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Katsuhiko Moroi

乱読家です

乱読家です

17

コメントした本

ウニはすごい バッタもすごい - デザインの生物学

昨年あたりからのストレス解消は、およそ仕事にも生活にも関係ない、どうでもいい知識を仕入れて悦に入ること。誰かに話すこともせず、「なるほど、すごいな」と思うだけで満足しています。 という意味では、この本は最高の時間を与えてくれました。著者は歌う動物生理学者の本川達雄さん。「ゾウの時間 ネズミの時間」の中で「ゾウさんもネコもネズミも心臓はドッキンドッキンドッキンと20億回打って止まる」と忘れられない歌を作詞作曲しています。 現在、知られている動物の種の数はおよそ130万、その95%が背骨を持たない無脊椎動物。本書はサンゴ礁、昆虫、貝、ヒトデ、ナマコ、ホヤなどを取り上げ、なぜ今のようなデザイン、機能を得るようになったのかを説明します。 面白いと思ったのは、昆虫は筋肉とクチクラという素材をバネに、羽という錘をつけてバネ振り子を構成。最初にちょっとだけ筋肉を収縮させてやれば、あとは自動的に羽の上下振動を繰り返すという話。貝殻の対数ラセンの話。体中に不味く感じさせる物資を持ったウミウシの話。ヒトデが星型(五放射相称)となった誰もが納得できる理由などなど。 圧巻は、ナマコの話。 ナマコの皮はキャッチ結合という組織により少ないエネルギーで長時間硬くすることが出来ます。「毒を備えており、捕食者の心配はほとんどない」。「動くといっても、砂を食べる場所を少々移動するくらい。そのための筋肉はごくわずかでかまわない。おかげで筋肉が少なくなり、体の大部分は身を守る皮ばかり。そんなもの、食べても栄養にならないから」「ますますナマコは安全になる」。そして著者は、そのような環境を「ナマコ天国」と名付けます。 最近、ジャカルタの都心に水族館が出来ました。タッチコーナーなるものがあり、サメの赤ちゃん、ウミウシ、ヒトデ、小型の熱帯魚に触れることができます。ナマコがいたので手で包んでみました。なるほど、幸せそうでした(笑)。 本書は再読に値する本と思います。著者の作詞作曲した楽譜も十分楽しめます。動物生理の学術書ですが、読書が娯楽であることを認識させてくれる新書らしい新書です。お勧めの★★★★。

約2か月前

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新装版 マックスウェルの悪魔―確率から物理学へ

初版は中学生の頃に読んだ記憶があります。図書館にブルーバックスのコーナーがあり、同じく都築卓司さん著者の「タイムマシンの話」と並んで置かれていました。どちらも導入部は面白かったと記憶していますが、途中から専門的な話となり、投げ出してしまいました。 40年以上経ち、今回再読してみましたが、面白かったです。 本書は熱力学の第2法則を豊富な寓話を使ってわかりやすく説明します。数あるブルーバックスの中でも、巻末のブルーバックス発刊の趣旨に最も近い本と思います。 感覚的に理解するのが面倒な第2法則を「分離の状態は、やがて混合という結果に追い込まれることを述べたもの」と「追い込まれる」という言葉を使って説明するなど、職人的教授という気がしました。 面白かったのは、空気が積もらない話。 「①空気分子はできるだけ位置エネルギーを小さくしたい。そのために地上につもってしまうのが最上の策である。 ②たくさんの粒子からできている体系は、実現の確率の最も大きな状態になろうとしている。このためには、空気分子は非常に薄く、同じような密度で遥か上空にまで広がるのが得策である」 そして著者は「両法則の顔をたて」、空気は下に濃く、上に薄く分布すると説明します。 本書のすごいのは、「マックスウェルの悪魔」という分子を自由に操ることのできる悪魔を登場させ、分子移動の不可逆性を寓話として理解させようとすること。また、これまた理解が難しいエントロピーを金属とゴムの収縮の違いを例にとって説明し、読者に何となく理解した気にさせてしまうこと。40年前、完読しなかったのが悔やまれます。 なお、エントロピーを理解しても、日常生活に役に立たつことはないと思います。それでも、読書の楽しさを十分に味わえるおすすめの★★★★★。

