなっている。また本シリーズでは主人公の家庭問題も上手く盛り込まれているのだが里子で問題児の次女がまたもやらかして…というところで次作をお楽しみに!という終わり方になっている。このところこのシリーズは完結しつつも次作への伏線をチラ見せする形で終わっておりまたも作者の術中にはまってしまい次が楽しみでならなくなっている。大変だけどできれば最初から読んでほしいシリーズ、おすすめです。

マーダーボット・ダイアリー 上

マーダーボット・ダイアリー 上 マーサ・ウェルズ/中原 尚哉

主人公は汎用警備ボットで舞台は宇宙という設定ながらドラマ好きあるあるに満ち溢れた物語。 仕事で暇なときはとりあえずドラマ。 落ち着くためにとりあえずドラマ。 コミュニケーションのためにとりあえずドラマ。 この本を読む『サンクチュアリームーン』が見たくなる。

たかが殺人じゃないか

たかが殺人じゃないか 辻真先

このミス、文春、ミステリが読みたいの、ミステリ系ランキング全てで一位となった作品。 ミステリとしての完成度は、三冠取ったほどでは無いような。。。 昭和24年の風俗を描いた青春小説としては、なかなかの良作。 出来うるなら、前日譚の『深夜の博覧会』を先に読むことを強くお勧めします。

森の中に埋めた

森の中に埋めた ネレ・ノイハウス/酒寄 進一

邦訳が出るたびに手にとっているドイツのミステリシリーズ。毎回書いてるんだけどこのエピソードが好きで...ソーセージ職人と結婚した作者が夫の店を手伝う傍ら趣味で書いて店頭に置いていたものが出版社の目に止まっていまでは大人気シリーズになっているという警察小説。大都市フランクフルトの近郊の街を舞台にもともとその辺りの領主を先祖に持つ貴族階級出身の男性警官とそのパートナーの女性警官を中心としたシリーズ。思えば最初の頃はドイツ人で固められていた警察も気がついたらトルコ系やシリア人の刑事がいるのはどこまで現状を反映しているのだろうか...。さて、本作ではキャンプ場でトレーラーハウスが爆発し男の死体が発見される。そのトレーラーハウスが男性警官の知り合いの母親の所有でその母親も殺されて、爆発を目撃していたと思われる青年も男性警官の知り合いの息子で...といった具合で周囲の人間が次々と不審死やら不審な行動をとって、という話。あることがきっかけで村の秘密が暴かれて...みたいなのってミステリでは割とよくあるシチュエーションかと思うのだけどそこは手練の作者、かなり面白く読ませてくれます。登場人物がかなり多くあまり馴染みのないドイツ人の名前がたくさん、というものでも平気、という人にならお薦めできる作品でした。