河出書房新社の本

破局

破局 遠野遥

芥川賞受賞、おめでとうございます。 『今度はちゃんと見ようとふたりで笑いながら、もう一度再生ボタンを押した。 そして今度もゾンビが出る前にセックスを始めた。 馬鹿みたいだった。 でもおかげで誰もゾンビに食われずに済んだ。』 大衆向けではないが、コアなファンには刺さる1冊。 主人公の視点で物事が進み、本当に些細であるが主人公の感じたことも分かる。 冷めていて、虚無で、礼儀や法律を重んじる主人公が、陰毛や通り過ぎる人に気を止めるのが個人的に好きです。 最後、彼はゾンビになれたのでしょうか。

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空腹ねずみと満腹ねずみ 上

空腹ねずみと満腹ねずみ 上 ティムール・ヴェルメシュ/森内 薫

ヒトラーが現在に蘇るのだがコメディアンとしか受け取られず...というかなりブラックな前作が面白かったので手にとってみた本作のテーマは難民、ということで前作も本作もドイツでよく出せたな、という驚きがまずあった。一時期メルケルが難民の移民を受け入れたものの社会不安が起き世論に押される形で受け入れを停止しアフリカ諸国に資金援助を行うことで難民キャンプに移民を足止めにするという方針に変換しているドイツ。本作では既に首相はメルケルではなくなっているのだが方針は変わっていない。その難民キャンプを到底社会派とはいえないセクシータレントが取材に訪れるのだが…いろんな要素が噛み合わさった結果、15万人の難民がドイツに向けて歩き出す、という話。砂漠を越えてアフリカからドイツまで徒歩で、という一見荒唐無稽な設定なのだけどその辺はよく考えられていてもしかしたら実行できるかも、というところがなんとも上手い。ドイツ側のマスコミや政治家の動きもデフォルメされているんだろうけどかなり上手く描き込まれている。通過していく国の対応や最終的に30万人に膨れ上がった行進をどう始末つけるのか興味深く読んでいくとまさかのラスト。風刺というのはこういう風にやるんだよ、という見本のような作品。面白かった。

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感傷的な午後の珈琲

感傷的な午後の珈琲 小池真理子

冬に読んだ藤田宜永著『大雪物語』繋がりで、図書館で借りて読み始めた。小池真理子の本を読むのは初めて。あまり私の肌には合わない気がして今まで読んだことがなかった。この本はエッセイだが、小説も読んでみようかと思い始めている。

肝心の子供/眼と太陽

肝心の子供/眼と太陽 磯崎憲一郎

「ビスマルクってこう言う声だったんだよ」。細身で身長が高く、顔が黒い、そんな初老の高校教師が頭頂部からインディアンの如く高い声を繰り出す。そのナンセンスさが過剰なまでに膨れ上がったギャグは、弁当の匂いが充満した昼下がりの教室には少しばかり刺激的すぎたのかもしれない。そのビスマルクの声に誰も気づいていない。いいや、高校生だったから僕らはその笑いの巧みさを理解し得なかったのかもしれない。 ビスマルクの声はどうだったのか。か細い声で、それでいて高い声だ。などと言う問題は河合塾の模試になんか出ないだろうし、ましてや人生で考えることもないだろう。「失われたもの」が世界史には多すぎる。暗黒の時代とされた中世にだって、ギャグもあれば愛もあったはずだ。イヴァン4世はいつも雷帝と呼ばれていたわけではないし、ルターは常にどこかジャガイモのような顔でこちらを覗いて宗教革命を先導したわけでもあるまい。 そこで僕たちは「失われたもの」を想像力で補う、いいや補う以上に作り出すことができる。ビスマルクの声のように、イヴァン4世の歩きかたを語ることもできるし、ルターの髪の毛の洗い方だって語ることができる。 礒崎憲一郎『肝心の子供』はそれを、ブッダでやったということなのだろう。ブッダとラーフラ、ティッサ・メッテイヤの親子三代について、語る。確かに語るだけであれば、優れた歴史書やあるいは歴史小説に任せれば良い。むしろそのほうが劇的で、ドラマ的だ。 しかし、この小説は違う。むしろ、ノンストーリーに近い。劇的な展開は皆無だ。 この小説で試みられるのは、それぞれが「生」を発見するというその当人の経験の描写だ。世界のあることが素晴らしいというその感覚。blessedというのか。その存在が祝福されたしか言いようがない。日本語で言うと、享受するというのか。 この小説は想像力によって登場人物のその感覚、生実感を描くのに成功している。それは歴史書にも書いていない。ブッダがどう呼吸をしたのか、何を見たのか。その領域は歴史ではなく、小説(詩)になる。 蛇足になるけれど、高橋新吉という詩人に「るす」という歌がある。 留守と言え ここには誰も居らぬと言え 五億年経ってから帰って来る ブッタはキリスト以上に詩的かもしれない。