2か月前

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バーニング・ワイヤー 上

リンカーン・ライムシリーズの9作目。大好きなシリーズですが、読むのは1年に1作と決めています。シリーズを完読してしまうのが、もったいないのと、読み始めると他のことが手につかなくなるから。 今回は電気を殺人道具として自由に操る犯人とライムの死闘を描きます。読みどころは、殺人予告のタイムリミットの中でライムや美貌の刑事アメリア・サックスたちが如何に証拠を集め犯人に迫って行くか?アナログのFBI捜査官フレッド・デルレイの泥臭い活躍にあります。 ダレるところが殆どない超一級エンターテイメントですが、他の8作と比べると若干ドキドキ度は少なかったように思えます。それでも、先の読めないストーリー展開は魅力です。 読んでない人は幸せと思える好シリーズ。1作1作が独立するシリーズですが、1作目の「ボーン・コレクター」から始めるのがマストです。今回は、ちょっと厳しめの★★★☆。

3か月前

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国境

これぞ、娯楽小説。面白かったです。 建設コンサルタントの二宮と暴力団二蝶会幹部の桑原は、詐欺師を追って北朝鮮に飛びます。 北朝鮮の厳しい管理体制、相反しているのか、協力しているのか分からない2人、一気読みでした。特に平壌の奇怪な風景、北朝鮮と中国の国境の様子はリアリティがあります。 ゴテゴテの関西弁のセリフもいいです。 「わしみたいなやつはおらんのか 、この国に 」 「ヤクザですか 」 「ばかたれ 。任俠をもって道を極める正義の志士や 」 読め、読め、読めの★★★★★。ただし、第1作の「疫病神」から、お読みください。

4か月前

永い言い訳

バス事故で、妻を失った人気小説家。「自己愛の度合いは激しいのに 、健全な範囲での自信に欠けていて 、厭世観が強」い人物であり、事故の発生時は別の女性とセックスをし、葬式のときも全く泣けなかった。そして事故現場で発見された妻の携帯には夫宛ての未送信のメッセージが… 一方、妻の友人も一緒に事故に巻き込まれる。長距離トラック運転手の夫は妻のいなくなった家庭の再構築に必死になるが、空回りしか出来ない。 通読して受けた印象は、この小説のテーマは「再生」。ただ、妻が死んでも泣けなかった男が何に対して「再生」するのか?いや、再生が必要なのか?最後の1行に至るまで、小説家とトラック運転手の長男、長女との交流、2人の男の対比を中心に様々なプロットを提供し、謎解きをしてくれる。気づいたら、殆ど一気読みだった。 作者の西川美和さんは映画作家。この人の本は初めてだが、描写が映像的で心地よい。死を扱ったテーマだが、くすぐりも多く、暗い本ではない。 例えば、開成に行った先輩を羨む長男への小説家の言葉 「何かを選べば 、何かを失うんだ 。開成に女がいるか ?君は女子の胸がデカくなって行く過程を観察するチャンスを生涯失う 。昨日まで真っ平らだったワイシャツの背中に 、ある日突然一筋のブラジャ ーの線が出現する 、その日の感動を知らずに大人になる」。 なるほどと素直に思った。 死は絶対にやって来る。妻を失ったとき、自分はどうなるのだろう、どうするんだろう。考えさせられる本。読んで良かったの★★★★。

