土屋政雄の訳書

人生の段階

人生の段階 ジュリアン・バーンズ

最後の章の実体験がすごい。 人が亡くなった時に残された者の気持ちがつぶさに語られる。 喪失感を白鳥の羽が重くなるのことに例えるのはやはりバーンズならでは 悲しい体験をしてしまった時に心の拠り所になるかもしれない一冊

ねじの回転

ねじの回転 ヘンリー・ジェイムズ

女性同性愛的だと感じたら、やはり解説にもそんなことが。本当に亡霊的な現象なのかそれとも妄想のようなものなのか、という問いを事前に聞いていたので考えながら読んだけれど、やはりどっちとも判断がつかない。それを誘っているのだろうか……。

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コンゴ・ジャーニー〈上〉

コンゴ・ジャーニー〈上〉 レドモンド・オハンロン

あのカズオ・イシグロが大絶賛している、ということをどこかで見かけて手にとってみた作品。タイトルそのままイギリスの紀行作家というか冒険作家がアフリカはコンゴの奥地にある湖まで旅した旅行記。さすがイギリス人というか凄まじくひねくれた内容。そもそも作者の目的がコンゴ奥地にある湖で目撃情報があるという恐竜モケレ・ムベンベを見つけたい(そして儲けたいと)いうことだし、旅行記そのものもリアルというかこれを読んで自分もこういう旅をしてみたいという人は恐らく精神的に病んでいるであろうと思われる内容。賄賂をすぐに要求してくる政府の役人、害虫だらけで危険だらけの旅に呪術を真面目に信じている人々に振り回される日々。冒険に同行してくれることになった政府の役人兼学者とその親族も一癖も二癖もある連中で旅の途中で会う人々もどこかおかしな人がほとんど。そもそも原題は「No Mercy」だし。しかしそれだけならあの大作家が絶賛するわけもなく…めちゃくちゃな旅の記録ではあるのだけど全く美化されていない内容の中に深く考えさせられる記述がちらほらと出現し飽きさせない。旅に同行したアフリカの学者が思いの丈を吐き出すシーンなどは壮絶ですらある。そして無事、旅を終えて出国しましためでたしめでたし、とは全く異なるラストには驚かされた。長さもさることながら内容もヘヴィなので力のある時に読まれることを勧めます。すごい作品。面白かった。

出島の千の秋 上

出島の千の秋 上 デイヴィッド・ミッチェル

幕末日本の出島を舞台にした物語でブッカー賞候補作のベストセラーということだったので手にとってみた。 主人公は出島のオランダ商館に新しく赴任してきた事務員。彼の出島での新たな生活が描かれる前半三分の一は静謐な感じでストーリーが進むのだが中盤から副次的なストーリーがいくつか大きく動き出す。 出島に出入りしている学者の娘、新興宗教に凝る出島近辺の藩主、藩主の悪行を知りこれに立ち向かおうとする通詞、オランダに取って代わろうとするイギリス軍艦の艦長などなど。 事務員を軸にいくつかのサイドストーリーが動いて最終的に収束していく形。 日本人的には変な部分がいくつもあったりちょっと詰め込み過ぎの部分もあるけど、史実に適度なフィクションが混じってなかなか面白い作品ではあった。ただ、幕末日本で二人称が「君」とかちょっと翻訳は考えて欲しい部分がいくつか。

わたしを離さないで ハヤカワepi文庫

わたしを離さないで ハヤカワepi文庫 カズオ・イシグロ

描かれている世界が普通でないことは序盤から窺える。導入部では注意深くチューニングを合わせるように自らを馴染ませていく。そして焦点が定まったことに気付く暇もなく、緻密に構築されたリアリティのある物語に潜り込んでいる。これは前知識なしで読んでこそ味わえる心の揺さぶりがあると確信します。

夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語

夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 カズオ・イシグロ

人生の夕暮れ、夫婦の危機、才能を認められない不満など、哀しみを感じる5つの物語。当人達が真面目に悩んだり行動したり姿が、コメディでもあり、叙情的でもある。もう一度、音楽とともに読み直したい。

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わたしを離さないで

わたしを離さないで カズオ・イシグロ

読みやすかった(後からすっきり辻褄が合うとか、登場人物がこんがらがらない丁寧さというか、違和感のない整理整頓された部分とか)‬ ‪人間はどこから人間なのかとか、教育されてても自分が生き残りたい欲望とか垣間見えて、人間(生き物?)の生存本能とか‬ ‪トミーがルーシー先生から与えられてたのは無償の愛なのではないかと私は思ってたしそういうテーマの小説かと思って読み進めてたけど、違かったみたいです。 これはフィクションだけど、実際どうなんだろう。 親を探したいと思ってポルノ雑誌で探すのだろうか。 まさに想像の範囲だけど、想像できるかもしれない、そんな光景 ‬ ‪因みに約束のネバーランドから入ったタイプです。‬

309
日の名残り

日の名残り カズオ・イシグロ

カズオイシグロの作品として最初に読んだ本でした。読み始めてどのような話か最初はわかりませんでしたが、謙虚な執事、使用人の会話の内容、また今と違う時代の流れを感じました。ゆったりとした。心落ち着く内容でした。

119
忘れられた巨人

忘れられた巨人 カズオ・イシグロ

ファンタジーとしての面白さだけでなく、作者が小説のテーマとしていることが明らかになってくると、更に面白さが増してくる。 読後も、作者の投げかけるテーマについて自分なりの考えを巡らせている。 ファンタジーが苦手な人にもおすすめな作品。

48
ダロウェイ夫人

ダロウェイ夫人 ウルフ

たまたま手に取った初のウルフ作品がとんでもなく面白くて一気読み。 土屋さんの翻訳もやっぱり見事でした。

終わりの感覚

終わりの感覚 ジュリアン・バーンズ

こちらをよんだのですが、、 主人公の立場になってよんだせいか、 わかりませんが 自殺だとか遺書の部分など大事な箇所が淡々として進んでいたので思い出せませんでした  ただ、他人と自分では感じ方や捉え方がちがうんだなということも改めてわかりまし世の中後でわかることはあるんだぁ とおもいます。 たぶん二人は分かり合えていなかったし、男性がただ鈍感で軽くみていたのかもしれません。 印象に残ったのはそういうところでした。 関係者になじられても 主人公が淡々とやはりしていたから、また読まないとないわからないかもしれません 普通に生きていても人と関わるとミステリーになったりして世の中うかうかできません ボーっと呆気にとらわれる余韻がのこる本です。

イギリス人の患者

イギリス人の患者 マイケル・オンダーチェ

このうえなく美しく、悲しく、力強い、詩篇のような物語。 砂漠に墜落した複葉機から救い出された死にかけの患者。彼を看取るために従軍看護部隊を脱する女。二人は無人の洋館に身を寄せ、互いに心を近付けながら、やがて心を通わせてゆく。男が語り出したのは、かつて誰よりも愛した女性と、彼女と過ごした日々の記憶。砂漠の地理、知る人の無い遺跡、ヘロドトス。 全ての情景が静謐な美に溢れ、一枚の絵画を眺めているかのような感慨が沁み渡る。