はっとりさんちの狩猟な毎日

はっとりさんちの狩猟な毎日 服部 小雪/服部 文祥

猟銃片手に野山に分け入る登山家の妻は、 ワイルドな世界とぼくたちの生活圏の狭間 に居てくれる。 お金持ちやほんとは環境のことなんて これっぽっちも考えていない大企業の なんちゃってエコロジーとは違っていて、 生活の中に自然を感じるのがいい。 じゃなきゃ横浜でニワトリを飼った際に 近所の人に「うるさかったら言ってください。 すぐシメますから」と旦那が語る訳がない。 飼ってたニワトリをいただいたり、 鹿を解体して、食べることだったり、 お肉を食べるってほんとはそういうこと たよなぁって思うエピソードかたくさん。 スーパーで値札と睨めっこするのとはちと違う。 悪いことじゃないけど、そこに命をいただくということのリアルはないもんなぁー。 あとは何気に巻末の旦那の後書きが ひねくれていていい味出してるぜ。 さすが密着ドキュメントのラストで 谷底に滑落した男は違う。 いやそんな生活に付き合う家族がすごいのか。

かわいい夫

かわいい夫 山崎ナオコーラ

エッセイ。旦那さんの話だけでなく、家族の話。大事な人を失くしてきたナオコーラさんだから書ける話もある。

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いだてん噺

いだてん噺 細馬宏通

昨年のNHK大河ドラマ『いだてん』を、 毎週視聴後に全回考察したネット連載の書籍化。 その熱量は 本の分厚さからも見てとれます(約400頁!)。 放送当時の感動を思い出すのはもちろん、 演出法や劇伴の使い方にも触れ、 作中では明かされていない 当時の出来事を文献を用いて紹介している まさに「『いだてん』を100倍楽しむ本」。 明治・大正・昭和と マラソンのごとく駆け抜ける日本の近現代史を、 様々な人々の思いが聖火リレーのように繋げられた、 平成・令和をまたいだ(繋いだ)ドラマ『いだてん』。 新しい形の歴史教科書です。

僕はロボットごしの君に恋をする

僕はロボットごしの君に恋をする 山田悠介

読み終わって一言、素敵すぎて、切なすぎる。姿形がかわろうとも、同じ人に恋をする咲、作られた感情だと言われても咲への想いを否定しない健、どちらも一途すぎてラストは苦しくなりました。 

きちんと生きてる人がやっぱり強い

きちんと生きてる人がやっぱり強い 内海実

人と人との接し方について至極もっともなことが書かれているが、それが故に自分自身はどうだろうと改めて考えさせられる。言葉ではなく行動で示せ、人間関係を円滑にするには、結局は相手も自分も地で行くしかない。昨今の人付き合いに辟易している方、読んでみると相槌を打ちたくなる内容だと思う。

白の闇

白の闇 ジョゼ・サラマーゴ/雨沢 泰

ポルトガルのノーベル賞作家ジョセ・サラマーゴの作品。 視力を奪う謎の感染症。 隔離施設に送られた患者たちは、眼が見えない中、 自分たちの力だけで生活することを強いられる。 わずかな食料を奪い合う生活。 日に日に悪化する衛生状態。 そして増え続ける患者。 疑心暗鬼に囚われる人々。 そして武装した男たちの、 暴力による支配がはじまる。 ノーベル賞作家が書いた、 感染症モノというだけあって、 エンタメ系のパニック小説というよりは、 極限の状況下で、人間としての尊厳は保てるのか。 人間の醜さ、本能的な狡さ、 性への衝動みたいなものが、 赤裸々に描かれていて凄味を感じさせてくれる。 地の文章と、登場人物の会話が交じり合う。 会話に一切「」を使わない 独特のサラマーゴ文体に、 最少は戸惑ったものの、 訳が良いのか文意は容易に読み取れる。 中盤以降は一気読みでした。

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寿フォーエバー

寿フォーエバー 山本幸久

なんとなく選んだ本。 ウェディングプランナーの主人公。 自分も結婚式をしたので、 プランナーさんはどんな気持ちだったのかなと 心配になった。 世の中の仕事はどれも大変よね。

アダムとイヴの日記

アダムとイヴの日記 マーク・トウェイン/大久保 博

もしアダムとイブが日記をつけていたら… (しかもマーク・トウェインが解読) 迷わず手に取りました ふたりの個性が溢れる文章、構成、挿絵の違いを存分に楽しみました 最後はしっとりまとめてくれてます ユーモア溢れる素敵な一冊でした

大親分!

大親分! 北野武

最後の粗忽長屋が良かった。世相と毒舌、ユーモア。

オイディプスの刃

オイディプスの刃 赤江瀑

何人かの人々の死と、生きている人々の思い。 自分にとって、 本当にしなければならない、たったひとつのこととは何か。 中学生の時に初めて読んでから20年。 いまだにこれだと言い切れないまま生きている。 絶版が多かった赤江作品がここ数年復活してきていて、 本当に嬉しい限り。 他作品たちの復活も強く望む。