4か月前

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おかしな男 渥美清

子供の頃は、近所のおばさんに映画館で任侠映画ばかり見せられていた。したがい昭和48年の正月、中一の時に立川で見た「男はつらいよ 寅次郎夢枕」(第10作)と同時上映のドリフターズの映画は良く覚えている。映画館は大爆笑の渦。今、思えば大したギャグではない。「おい、さくら、そこのミドリ取ってくれ」。これだけでも場内大爆笑である。日本人が車寅次郎に洗脳されていたのかもしれない。 で、本書は渥美清という人間を描いたノンフィクションの傑作。作家の小林信彦さんは20代の頃から渥美清と親交があった。「夢で会いましょい」の頃だ。初めて渥美清が小林さんに挨拶した言葉が「金が欲しいねぇ」。そして「アベベは純情な青年なんだねぇ」「戦争は起こるかねぇ」と続く。このつかみの良さからハマってしまい、ほぼ一気読みだった。 「彼は複雑な人物で、さまざまな矛盾を抱え込んでいた。無邪気さと計算高さ。強烈な上昇志向と自信。人間に対して幻想を持たない諦めと、にもかかわらず、人生にある種の夢を持つこと。肉体への暗い不安と猜疑心。非情なまでの現実主義。極端な秘密主義と、誰かに本音を熱く語りたい気持ち。ストイシズム、独特の繊細さ、神経質さをも含めて、この本の中には、ぼくが記憶する彼のほぼ全てを書いたつもりだ」。車寅次郎とは全く違う渥美清が450ページの厚めの文庫本に描かれる。 本書で「男はつらいよ」が登場するのは、後半以降。前半はテレビ創成期の頃の作家と渥美清との交流、当時の俳優やコメディアンと渥美清の関係が中心に描かれる。小林さん自身が「記憶力には自信がある」と書かれている通り、その描写には真実味がある。伴淳三郎、植木等、フランキー堺、ハナ肇、などなど、昭和のコメディアンが続々と登場する。 中盤に「男はつらいよ」の詳細な評論があるが、これも楽しい。ただ、渥美清が45作目以降、病魔におかされながら寅さんを演じる様子は痛々しい。個人的には初期の方が好きだ。 個人的ベスト3は「第1作」、長山藍子がマドンナの「望郷篇」、榊原るみの「奮闘篇」。渥美清ファンは必読の★★★★★。

4か月前

嘘つきアーニャの真っ赤な真実

面白い。夢中になって読んだ。ロシア語通訳者の米原万里は1959年から64年まで、日本共産党代表の父に同行して、チェコ・プラハのソビエト連邦学校に編入。このエッセーは3人のクラスメートと過ごした経験、そしておよそ30年後に果たした彼女らとの再会を主題にしている。 背景となる時代、59年から91年は、プラハの春、冷戦の終結、ソ連の崩壊、ユーゴスラヴィア紛争と激動の時代であり、この時代の中で、少女たちがいかに大人の少女になっていったかが生き生きと描かれている。 登場する少女はギリシャからの亡命者の娘、ルーマニアの支配階級の娘、バルチザンの元英雄の娘の3人。舞台となるのが、社会主義国家の学校という特殊事情から、少女なりに自分たちの思想、考え方を持つことになるが、一方ではそれぞれが何らかの矛盾を感じ、混乱している。したがい、彼女らの言動は時折奇異なものに映る。例えば、ルーマニアの支配階級の娘であるアーニャは宮殿のような住居を与えられているが、自らを共産主義の闘争者と呼ぶ。筆者は、それを決してこきおろしたりはせず、彼女との対話を通して、何故彼女がそういう思想、矛盾を抱くように至ったのかを、わかりやすく描写してくれている。これは筆者の知識、筆力によるところが大きい。 中東欧に少しでも関心のある人は、必読の★5。いや、娯楽性の高いエッセーであり、すべての人にお勧めと思う。

4か月前

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エージェント6〈下〉

ソ連国家保安局の捜査官、レオ・デミドフを主人公とした3部作の完結編。1作目の「チャイルド44」の時代背景はスターリン体制の末期、次の「グラーグ57」はフルシチョフによるスターリン批判、そして今回はキューバ危機からアフガニスタン侵攻における米ソ対立を背景にしています。 幼児連続殺人、収容所脱出、そして完結編では、ニューヨークで起きた殺人事件を扱っていますが、本シリーズの重要なテーマは、個人の存在が全く無視される共産主義制度の中で、如何に家族を守って行くかです。 前作と同様、非常に濃密かつ重いミステリー。スパイ小説、冒険小説として娯楽性の高い小説であり、殆ど一気読みでした。 お勧めのシリーズ。もちろん、「チャイルド44」から読むのがマストです。読め、読め、読めの★★★★★。

