斎藤真理子の訳書

すべての、白いものたちの

すべての、白いものたちの ハン・ガン

東の雪は、こんこんと天から降りる。しんしんと積み重なり、そして、ひしひしと冷たさが指先に絡みつく。なにか後ろめたさがあるかのように、ひとびとは音も立てず、雪を踏みしめ、そのうえをまた誰かが踏みしめる。このすべての白のしたには、死とか邪悪とか冷酷とかが横たわっていて、あああ、とこらえが漏れるように白い息を吐き出す。 ハン・ガン『すべての、白いものたちの』。静かな物語だ。きめが細かいけれど、突き放すように冷たい肌。きれいだけれど、長くて骨が角を立てる手。笑っているけれど、どこか遠くを望むような目。そんなことを思わせる作品だ。 詩のような作品だ。でも、死を纏った作品でもある。知らない街の知らない雪が、ひとりでにそのひとを立ち現せる。あったこともない、あったならば「私」がいることもない、決して交わらないそのふたり。私よりも若い、お姉ちゃん。 うぶぎ、ゆき、つめ、こめ、はくさい、ほね。白いおくるみに包まれて、失われていく白い体温に想いを馳せる。漂白された街のなかのことばだから、そこには悲しみと優しさが横たわっている。

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82年生まれ、キム・ジヨン

82年生まれ、キム・ジヨン チョ・ナムジュ

最後の解説で涙が出てきそうでした。昔の女性(ここでいうキムジヨンの母)のエールがあって、犠牲(と言っていいのか)があって、女性の社会進出があったのに、結局は逃れられない立ちはだかる壁があって、 韓国だから徴兵もあるし、またより一層男女の差というのはひどいんだろうなと思う。 私は、「私は被害者です!」と過剰に騒ぎ立てるフェミニストは嫌いです。 でもこの本で書かれてる、女性であることによって生まれた不快感や不便さ、許せないこと、疑問に思っていたこと、非常によくわかります。 こうして、主張できる今だからこそ、男性にも読んでもらいたいです。 (負の感情をぶつけても、何も生み出さないけど、せめて自分の世代には読んでもらいたい) 男女ともにエンパシーではなくシンパシーができる世の中にしていきたいですね。

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鯨

鯨 チョン・ミョングァン

母子二代にわたる途方もなく脂っこい大河ドラマ。この長大な物語の荒波を渡り切った後だけに見ることができる景色は、曲者ばかりが跋扈するキテレツな躁状態からは思いもよらない、底なしに深い静かな祈りだった。まさかそんな角度から心をえぐってくるとはー!

フィフティ・ピープル

フィフティ・ピープル チョン・セラン

韓国の大学病院に勤務する人々とその患者、彼らの友人や親兄弟など、様々に繋がる50人の短編小説集 年齢も境遇も違う登場人物たちが、実はみんな繋がっている その仕掛けだけでも十分魅力的なのに、各々の物語がとてもいい 50話もありながら飽きさせることなく、しんみりしたりクスッとしたり、考えさせられたり この50話の中に必ずお気に入りになる一話が見つかるはず 多くの人にオススメしたい

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すいかのプール

すいかのプール アンニョン・タル

韓国原作の絵本を手に取ったのは初めて。発想がとっても可愛らしく、夏に必ず読みたくなる。すいかが食べたい