臼井美子の訳書

失われた宗教を生きる人々――中東の秘教を求めて

失われた宗教を生きる人々――中東の秘教を求めて ジェラード・ラッセル

すごく楽しみにしてた作品。中東に今も残るマンダ教、ヤズィード教、ゾロアスター教、ドゥルーズ派、サマリア人、コプト教、カラーシャ族、といった少数派の宗教、または独自の信仰を守っている部族についてまとめた本。作者はイギリスの外交官でアラビア語に堪能なこともあって中東で長く勤務しており、その際にこれらの宗教について興味を持ったらしい。現代のニュースを聞いてるとにわかには信じられないが元来、イスラムは他の宗教、特にそれが一神教でかつ啓典を持っている場合には特に寛容で、更にムスリム以外からは大目に税を取ったことから実利面でも無理矢理ムスリムにするようなことはしなかったらしい。そのために一見イスラム教しか存在しないかのような中東において、エジプトのコプト教のようなキリスト教の一派から、バビロニアから連綿と続くマンダ教、あまりにも秘儀過ぎて信者の殆どが自らの教義を知らないヤズィード教、元々はイラン(ペルシャ)の国教であったゾロアスター教などが生き残っているのだという。一見ムスリムのようだが輪廻転生を信じ、むしろピタゴラス教団の流れを組むと言われるドゥルーズ派、ユダヤ人と似ているが異なるサマリア人、ヨーロッパの人と外見が似ておりアレクサンダー遠征群の末裔と言われあまりにも辺鄙なところに住んでいるために原始の信仰を今も守っているパキスタンのカラーシャ族など興味深い話が満載。作者は実際に現地で信者に会って話を聞いてきるのだがどこも危険地帯ばかりでよく行ったな、という驚きがある。専門の学者ではなくて外交官だからか小難しい理屈は無くて実態をきちんと報告される形式だったのも好ましい。これらの例を見ても国力が充実しているときはマイノリティへの迫害はなく、国が混乱したり衰退すると少数派が迫害を受ける、ということがよくわかる。いろいろ考えさせられた非常に良い作品。とても面白かった。

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