小尾芙佐の訳書

ヒトラーの描いた薔薇

ヒトラーの描いた薔薇 ハーラン・エリスン

いわゆるSFの枠に収まらない作家、ハーラン・エリスンの日本版オリジナル短編集。これが2冊目のようだが1冊めは未読。「世界の中心で愛を叫んだけもの」なんかと同じく、世界そのものの、あるいは人間社会の不条理への怒りというか憤りが行間からあふれでてくる。ここに納められたいくつかの短編はSFというよりはファンタジー(と言ってもダークな)のトッピングをまぶしてはあるものの、人間の狭量さをえぐり出すような告発があるが(なかでも「バシリスク」がむごたらしさ的には逸品)、返す刀で神や宇宙のような、人間を作り出しておきながら無関心な存在をも袈裟懸けに切り捨てる。坂口安吾だったと思うが、広隆寺の弥勒のあまりによく知られた謎の笑みを邪悪な笑みと評していたが、エリスンもあの笑みに秘められた邪悪さを読み取ることができる作家なのだろう。

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心の鏡

心の鏡 ダニエル・キイス

そういえばSFの人でした。 『アルジャーノンに花束を』の原型である中編も収録されてあるので、読み応えありました。

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ママは何でも知っている

ママは何でも知っている ヤッフェ・ジェイムズ

安楽椅子探偵物として座間味くんシリーズの次に読み始めた。 解説が法月さんのもあって手にとってみた。 60年近く前の古典と思っていたけれども、かなり読みやすい。 ただあまり登場人物のキャラは好きじゃないな…とは思ったり。 それを抜いてもライトに読者への挑戦を味わえるのでいい作品です。

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闇の左手

闇の左手 アーシュラ・K・ル・グィン

冒頭だけ読んで、難しそう・・・と思って長く積んでたんですけど、読み始めたら好奇心をくすぐる異星の風景と、魅力的な登場人物(というかエストラーベン)に引き込まれて一気に読み終えてしまった。 ゲセン人は両生体で発情期があり、相手とのコミュニケーションで性別が瞬間的に変わるタイプの人類なので、ジェンダー的な縛りがない。 男でもあり、女でもあり、官僚であり、逃亡者であるエストラーベンは、男のように行動力があり寡黙で、女のように忍耐強く計画性があり、官僚らしく民衆を気遣い、逃亡者らしく周囲に期待しない・・・という各ラベルの良いところを凝縮したような人物で、地球人だったらリアリティがない・・・と思うな高潔な人物ですが、異星人だからか自然と受け入れることができた。 (ゲセン人は性別がないので、逆に男のように粗暴で、女のようにだらしなく、民衆を搾取し周囲に甘える・・・というようなところまで落ちることもできるんだろうな・・・とも思う) しばしば、「具体ではなく抽象を大切にする」旨の描写が出てくるのですが、まさに真の愛や友情は相手を傷つける面や不理解の領域を含んでいるし、真の使命、真の誠実さというものはそれに相反するような微妙な要素がいくつも混ざり合っていて形作られていて、一見分かりづらいけれど、人類はそれをわかる努力をしていかねばならない・・・みたいな抽象的な感想を持ちました。 追記・この作品が1969年に書かれていたなんて!価値観や異世界のセンス、翻訳の文体もぜんぜん古く感じなくててっきり2000年以降に書かれたものかと・・・!!ひええー

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ロボットの時代 アシモフのロボット傑作集

ロボットの時代 アシモフのロボット傑作集 アイザック・アシモフ

アシモフのロボットものの中で、「われはロボット」に入らなかった作品を集めた短編集。こちらは各短編の冒頭に、アシモフ自身がそれを執筆した経緯をちらりと載せている。 アシモフの書いたロボットものの短編は、正味2冊分しかなく、意外と少ないが粒揃い。もっと書いて欲しかった。 でもロボット三原則という題材は、後の作家たちにも受け継がれているので、これを作っただけでも凄いというべきかもしれない。

夏への扉

夏への扉 ロバート・A・ハインライン

「どんな話なの?」と聞かれれば、「ドラえもんよりも早くタイムマシンに乗った猫の話」と答えてしまう傑作。福島氏の訳も素晴らしかったですが、これから初めて読むと言う方には、この新訳の方をお勧めします。訳者のあとがきにも、ホロっとさせられますよ。 難波弘之氏が、SFをテーマにしたアルバムを作った時に、山下達郎氏と吉田美奈子女史とともに「夏への道」を作ったのも有名な話。なので達郎氏はセルフ・カヴァなのであります(^^)

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