柳沢由実子の訳書

バルコニーの男 刑事マルティン・ベック

バルコニーの男 刑事マルティン・ベック マイ・シューヴァル

もともと名高いシリーズでとくに「笑う警官」という作品が"ミステリ100選"みたいなのにはよく入っててそれはかなり前に読んで面白かったのだけど他のシリーズ作が当時は出ておらず…ふと気がつくとシリーズが続々翻訳されていたので手にとってみました。 ストックホルムの警官を主人公とする警察小説のシリーズで本作は三作目。連続する少女殺害事件、証言は3歳の子供と強盗犯の証言のみ、という状況に挑む刑事達の活動を描く。もう40年以上前の作品だから十分古典なんだけど実に面白い。他の作品も読んでみなければ。

刑事マルティン・ベック 煙に消えた男

刑事マルティン・ベック 煙に消えた男 マイ・シューヴァル

スェーデンが世界に誇る警察小説シリーズのこれが第二作らしい。エドガー賞を獲った四作目の「笑う警官」だけを邦訳で読んだことがあったのでシリーズを順次読んでいってるところ。三作目、一昨目ときてのこれ。スェーデンのジャーナリストがハンガリーで消息を断つ。スェーデンには第二次大戦の結果、国民に思い出させたくない過去があるので極秘裏にジャーナリストを捜索させようということで休暇に入ったばかりの主人公が急遽呼び戻される。至って普通の警官である主人公はブダペストで途方にくれるが動いているうちに…という話。まだ東西冷戦の頃に書かれた物語だけど全く色褪せてなくて驚かされる。以外な展開も面白くて楽しめた。

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笑う男

笑う男 ヘニング・マンケル

時々思い出したように読むスェーデンのミステリ・シリーズの一作。 デンマークに近い地方の警部を主人公に地道な捜査と適度なアクションが丁寧に描かれて好感が持てるシリーズ。 本作は前作で正当防衛とは言え人を殺した警部が鬱になり警察を辞める決心をするところから始まる。 鬱でやすんでいる間に友人の弁護士が父親の事故死が納得いかない、と相談にくるが断ってしまう。辞表を出しに行った日にその友人も射殺されたことを聞き、警察に復帰を決意して、というお話。 シリーズの長所が良く出ててなかなか面白い作品でした。

緑衣の女

緑衣の女 アーナルデュル・インドリダソン

アイスランド・ミステリで前作の「湿地」がなかなか面白かったのと、CWAゴールドダガー賞、ガラスの鍵賞の同時受賞という評価の高さで楽しみに読みました。 が自分にはあまりにも陰鬱で悲惨すぎる話であまり楽しめなかった...偶然子供が拾った骨から何十年も地中にあった骨が発掘され、その身元を探っていく話。ネタばれになるかもしれませんがDVをテーマにした作品でした。 主人公の酷い家庭環境もあまり楽しめないし...後味の悪い読後感でも平気な人にはお薦めかも…

本を書く

本を書く アニー・ディラード

森羅万象、図があり、器があり、分母がある。 この書評も失戀中の君と片想い中の君が読むのとでは、沁みかたが異なる。 君という分子は等しくとも、分母が異なるからだ。 さて、アニー・ディラードはこの分母からはいる作家であった。 いつもの書斎から生まれる表現を厭がり、たった一文を表すために例えば、巨大な工場を貸し切ってみたりする。 人は環境の動物である。 環境とはすなわち分母であるまいか。 #リジチョー。

