河出書房新社の本

金箔のコウモリ

金箔のコウモリ エドワード・ゴーリー/柴田 元幸

ゴーリー 没後20年。邦訳版も二十冊目に突入! バレエダンサーとなった女の生涯を描いた作品。成功し脚光を浴びていく表の顔と、平々凡々とした退屈な日常生活の対比がいかにもなゴーリー 作品。 彼女の行く末が、作品冒頭に暗示されている構成も良い。

内なる町から来た話

内なる町から来た話 ショーン・タン/岸本 佐知子

1つ1つの話を膨らますとそれだけで1冊の絵本になるような物語集。 空に釣りするムーンフィシュ・重役がカエルになった話・弁護士を立てて人間と裁判するクマ・ビルに咲いた桜・ヤクに乗り帰宅する人の話が想像しながら読むと楽しかった。 ショーン・タンさんの他の本にも興味を持った。

やる気の出し方

やる気の出し方 藤由達藏

人生は楽しんだもの勝ち! 誰もが一度は思ったことがある、「なんかやる気がでないなぁ…」「モチベーション上がんないから今日はいいや」という思いに対し、「そもそも、やる気ってなに?」「やる気ってどこからくるの?」という風に違った視点で考える一冊。 普段、抽象的にとらえてしまっている「やる気」を、具体的に「こういうもの!」と定義付けしてくれるので、自分のやる気が出てきてくれない理由もなるほど❗️と納得しながら読めました❗️ 退屈な仕事やめんどくさい家事も、「やる気の素」をコントロールして楽しんでいきましょう❗️

僕はロボットごしの君に恋をする

僕はロボットごしの君に恋をする 山田悠介

読み終わって一言、素敵すぎて、切なすぎる。姿形がかわろうとも、同じ人に恋をする咲、作られた感情だと言われても咲への想いを否定しない健、どちらも一途すぎてラストは苦しくなりました。 

きちんと生きてる人がやっぱり強い

きちんと生きてる人がやっぱり強い 内海実

人と人との接し方について至極もっともなことが書かれているが、それが故に自分自身はどうだろうと改めて考えさせられる。言葉ではなく行動で示せ、人間関係を円滑にするには、結局は相手も自分も地で行くしかない。昨今の人付き合いに辟易している方、読んでみると相槌を打ちたくなる内容だと思う。

白の闇

白の闇 ジョゼ・サラマーゴ/雨沢 泰

ポルトガルのノーベル賞作家ジョセ・サラマーゴの作品。 視力を奪う謎の感染症。 隔離施設に送られた患者たちは、眼が見えない中、 自分たちの力だけで生活することを強いられる。 わずかな食料を奪い合う生活。 日に日に悪化する衛生状態。 そして増え続ける患者。 疑心暗鬼に囚われる人々。 そして武装した男たちの、 暴力による支配がはじまる。 ノーベル賞作家が書いた、 感染症モノというだけあって、 エンタメ系のパニック小説というよりは、 極限の状況下で、人間としての尊厳は保てるのか。 人間の醜さ、本能的な狡さ、 性への衝動みたいなものが、 赤裸々に描かれていて凄味を感じさせてくれる。 地の文章と、登場人物の会話が交じり合う。 会話に一切「」を使わない 独特のサラマーゴ文体に、 最少は戸惑ったものの、 訳が良いのか文意は容易に読み取れる。 中盤以降は一気読みでした。

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「最強!」のニーチェ入門

「最強!」のニーチェ入門 飲茶

あたしも一日に数分だけ普段意識していない身体の感覚を意識する訓練を始めました。 本をつかんでいる指の感覚、床を踏みしめている足の裏の感覚、息が通り抜けていく呼吸の感覚。 床を踏みしめている足の裏の感覚とかほとんど意識してなかった。 たいていの場合、人の意識は思考ばかりに注目してしまっているらしく、頭の中の思考(言語)によって構築された架空の世界で生きがち。 だからニーチェの「今を肯定しろ」は、思考への偏った注目はやめて、呼吸を感じながら「架空の世界」から離れて「今」を感じろと。 自分の常識が覆ったし、考え方次第でこうも楽になるのかと、思い知った一冊でした。 2020/11/27

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推し、燃ゆ

推し、燃ゆ 宇佐見りん

どん詰まりで未来が無くて重苦しい。唯一のアイドル推しだけの楽しみ。普通の生活も破綻していくなか、推しも炎上したりして心の平安も失われていく。 こういう人、世の中に実は溢れている気がする。 自分もそんな一人。 救いが欲しいわけではない。何かを主張したいわけでもない。推しに存在をしってほしいわけでもない。 そんな無色透明なものを描いてる。 the芥川賞作品って感じです。

