NHK出版の本

幸福な監視国家・中国

幸福な監視国家・中国 梶谷 懐/高口 康太

単に中国怖い!酷い!という話に終始していない。 監視社会の可能性はどこの国にもある。プライバシーと代替に利便性を得ること。日本でも監視カメラが激増している背景にはそのジレンマがある。 西洋の市民革命以来の権利概念と、東洋の徳に基づく統治の理念。 便利なんだからいいじゃない。そんな功利主義が優位になると、人々は監視社会も普通に受け入れるようになるのかもしれない。 思っていたよりも噛みごたえのある良書でした。

魚食の人類史

魚食の人類史 島泰三

 なぜ霊長類の中でもホモ・サピエンスだけが積極的に魚を食べるのか、という帯に惹かれて手にとってみた。 学者さんの作品らしく最初は読みにくいな、と思ったのだけど…なんというかくどいんだよね。「積極的に」というところがミソで例えば干上がった池で魚を拾って食べる猿は確かにいるのだけど…みたいなのが続くとちょっとめんどくさくなるんだけどそこを抜けるとかなり興味深い言説が現れる。屈強で身体能力も知力も高かったネアンデルタール人と比べて非力なホモ・サピエンスは水際に追いやられやむなく魚を獲って食べ始めたところから発展が始まったのではないか、という話。発掘された人類の歯型から何を食べていたのかを推測したりするのだけど側面的に補強する検証の過程が楽しい。例えば農耕はメソポタミア地方で穀物の栽培から始まった、という定説に対して、いきなり穀物はハードルが高い、例えば稲作は苗床を作ったり収穫しても脱穀したりなんやかんやと手がかかるのだけど、作者はアジアで魚食から始まって水際でタロイモのようなものを栽培するところから始まってそこから同じく水辺に生えていたイネを育て始めたのが農耕の始まりではないかという提起をする。面白いのは、というと不謹慎だけど太平洋戦争中に孤立した日本軍の手記からも、例えば最初はバナナを発見してそればかり食べているのだがカリウム摂取過多で体調を崩して他の食糧を探す中で原始的な釣り竿を作ってみると慣れていない魚が餌をつけなくてもたくさん採れた、とかそういう話も引用して説を補強していくところなどが興味深い。そもそも脳が大きくなったのもEPA/DHAの摂取が効いているのでは等々、非常に興味深かった。もう少し読みやすくするとよいのに、という印象。

ネットビジネス進化論

ネットビジネス進化論 尾原和啓

アフターデジタルを読んで、オンラインとオフラインの端境がなくなり、日常がオンライン化されている事実に気づかされた。 自分が社会に出る頃にマルチメディアという言葉がもてはやされ、そのあとも、言葉は変われど色んな形でデジタルを活用した日常が広がり、リアルが進化し続ける。 人間が進化し、色んな能力、技術を使いこなしてきたが、やはりヒトは社会的な生き物1人では生きられないし、コロナも乗り越えられないだろう。 新しいフェーズに移るため、そのムーブを起こすため、ネットをタカラとした新しい能力を身につけて、世の中に活かしたい。そんなことを考えるきっかけをもらいました。

NHK出版 学びのきほん からだとこころの健康学

NHK出版 学びのきほん からだとこころの健康学 稲葉俊郎

健康学。頭の肥大化。衛生仮説。唯識。河合隼雄。八識。偽装された感情に気づけるか?具合が悪い時に手を当てるのは、無意識にその部分(臓器)に注意を向け、情報のやり取りをしているから。小さい時から、評価を重視され続けていると、自分の感受性より、相手の顔色を伺いながら理性だけの世界で世渡りする術に長けてくる。もっと欲求に忠実に。

壱人両名

壱人両名 尾脇秀和

壱人両名とは、一人で二つの名前を持つこと。農民なのに町人。町人なのに武士。 厳格な身分制度に支配されていたように思える江戸時代の、建前と実情を読み解いていく一冊。 村の庄屋なんて農民だけど、名字帯刀許されてる家あるもんね。 富農が商売にも手を出して、農民名と、商売の名前を使い分けるパターン。 特定技能を持つ町人が、お上に召し出されて下級官吏を兼務する事例。 商家の名跡や、旗本、御家人の株が「買われる」こともある。 世間的にはバレバレなのに、表向きは別人として遇されてる、なあなあ加減が面白い。

時間は存在しない

時間は存在しない カルロ・ロヴェッリ/冨永 星

夢にまでみたSFの世界が、実は現実に存在していたかのようなワクワクした気持ちになりました。 初歩的なことなんでしょうが、時間って、場所や高さが違うと流れる速さが違うという冒頭ですでに衝撃を受けました。 読み進めていくと、筆者の言う-時間は存在しない-の理由がわかって納得。

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NHK出版 学びのきほん 「読む」って、どんなこと?

NHK出版 学びのきほん 「読む」って、どんなこと? 高橋源一郎

わかりやすいもの、ヴィヴィッドなものがいい文章というわけではない。読むものを考えさせる、読んだ後にまるっきり違う人間になってしまうような文章が良い。 坂口安吾の話とか、小野ヨーコの話が印象的。読解力の深さについて考えさせられる本でした。 小さい子でも読めるようにわかりやすいのも素晴らしい。

年金崩壊後を生き抜く「超」現役論

年金崩壊後を生き抜く「超」現役論 野口悠紀雄

金融庁が老後生活資金について2000万円必要として波紋を呼んだわけですが、そこを起点にして日本の財政と労働問題を解説しています。データをベースに解説してくれるので、分かりやすい。一方で現政策の問題点がよく分かって、少々絶望的になりますね。

やまと尼寺 精進日記 2 ふたたびの年

やまと尼寺 精進日記 2 ふたたびの年 NHK「やまと尼寺精進日記」制作班

普段TVを見ない私は、NHKでこんな番組があることを知らなかった。たまたま図書室の利用者さんが他館所蔵のこの本を返却されたことで知った。 ふもとから徒歩で40分かかる奈良の山寺で暮らす女性3人の朗らかな顔。特に庵主さんのお顔はお地蔵さんのよう。四季折々を味わい尽くすこんな暮らし、ちょっとしてみたい。こちらは2冊目。

親の脳を癒やせば子どもの脳は変わる

親の脳を癒やせば子どもの脳は変わる 友田明美

自己肯定感が低い親。その親の、まず良いところを探して「褒める」。親自身を褒めて、ポジティブを連鎖させる。 マルトリートメントは奥が深い。杉山医師との対談は、その奥深さをしみじみ感じる。 トライ&エラーを繰返しながらも、地域で共同で子育てする仕組みと環境が必要。

暴走するネット広告

暴走するネット広告 NHK取材班

ネット広告の闇の側面に迫った一冊。 悪質なアフィリエイターによるフェイク広告。勝手にページが切り替わりインプレッションを稼ぐアドフラウド等、様々な手口を紹介。 これからは広告を見る側のリテラシーも問われそう。 広告をクリックして、反社会的な存在にお金を回しているのは、自分であるかもしれないわけだ。