野中香方子の訳書

逆転の大戦争史

逆転の大戦争史 船橋洋一

なんとなくタイトルから「いろんな戦争のことが書かれた本なのかな」くらいの軽い興味で手にとってみたのだがとんでもない誤解。かなり重要な作品だった。ちゃんと理解できているか不安なのだが…その昔、世界にとって戦争とはあくまで外交の延長にあるものでつまり合法な行為であった。どちらが正しいか裁けるものがいない以上、当事者同士で話をつけるしかなく話で無理であれば力でかたをつけるしかない、ということ。強者による弱者の征服もそのような文脈の中では正当な行為とされた。このルール(旧世界秩序)においては当事者以外は公平な立場を維持する、つまりどちらにも味方しないがどちらとも交易を行う、ことが求められていた。このシステムが原因で第一次世界大戦が起こり、その反省から「戦争は違法である」という取り決めがなされた。これが今ではほとんど忘れられているパリ不戦条約だがこれには違反者を戒める手段がなく、日本、ドイツ、イタリアの暴力を止める手段が違法と皆で取り決めた戦争しか無かった。この第二次大戦の反省も踏まえて考えられたのが今の新生活秩序であってその結果、征服戦争のようなものは起こっていない…ということが説明されている。「暴力の人類史」で説明されている暴力の減少には国際法の整備というシステムも貢献している、ということが分かる。第二次大戦の対立軸がなんだったのか、なぜあのような展開になったのか、また大戦後多くの植民地が開放され民族自決が台頭してきたのか、という大きな流れが「こういうことだったのか」と理解できた気がする。恥ずかしながらドイツとイタリアの憲法にも日本の九条と同じ条項が入っている、ということも知らなかったのでかなり新鮮に読めた。イスラム原理主義の台頭の意味やトランプのアメリカの振舞いがなぜ危険なのか等々、現在進行系の世界のことも説明されていてかなり興味深く読めた。非常に良かったのだが内容を踏まえて邦題を見るとかなりの違和感がある。原題「The Internationalists: How a Radical Plan to Outlaw War Remade the World」のままだと日本向けには不適切というのも分かるのだがこの素晴らしい内容をもっと的確に伝える術がなかったのか...とそこだけは残念。とにかく素晴らしかった。

2052 今後40年のグローバル予測

2052 今後40年のグローバル予測 ヨルゲン・ランダース

40年前も今も未来は明るくなさそうだけど「描き出された未来は予想よりはるかに多様だった」というところが印象に残った。 ・気候変動は都市化を加速する。また気候変動に対応できる都市と出来ない都市と間の違いが広がる ・Webの発達で同じ意見を持つ人は集まりやすくなるけどコンセンサスの形成は難しくなる

人間は料理をする・上: 火と水

人間は料理をする・上: 火と水 マイケル・ポーラン

上巻は火と水ということでバーベキューと煮込み料理。著者の修行体験から料理の起源、食べ物の化学反応、神話での描かれ方、料理の産業化やその役割の変遷に至るまで、縦横無尽に料理にまつわる話が書かれていく様子がとても面白かった。煮込み料理を勉強しまくった最後に家族と電子レンジナイトやっちゃうような感じで、説教臭くないのも読んでいて気持ちいい。下巻も楽しみ。

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