4か月前

みかづき

昭和36年、用務員だった大島吾郎は塾の共同経営を赤坂千明から誘われます。本書は、夫婦となった吾郎と千明のおよそ半世紀の悪戦苦闘を描く家族三代の大河小説です。 この小説の第1の読みどころは、半世紀の中でめまぐるしく変わる文部省の教育政策に学習塾がどう対応してゆくかです。詰め込み教育への批判、ゆとり教育への転換、その方向修正の中で学習塾=家族は翻弄されてゆきます。 私事ですが、学生の頃、小さな学習塾でアルバイトをしていました。お父さんが塾長、お母さんが経理部長。朝は自分の子どもを学校に送り出し、昼は教室のメンテ、雑務、家事、夜は4時から9時近くまで授業、授業の後は父母からのクレーム処理、休日は補習授業や学力テストなどなど。一般の家庭とはかなり違う学習塾経営には、小説の題材になるようなネタはたくさんあるように思います。 本書も、夫婦間の葛藤、多忙ゆえの親子のすれ違いなど、学習塾を経営するために発生する問題を淡々と描写します。これが、第2の読みどころです。 個人的に気に入ったのは最終章。教育格差をめぐる青春小説といった印象です。最後の1ページは、ベタかもしれないけど、目頭が熱くなりました。吾郎と千明の人生が濃縮された秀逸なラストシーンと思います。 本書はハードカバーで472ページ。扱いにくい重さです。それでも読了後は登場人物と別れるのが辛くなりました。お勧めの★★★★。

4か月前

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刺青の殺人者

アンドレアス・グルーバー著「夏を殺す少女」の続編。主人公は妻を病気で亡くした喘息持ちのライプツィヒの刑事ヴェルターとウィーンの辣腕女弁護士エヴァリーン。「夏を殺す少女」は中央線で降車駅を忘れるほど、夢中になって読みました。今回もサスペンス溢れる一級のエンターテイメントに仕上がっています。 全身の骨が折られ 、血を抜かれた若い女性の遺体が 、ライプツィヒの貯水池で見つかります。遺体を確認した母親は単独で娘が殺された理由と 、姉と一緒に家出したまま行方不明のもうひとりの娘の行方を追うために強引な行動に出ます。ヴァルターは 、ミカエラの暴走に手を焼きつつも、彼女に亡き妻の面影を見いだしてしまい、結局は協力します。そして、ベルリン、ライプツィヒ、パッサウ、プラハ、ウィーンと国境線を越えながら、2人がだんだんと犯人の輪郭に近づいて行きます。この過程は、読み応えがあります。 本作は2015年にウィーンで発表され、賞を取るなどドイツ語圏で大絶賛されたそうです。ただ、個人的には、前作の「夏を殺す少女」の方が面白いと思いました。原題は前作が「復讐の夏」、本作は「復讐の秋」。「復讐の冬」に期待して★★★★。 蛇足です。表紙にドイツ語の原題が出ていますが、"Racheherbest"と「秋」の綴りが間違っています。出来れば、訂正して頂けたらと思います(なお、酒寄進一さんの翻訳は素晴らしいです)。

2か月前

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いま見てはいけない

著者の名前は知らなくても、ヒチコック監督の「鳥」「レベッカ」は誰でも知っていると思います。 本書はデュ・モーリアの不思議な味のミステリー短編集。5作品からなり、どの作品も30分から40分ほどで読めますが、どれも奇妙な読後感を味わいました。特に各編の題名を考えながら読むと、「なるほど」とストンと来ます。 一番のお気に入りは、表題作の「いま見てはいけない」。この作品は「赤い影」という題名で映画化されています。 中年夫婦がベネチアを旅行中、幼くして亡くなった娘の姿が見えるという双子の老姉妹に会います。そこから夫婦の間に微妙な葛藤が生まれます。ミステリーなので詳細は書けませんが、読んでて鳥肌が立ちました。 「赤い影」はYouTubeで全編見ることが出来ます。妻役が私の好きなジュリー・クリスティ(ドクトルジバゴ)。こちらも不思議な感覚の映画でした。 5編の舞台は、ベネチア、ダブリンから離れた田舎、ギリシャの島、イギリスの片田舎、エルサレム。各地の描写が映画的で、楽しめます。 「いま見てはいけない」は文句なしの★★★★★。他の4編は★3つから4つというところでしょうか。短編集をお探しの方におすすめです。

3か月前

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殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件

