40dd21d7 0618 4b4b 9f23 41dec83de311

Susumu Hikita

コーヒーと公園

コーヒーと公園

8

コメントした本

鷲は舞い降りた

文句なしに面白い!とはこの小説のことだろう。 第二次世界大戦中のドイツ軍落下傘部隊による英国本土でのチャーチル誘拐、という暴挙とも言える作戦に、 作戦を指揮するドイツ軍将校も落下傘部隊の歴戦の勇士も諦観の域で死に場所を求めるかのように、士気高く遂行していく。 抗いきれない立場であろうとも、自分の意思に信念を持って行動することこそが人間の最も優れた価値であることを極上に面白い娯楽小説の形で明朗に伝える。 なんといっても魅力あふれる登場人物の面々。男も女も皆とにかくヒロイックで、自分の思っていることを闊達にシニカルに語る。そして例え獄中であっても決して信念を曲げない。 また航空機、船艇、小火器などの武装から服装や酒、タバコの銘柄までディテールにこだわることでリアリティを演出することに一役買っているが、描写がくどくどしくないのでスピード感に影響させない(もはや馴染みのない機種名や銘柄が登場しても、Google画像検索が楽しみを後押ししてくれる)。 なかでもカバーアートにも描かれているダグラスDC-3がなんといっても印象的。 夢中で読んで「あ!面白かった!」と声に出るほど感嘆した。

5か月前

Bdda8cb0 e275 4b1a 8897 f91ed8e5e311B989a57d 3ed1 457b b76a 3f1cc1b8f466Icon user placeholderE4a13cfe a893 43e5 8d4d f62132e54b736bcc80d6 103b 4757 8705 6b5c52e76b7b
幽霊たち

モンドリアンの絵画を想起した。 一見単純な色彩と面構成によるあれだ。 矩形の一つ一つに人格があるようで、黒い線は街のようで。 「私は何者か」というテーマは『ガラスの街』と一貫しているようだが、同じテーマを裏側から書いたようなとでもいえばいいだろうか。 自分を観察するものがいて初めて自分を認識する。 そのような感覚はSNSなどによって慰めを得ようとする今の私たちにこそ思い当たる感覚ではないだろうか。

6か月前

Ec9d141a dc97 41df 812e 9427c9e8c25f7d9f429e 1f0b 4fe6 b81b b70a0cfa60bf4fce670e 6049 4aa0 8bcb 05ec248d276fAf8dc809 5756 4903 94f5 c4e7debcec398c71de8e 6cf1 4c8b ad8a 0ca7701321075dea9ea7 3b46 460b b509 8ca9f558f7d238e6da79 d16f 446c 84d6 13b9464b1823 35
忘れられた巨人

忘却の霧が愛の本質を温めあえるのだとわかっていても、人間は残酷な記憶の真実を求めようとする。 物語はファンタジーというメタファーではない。 時代が求めればアーサー王は英雄だが、虐げられた者にとっては残虐な敗北者に過ぎない。 そのような背景をひた歩く老父婦の姿はあたかもジャコメッティの彫刻のように。

6か月前

18943e7e d96b 475d b5a0 61f8c42443a811afb8da 1bf6 4272 bc30 39ed2c854032Icon user placeholderF88eefad 0ce8 432b a8ab f28f102a9a5cEe751934 df40 4fe9 af13 98e2e9c1113f2f8adfe8 5ccc 42cd af96 db7c71bb3d45Ad7825af 31c7 446b af9e 8f3c399104ac 23
高い城の男

ドイツと日本が勝利した第二次世界大戦後のアメリカは、陰と陽の一面を返したようで、権力者の影が影絵のように揺らめく様相は、現実においてのアメリカ合衆国が落とす影と一対になっているかのよう。 この世界であっても日本は渦の中心にあって中庸の立場をとらざるをえなくなるというのはいかにも皮肉だ。 そのような世界での官僚、反骨心をくすぶらせる職人、素性を隠すユダヤ人青年などに引き起こされた出来事に対しても、生き抜くための手段を講じる日常にすぎず、世界の大局に影響する力も持たない。 作中作として登場する小説はアメリカが戦勝国となった世界を描いており、またディック自身が傾倒していた「易経」がこの背中合わせの世界を立体的に描写する役割を担っている。 今の世の中も物事の一面に過ぎないということを薄暮の雲のような淡彩の向こう側に描いたような独特の世界観を感じた。

5か月前

5cc7980a 4cef 4104 80ca 8c4ee643fcc2Icon user placeholderA83fb2de a6ab 4fc5 97bc 9a56d5d846a19b92c5df 953f 473f be92 1f218474893dIcon user placeholderIcon user placeholderF3b5f76b 9a8d 4ccc b31c 6a221f502f10 27
ガラスの街

豊かな音楽的な言葉の数々。 人は言葉によって自分が何者であるかを認識するし、ここがどこであるかを定義する。 自分自身の存在があやふやに感じることもあれば、物語のなかの人物が生き生きと存在感を表すこともある。 言葉に、フレーズに、音に、小説に、真摯に素直に向き合った作家と、翻訳家の妙技をただただ芳醇な香りのように、音楽のように味わうことができた。

6か月前

7f2fef6c 38d4 4bdf bd91 9842eaa0e6f0Dd9d9983 7e58 4c31 acd6 08a034476b36Bdda8cb0 e275 4b1a 8897 f91ed8e5e3114fce670e 6049 4aa0 8bcb 05ec248d276f7d9f429e 1f0b 4fe6 b81b b70a0cfa60bfE034a2e8 2cef 4b01 87f7 57c5b80f726014721248 300e 4250 8018 eecc0a8186ed 27