黒原敏行の訳書

八月の光

八月の光 ウィリアム・フォークナー

逃走を続けるクリスマスに訪れる夜明けの夜と朝でもない空白の時間の一瞬をとらえたこの場面に救いを見た。「今まさに夜が明けようとする。鳥たちが一羽また一羽と眼醒めてのどかに囀りはじめる灰色の寂しい静止の時間。吸い込む空気は泉の水のようだ。彼は深くゆっくりと呼吸し、ひと息ごとに自分が曖昧な灰色の中に溶け込み、怒りや絶望とは全く無縁な静かな寂寥とひとつになっていくように感じる。『俺が欲しかったのはこれだけだ』と彼は静かで穏やかな驚きとともに思う。『三〇年間、欲しかったのはこれだけなんだ。三〇年かけてこれだけなら、そんなに贅沢とは言えないだろう』」p.476

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チャイルド・オブ・ゴッド

チャイルド・オブ・ゴッド コーマック・マッカーシー

アメリカの大作家、コーマック・マッカーシーの70年台の作品。 中編くらいの長さで一気に読めてしまう。 幕開けからして主人公が親から引き継いだ家土地を競売にかけられ追い出されるシーンが描かれる。 山中に引きこもった主人公は世捨て人にもなれず、性欲の持って行きばに困った挙句、連続殺人と屍姦に手を染めていってしまう...凄まじく厳しく汚らしい話が美しい文体で綴られておりより凄惨な感じがする。 誰にでも薦められる作品では無いが大した文学であることだけは間違い無い...

闇の奥

闇の奥 ジョゼフ・コンラッド

漱石と村上春樹が愛読者だった、それだけで読んで見たい気もするが、地獄の黙示録の原作であったということで必読になった。 この新訳をもってしても現代の本に慣れているとやや気合いがいるが、入り込んでしまえば一気に進みます。 闇とは密林であり、人の心でもある。

エンジェルメイカー

エンジェルメイカー ニック・ハーカウェイ

ハヤカワのポケミスでも類を見ない程の分厚さ…世評が高かったので読んでみました。 機械職人として静かに暮らしているギャングの息子の元に持ち込まれた謎の機械。彼がこれを修理したことから彼の生活と世界そのものが一変する…というSF話なんだが。 これは合わなかった。荒唐無稽な話に無造作に死んでいく人達、必然性の無い残虐描写など。 そういうのが好きな人にはオススメかな。 意地で最後まで読んだけどちょっとしんどかった。

キル・リスト

キル・リスト フレデリック・フォーサイス

巨匠フォーサイスの邦訳最新作。ほんとにこの人の「ジャッカルの日」を読んだ時は驚いた。高校生くらいだった気がするな…今見てみたらあんまり流通していないようだけど、あんなに面白い作品が... 本作はテロとの戦い、を描いた作品でクランシーとかが書くような作品(笑) アメリカには大統領に報告されるアメリカの敵をリストした暗殺対象のリストがあって、その対象を探し出す部局があるという設定。Youtubeで過激なメッセージを流し続ける謎の男と、彼を追い詰める追跡者の話です。 すんごく面白い作品だったけどあのフォーサイス、と思うとちょっと違うかな、という気もしたり... いやいや凄く面白い作品でした。

越境

越境 コーマック・マッカーシー

人の行動や景色の移り変わりをこれでもかと細かく描写する事で、決して映像では実現出来ない位はっきりしたイメージを読者に植え付ける。運命や物語に関する謎かけも面白い。何度読んでも世界観にのめり込める一冊。

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世界が終わってしまったあとの世界で(上) (ハヤカワ文庫NV)

世界が終わってしまったあとの世界で(上) (ハヤカワ文庫NV) ニック・ハーカウェイ

上下巻まとめて感想。 延々と続く「なに?どういうこと?」という語り。どこまでが計算で、どこまでが「ただ好きなだけ!!」なんだろう。 読了後も納得いかない点が多々ありながら、これだけアツい思いがこみ上げる本もない。 S・キング、J・ケラーマン、ジョン・ル・カレと続いた息子シリーズ。 キングのムスコ君は真っ直ぐホラー道を歩んでるけど、後者のムスコ君たちは独自路線。どっちも面白いー。

エコー・メイカー

エコー・メイカー リチャード・パワーズ

事故で大怪我を負った弟のため、唯一の肉親である姉は仕事をなげうって帰省する。弟は奇跡ともいえる復活をするのだけども、頭の怪我によって、姉を認識することができない。愛情が深いものほど認識できない-自分を育ててくれた姉、飼犬、自分が買った家-についてそっくりだと思うのだけど、同一だと認識できない、という症状を発してしまう。 実際にある症例らしいのだけど、これは怖い。弟は見知った顔を同一人物と認識できないのでどんどん何かの陰謀が進行していると思いだすし、姉は弟に認識されないもどかしさでおかしくなりそうになる。 そこに事故の真相究明が絡んできて...というお話。 全米図書賞、ピュリッツァー賞最終候補ということで読んでみましたが面白い作品でした。長くて重たいですがこれはオススメです。

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