盛岡の書店で文字だらけのカバーに隠された500ページ程の文庫本が平積みされ話題になった。 「申し訳ありません。僕はこの本をどう勧めたらいいか分かりませんでした。どうやったら『面白い』『魅力的だ』と思ってもらえるのか、思いつきませんでした。だからこうして、タイトルを隠して売ることに決めました」 そして、12月21日付の日経朝刊広告で文庫Xは「殺人犯はここにいる」ということを知った(本当は、それ以前に告知があったのかもしれないが、個人的に知ったのは、この広告で)。Kindleでも売られているので早速購入。一気読みしてしまった。 著者の清水潔さんは日本テレビ記者で元focusのカメラマン。群馬県と栃木県県境で起きた連続幼女誘拐殺人事件を取材するうちに、すでに無期懲役が確定している「足利事件」に疑問を抱き始める。その疑惑をだんだんと濃くしてゆく取材過程は非常にスリリング。 ノンフィクション故のリアリティがあり、ミステリー小説より断然面白い。 しかし、本書で戦慄を覚えたのは冤罪の怖さだ。 「足利事件」はDNA型再検査が初めて行われた事件。再検査の結果、管家さんは釈放される。そして、清水さんは自ら特定した真犯人と思しき人物にインタビューを行い、その結果、確信を強くしている。なぜ、警察は真犯人を追わないのか?本書は、真犯人を捕まえると警察のとんでもない不祥事が明らかになる可能性を指摘する。そして、DNA型鑑定が有力な1証拠となりすでに死刑が執行されてしまった「飯塚事件」の足利事件との関係を読んでいたら、背筋が寒くなった。 「ピューリッツァー賞に選ばれてもおかしくはない」というのは褒めすぎと思うが、読み始めるとやめられない本。読んで損はない★★★★。

4か月前

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僕らが毎日やっている最強の読み方―新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける77の極意

池上彰さんと佐藤優さんの「読み方」についての対談集。 実は、このおふたりの本は読んだことがない。ほとんどの著書の表紙あるいは帯に、ご尊顔が印刷されている。何となく買うのが恥ずかしい。 本書は、ふたりの「読み方」を知りたくて、Kindleで購入した。 ただ、真似は簡単には出来そうもない。 「大量の読書を続け 、あらゆる享楽から距離を置き 、現実の問題の背景に横たわる本質を追求する 。そんな生活をしていて 、どこが面白いのか 。その疑問は 、結局私に返ってきます 。私も同じような生活をしているからです」(池上さんによる佐藤さんの紹介) しかし、本書は「読み方」について有益なヒントも与えてくれる。 面白いと思ったのは、 -基礎知識を得るにはやっぱり「教科書・学習参考書」。受験アプリは月980円。 -地方紙には通信社の記事が網羅してある。全国紙は意外に通信社の記事が載っていない。 -新聞記事は、読むか読まないか迷ったら読まない方が良い。 -ネットサ ーフィンのよくない点は 、時間の浪費に加えて 、そこで見た情報がほとんど記憶に残らないこと。 -画面をワンクリックで 「エバ ーノ ート 」に入れられる機能はあえて使わずに 、該当部分をコピ ーして 「エバ ーノ ート 」にペ ーストするやり方だとコピ ーする過程で 、きちんと記事を読むし、そのひと手間で記憶に残る -小学 6年生の「公民 」の分野の内容をきちんと理解していれば 、政治のニュ ースの大半を理解できる。 おふたりの見解は親切にまとめられてあるので、それだけ読めば十分かもしれない。まずは立ち読みしてくださいに★★★。 なお、「酒」に関するおふたりの見解は、 (池上さん) 私も 、よく 「どうしてそんなに本が読めるんですか ? 」と聞かれますが 、 「下戸で酒が飲めないからです 」と答えると 、大半の人は納得してくれます 。 (佐藤さん) 極論をいえば 、 「酒を飲むのは人生の無駄だ 」と私は思っています。 私は、酒を飲みながら本を読むのが大好き。ちょっと見解が違う。