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いだてん噺

いだてん噺 細馬宏通

昨年のNHK大河ドラマ『いだてん』を、 毎週視聴後に全回考察したネット連載の書籍化。 その熱量は 本の分厚さからも見てとれます(約400頁!)。 放送当時の感動を思い出すのはもちろん、 演出法や劇伴の使い方にも触れ、 作中では明かされていない 当時の出来事を文献を用いて紹介している まさに「『いだてん』を100倍楽しむ本」。 明治・大正・昭和と マラソンのごとく駆け抜ける日本の近現代史を、 様々な人々の思いが聖火リレーのように繋げられた、 平成・令和をまたいだ(繋いだ)ドラマ『いだてん』。 新しい形の歴史教科書です。

理由のない場所

理由のない場所 イーユン・リー/篠森 ゆりこ

母が16歳で自ら死を選んだ息子と言葉を交わす場所。 そこは、言葉によって新たな生命を与えられた彼と、交わることができる唯一の場所。 本書は、母である著者がそこで彼と交わした会話を、亡くなった年齢と同じ16の章に分けて綴ったものだ。 彼は現実と想像のあわいの不確かな存在でありながら、小説家である母親に対して、その言葉遣いを「それは死語だよ」と注意するなどなかなか手厳しい。 生前から2人にとって「言葉」というものがいかに厳密で大切なものだったのかが伝わってくるようだ。 そして自分にも相手にも厳しいという親子の共通点と、だからこそ理解し合っていた(と信じていた)2人の関係も。 これほどの関係で、片方が先に逝ってしまったら、もう片方は当然その理由を納得するまで問わずにはいられないだろう。 永遠に正しい答えなど得られないと分かっていても、その場所を何度も訪ね、質問し、生きている時には届かなかった言葉を探しあぐねるに違いない。 死者を悼むというのは、こうして繰り返し誰にも邪魔をすることができない場所で彼らと言葉を交わし続ける行為のことかもしれない。 『私たちはかつてニコライに血と肉を持つ命を与えたが、私はそれをもう一度やっている。今度は言葉によって。』

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破局

破局 遠野遥

芥川賞受賞、おめでとうございます。 『今度はちゃんと見ようとふたりで笑いながら、もう一度再生ボタンを押した。 そして今度もゾンビが出る前にセックスを始めた。 馬鹿みたいだった。 でもおかげで誰もゾンビに食われずに済んだ。』 大衆向けではないが、コアなファンには刺さる1冊。 主人公の視点で物事が進み、本当に些細であるが主人公の感じたことも分かる。 冷めていて、虚無で、礼儀や法律を重んじる主人公が、陰毛や通り過ぎる人に気を止めるのが個人的に好きです。 最後、彼はゾンビになれたのでしょうか。

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空腹ねずみと満腹ねずみ 上

空腹ねずみと満腹ねずみ 上 ティムール・ヴェルメシュ/森内 薫

ヒトラーが現在に蘇るのだがコメディアンとしか受け取られず...というかなりブラックな前作が面白かったので手にとってみた本作のテーマは難民、ということで前作も本作もドイツでよく出せたな、という驚きがまずあった。一時期メルケルが難民の移民を受け入れたものの社会不安が起き世論に押される形で受け入れを停止しアフリカ諸国に資金援助を行うことで難民キャンプに移民を足止めにするという方針に変換しているドイツ。本作では既に首相はメルケルではなくなっているのだが方針は変わっていない。その難民キャンプを到底社会派とはいえないセクシータレントが取材に訪れるのだが…いろんな要素が噛み合わさった結果、15万人の難民がドイツに向けて歩き出す、という話。砂漠を越えてアフリカからドイツまで徒歩で、という一見荒唐無稽な設定なのだけどその辺はよく考えられていてもしかしたら実行できるかも、というところがなんとも上手い。ドイツ側のマスコミや政治家の動きもデフォルメされているんだろうけどかなり上手く描き込まれている。通過していく国の対応や最終的に30万人に膨れ上がった行進をどう始末つけるのか興味深く読んでいくとまさかのラスト。風刺というのはこういう風にやるんだよ、という見本のような作品。面白かった。

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八本脚の蝶

八本脚の蝶 二階堂奥歯

2020年という人類史的にも過酷な一年、この本がずっと鞄の中にあった。 それはつまり、夢中になって一気に読んでしまえるような本じゃないということでもあったけれど、ようやく読み終えた今、彼女が──二階堂氏がこの一年、ぼくと共にいてくれたような、そんな感傷的な気持ちにさせる。 彼女がぼくの、あるいはぼくたちの目や耳や鼻で、心で、この未曾有の世界を感じていたらいいのに。そして、その図書館のような魂で、何かを思索していたらいいのに。 そう思うのは酷だろうか。彼女はやっと平穏を得て、どこかでクトゥルーちゃんたちと眠っているかもしれないし。 それでも、明日からぼくの鞄に彼女(の一部)がいてくれないであろうことが、たまらなく寂しい。あなたに会いたかった、二階堂さん。

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