伊藤典夫の訳書

ヒトラーの描いた薔薇

ヒトラーの描いた薔薇 ハーラン・エリスン

いわゆるSFの枠に収まらない作家、ハーラン・エリスンの日本版オリジナル短編集。これが2冊目のようだが1冊めは未読。「世界の中心で愛を叫んだけもの」なんかと同じく、世界そのものの、あるいは人間社会の不条理への怒りというか憤りが行間からあふれでてくる。ここに納められたいくつかの短編はSFというよりはファンタジー(と言ってもダークな)のトッピングをまぶしてはあるものの、人間の狭量さをえぐり出すような告発があるが(なかでも「バシリスク」がむごたらしさ的には逸品)、返す刀で神や宇宙のような、人間を作り出しておきながら無関心な存在をも袈裟懸けに切り捨てる。坂口安吾だったと思うが、広隆寺の弥勒のあまりによく知られた謎の笑みを邪悪な笑みと評していたが、エリスンもあの笑みに秘められた邪悪さを読み取ることができる作家なのだろう。

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決定版 2001年宇宙の旅

決定版 2001年宇宙の旅 アーサー・C. クラーク

中盤まで伏線部分が長くてだれるかと思ったけど、機械との緊張感あふれるやりとりが始まるあたりから加速度的に物語が展開して行く。 こんなに想像力を掻き立てられ、引き込まれる小説もなかなか無い! 楽しい貴重な旅を経験できました。

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破壊された男

破壊された男 アルフレッド・ベスター

テレパシー能力を持つエスパーたちがギルドを結成して人類の正義に奉仕している24世紀の未来世界。テレパシーで人の心を読み取る彼らの能力により犯罪自体が成立しなくなった社会で、完全犯罪を企てる若き資本家と、それを暴きたてようとするエリートエスパー捜査官。もうこれだけでもザ・SFって感じですが、悪役の資本家のかっこいいことかっこいいこと。読んだことないからわからないがハードボイルドってのはこんな感じなんだろうかね。犯罪の計画をエスパーに読み取らせないための小細工とか24世紀の金持ちたちが開く乱痴気騒ぎなどなど小ネタもさまざまに散りばめながら怒涛のごとく一気に読ませる。 50年も前に書かれたとは思えない第1回ヒューゴー賞受賞作。

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死の鳥

死の鳥 ハーラン・エリスン

エリスン3冊目のアンソロジー。枠にはまらない作家と書くと簡単だけどそれだけの腕力があらからこそなのだろう。優れた作家はみんなそうなんだろうけど。 表題作の「死の鳥」や「『悔い改めよ、ハーレクイン』とチクタクマンは言った」などSFらしさのあるものから「ソフト・モンキー」のようなちと後ろめたい読後感を残すものまで幅広いが、そこに込められた思想というか思念は相当にソリッドで、強烈な否!という声が聞こえてきそう。短編は好きだが雑誌買ってまで読まない人間にはアンソロジーはとても助かる。選者の好みも含まれてるのかもしれないがそうした選択の面白さなりつまらなさもアンソロジーの妙味ってとこ。

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猫のゆりかご

猫のゆりかご カート・ヴォネガット・ジュニア

スローターハウス5に続いて2冊めのカート・ヴォネガット・ジュニア。日本に原爆が落とされた日、関係者達は何をしていたのかというノンフィクション「世界が終末をむかえた日」を書こうとしている主人公の話。融点が45.8度の結晶体「アイスナイン」が発明されたことを取材を通して知り… - なんだか最初は面白かったけれど、サン・ロレンゾ島に行く辺りから、他人から聞く「昨日、こんな夢見てさ~」という荒唐無稽さを感じてしまい、上手く物語の中に入り込めなくなっているうちに、大変なことになって、さらに大変なことになって、またまた大変なことになって物語が終わってしまった。ボコノン教信者的に言うと「目が回る、目が回る、目が回る」状態。

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スローターハウス5

スローターハウス5 カート・ヴォネガット・ジュニア

時代を行ったりきたりしたりしつつも、戦争のリアルな一面が描かれていたり、今まで読んだどの戦争の物語ともテイストの違った小説。登場人物が死んだときの「そういうものだ」の一言がとても悲しく響きました。

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