4か月前

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あかんやつら 東映京都撮影所血風録

思えば、私の情操教育は東映の時代劇と任侠モノが中心だった。 生まれた青梅市には大映の二番館があり、そこでは大映の他に東映映画を上映していた。商店街のおばちゃんに連れられ、毎週のように藤純子や高倉健の映画を見せられていた。家では親父が大の時代劇ファン。NET(東映系。現在のテレビ朝日)では毎週火曜日に古い東映時代劇が放映され、派手な衣装を着た片岡千恵蔵や市川歌右衛門が気持ち良さそうにチャンバラをしていた。以上は70年代前半の話。 そして、高校になると「拝島映画」という場末感いっぱいの映画館の虜になってしまった。75年ごろの入場料は800円。3本立てで番組は東映の任侠映画、日活ロマンポルノそして洋ピン。もちろん18禁の映画館だが、生徒手帳を見せれば学割がきいた。「山口組三代目」「三代目襲名」はそこで見た。ついでに八城夏子や泉ジュンを知ったのもそこだ(この2人はにっかつ)。 前置きが長くなったが、本書は京都太秦にある東映撮影所の70年史。めちゃくちゃ面白い。題名の通り登場するのは「あかんやつら」ばかりだ。 黒澤明の「用心棒」を見た後、片岡千恵蔵や市川歌右衛門が主演した東映の時代劇を見ると、東映映画の作り方が良く分かる。リアリティのカケラもない。 「物語のベ ースは痛快 ・明朗 ・スピ ーディや ! 」。 鬼と呼ばれ、後に東映社長になる岡田茂の言葉が全てを表している。 著者の春日太一さんは時代劇・映画史研究家。77年生まれなのでリアルタイムでは東映時代劇は見ていない。しかし、多くの関係者から長時間のインタビューをしたことが、読み取れる。 「東映京都で量産された時代劇は 、ほとんどが通俗的なものばかりだった 」「が 、貧しい中を必死の思いで潜り抜けてきた男たちには 、そんなことは全く気にならなかった 。どんなことをしてでも映画を当てなければ 、彼らは全てを失う状況にあり 、そこから必死の想いで這い上がってきた 。通俗的で何が悪い 。むしろ 、それこそが彼らにとっての大義であり 、正義でもある 」。 1950年代東映時代劇の最盛期には80本以上の映画が作られ、スタッフの残業時間は月300時間を越えたという。 しかし、大量生産による品質の低下により客は離れていき、作品の中心は任侠モノに移って行く。 70年代前半まで邦画は殆ど2本立てだった。任侠モノの同時上映をどうするか?岡田茂の考え方が面白い。 「不良性感度の強い任俠映画に善良な映画を併映させても 、観客は戸惑うだろう 。それならば 、他に成人男性の喜びそうな不良性のある映画を併せれば 、さらに客足はのびる 。 それは何か ─ ─エロだ 」。 さすがにリアルタイムで東映のエロ映画は見たことがないが、題名が凄い。 「徳川女刑罰史」「恐怖奇形人間」「温泉みみず芸者」「徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑」などなど。 書いて行くとキリがないが、映画作りに携わる昭和の人々の凄さを味わえるノンフィクションの傑作。★★★★★

4か月前

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大国の掟 「歴史×地理」で解きほぐす

amazonで世界史を検索すると、たくさんの関連本が引っかかる。驚くのは、多くが最近の著作であることだ。 中国の拡大戦略、英国のEU離脱、ギリシャ問題、ISによるテロ事件は世界史的背景が分からなければ理解できない。 「本書の目的は 、現下の国際情勢を正確に把握する力を身につけることで」あり、「重要なのは 、表面的な情勢がどう動いたとしても変動しない 『本質 』を把握すること 。言い換えれば 、アメリカをはじめとする 『大国を動かす掟 』について理解を深めること」と著者の佐藤優さんは断言する。 本書の良い点は、「本質」を米国、ロシア、ドイツ、中国、サウジアラビア、イラン等の大国に絞っているところ。これにより、論理展開が容易になった。 乱暴に言ってしまえば、 1)現在は新・自由主義と新・帝国主義が同時進行している時代であること 2)米国の本質的な政策は歴史的に孤立主義であること 3)海洋国家と大陸国家の違いを考えれば地政学の理解が容易であること 4)ロシアは国境を線ではなく面で考え、緩衝国家の存在を重要と考えていること 5)アラブの春により、民主化は遠のいてしまった。これは、中東には人権ではなく神権の存在が背景にあること 6)欧州の南北問題は宗教が分からないと理解できないこと そして本書の圧巻はタジキスタンとキルギスに「第2のIS」が誕生する恐れがあり、それが中国の南洋進出政策を消極的にしているという分析である。南北戦争のおかげで明治維新が成し遂げられたという理屈に通ずるものがある。 読んで損はない★★★★。佐藤優さんのご尊顔が気になるが、写っているのは帯だけなので外せば良い。