北京から来た男 上

北京から来た男 上 ヘニング・マンケル

北欧ミステリの第一人者と言っても良い作者のノン・シリーズ。 北欧の寒村で村人の殆どが惨殺される、という事件が起こる。裁判官である主人公の女性はたまたま母親がその村と関係があったことから事件に興味を持ち、独自に調べるうちに中国との関連に気がつき、という感じで展開する物語。 その昔、アメリカの鉄道敷設に中国人が奴隷として使われていた史実、現代中国の格差問題とアフリカとの関わり、など、北欧の寒村から始まった物語は思いもかけないスケールに発展する。ところどころ不自然な点はあるもののじゅうぶんリアリティのある背景が描かれており読み応えある一作だった。 しかし作者はかなりの左派らしくそこだけはちょっと引っかかる。ジンバブエのムガベや文化大革命における毛沢東まで擁護するかのごとく、のくだりだけはどうしても違和感があった。

湖の男

湖の男 アーナルデュル・インドリダソン

アイスランドから質の高い作品を出し続けている作家の最新作。「池の水全部抜く」じゃないけれど…干上がった湖の底からソビエトの暗号機をくくりつけられた白骨死体が出てきて個人的な事情から失踪事件に深い関心を持つ警官が地道に捜査していく、という物語。捜査と戦後すぐの東ドイツに留学した社会主義の学生たちのエピソードが交互に語られやがて両者が合わさって、という形態。母国アイスランドのみならず北欧全域での人気と評価を誇る作者だけに話が一本化しても単純には流れない。主人公の崩壊しきった家庭など暗澹たる物語だが読後感は悪くない。このシリーズはおすすめ。本書が2004年とかなり前の刊行で本国ではこの後も十数冊続いているシリーズとのことでまだまだ楽しみ。

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刑事マルティン・ベックロセアンナ

刑事マルティン・ベックロセアンナ マイ・シューヴァル

警察小説の金字塔と言われるシリーズのこれが第一作ということで。アメリカの87分署シリーズに影響を受けたスェーデンのこのシリーズ、「笑う警官」という作品が名作として有名なのだが第一作目にしてスタイルが確立されていることが分かった。スエーデンの観光名所である運河で見つかった女性の遺体を巡る地道な捜査の記録。主人公も至って普通の人間だし周囲にもスーパマンはいない。何も進展しない時間が長々と過ぎたりするし、ミスがあったり生活くさかったり。それでも中だるみせずにじわじわと犯人に迫って行く刑事達。既に古典の域だけど全く色褪せていないところも見事。面白かった。

喪失

喪失 カーリン・アルヴテーゲン

主人公のシビラは、ただ奪われたりしない。抵抗する。身体の自由を奪われない様に。心の自由を奪われない様に。読んでいる間中、シビラの過去の身体的閉塞感、心的閉塞感が付きまとう。彼女は、時には諦め、流されそれでも必死に逃げる。でも何故か切迫感は伝わってこない。ただ流れ様に生きるシビラ。読後、タイトルの『喪失』がしっくり来なかった。シビラは何も失った様には感じられなかったから。自分の意志からでは無かったり、自分が許可も求められず誰かに身体や心を閉じ込められる事から必死に逃げ、小さな自由と居場所に辿り着いた話である。

白い雌ライオン

白い雌ライオン ヘニング・マンケル

スェーデンの警察小説の三作目。 自分にとってはこのシリーズも分厚くてテーマも重いので面白いのは分かっているけどなかなか手が出ないというか覚悟を決めてから読む作家の一人。 本作も発端は不動産会社の女性が失踪しただけの事件から南アフリカの情勢に繋がって果ては...という展開。 携帯電話もeメールも無い時代の話が却って新鮮かもしれない。 大変面白いので次作以降もポツポツ思い出したように読んでいくことでしょう^^

リガの犬たち

リガの犬たち ヘニング・マンケル

スェーデンのミステリ作家、ヘニング・マイケルのヴァランダー警部シリーズ第二作。ある日、スェーデンの片田舎の海岸にゴムボートに乗った二人の射殺躰が流れ着いて、田舎警官のヴァランダー警部が奮闘する、というお話。残念ながら後半かなり雑に巻きとってしまった感はあるものの、ソ連崩壊直後のバルト三国の雰囲気など非常に面白く読めました。