4か月前

おそろし

連作怪談小説集である三島屋変調百物語事始の第1作。 ある事件を境に心を閉ざしてしまったおちかという17歳の少女。叔父の言いつけで、彼女はお客の怪奇な体験談の聞き役となります。 本書は連作小説集で、おちかの聞く話は独立しています。しかし、それぞれの話が絡み合い、大団円を迎えます。この辺りのうまさは流石宮部みゆきさんです。 また、江戸の人びとの人情描写も印象的。何を書いてもネタバレになりそうなので、詳しくは書けませんが、ゾクゾクとして、ほんわかもできるというお得な小説。★★★★

4か月前

項羽と劉邦〈下〉

久しぶりに司馬遼太郎の本が読みたくなりました。30年ぶりの再読ですが、面白く読めました。 本書は紀元前2世紀の秦末から、秦の滅亡、楚漢戦争、項羽の死までを描きます。物語の面白さもさることながら、司馬は英雄とは何か?中国人とは何か?について個人的な意見も書いていて、単なる娯楽歴史小説にはなっていません。 司馬は「食が英雄を成立させた」と断言します。そして「不幸にも食わせる能力をうしなうとき 、英雄もただの人になった 。この点 、ひとびとは容赦がなかった 。かつぎあげた男を地にたたき墜とした」。 「項羽は 、劉邦より馬鹿であるという証拠はひとつもない 。ただ一点 、(名門の出である)項羽のおかしさは 、めしというものは侍童が持ってくるものだと思いこんでいたことであった」。これに対し田舎出の無頼漢の劉邦は常に兵を飢えさせないことに神経を使っていました。 また、司馬は項羽を始め登場人物の多くが儒教の思想である「義」によって合理的な行動を自ら抑えてしまっていることを指摘します。 これについての解説は興味深いです。 「義という文字は 、解字からいえば羊と我を複合させて作られたとされる 。羊はヒツジから転じて美しいという意味をもつ 。羊 ・我は 、 「我を美しくする 」ということであろう 。古義では 「人が美しく舞う姿 」をさしたともいわれるが 、要するに人情という我を殺して倫理的な美を遂げる ─ ─命がけのかっこうよさ ─ ─ということを言い 、この秦末の乱世では 、庶民のはしばしまでこの言葉を口にした 」。 中国を知る上で本書は必読。それよりも秦末の宦官趙高の腹黒さ、鴻門の会の緊迫感、背水の陣の見事さ、四面楚歌での虞美人の哀しさなどなど、多くの見せ場が司馬遼太郎の独特の文体で語られます。お勧めの★★★★★。

4か月前

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フリッカー、あるいは映画の魔〈下〉

読みたかったけど、長い間品切れ。一時帰国のとき、ブックオフで偶然見つけました。 1998年の「このミス」ベストワンであること以外は全く知らずに読書開始。すぐに、ぶったまげました。 まずは、つかみの悪さ。決して好ましい性格とは言えない登場人物の紹介が延々と続きます。本書は細かい文字で上下巻1000ページを越える大長編。しかも、セリフの中には映画の薀蓄、余計とも言える修辞的表現が続き、結構手強いです。さらには、ストーリーがなかなか進みません。 1時間で投げ出してもおかしくない本ですが、完読して、しかも満足度は★★★★★でした。 1960年代初頭、うらぶれた名画座で主人公はマックス・キャッスルの映画に出会います。キャッスルはB級ホラーの下らない映画がわずかに知られているだけの監督。しかし、彼の作品を見て、主人公はその映画に隠された魔に魅入られてしまいます。 本書は後々UCLA映画学科の教授になる主人公がキャッスルの謎に迫る姿を描きます。 圧倒的なディテールと、オーソン・ウェルズやジョン・ヒューストンなどの実在の人物を登場で、ノンフィクションではないかと錯覚を覚えてしまう上巻。テンペル騎士団やカタリ派が絡み、想像を絶する荒唐無稽なストーリー展開となる下巻。最初の数時間を我慢すれば、読書の楽しさが十分味わえるミステリーです。 ただし、やはり、ある程度の映画ファンでなければ本書はきつい思います。「ローズバッド」という言葉は知っているけど、「二十四時間の情事」は未見という映画ファン(すなわち私)であれば、十分楽しめます。「薔薇の名前」が楽しめた人は必読です。

4か月前