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Ken Gauteau

Editor, University

Editor, University of Tokyo Press

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コメントした本 ページ 2

忘却しない建築

建物は歴史を忘れない…。論説集で、全体のまとまりや探求の深さには「もうちょっと」だし、さらに、これを読んで僕みたいな首都圏に住む人間が「被災遺構は残しましょう」と能天気に主張するのも違うと思うのだけれど、いま自分たちの手をすり抜けつつある時間と、記憶と、それに対して建築だけが持っている力についての、とても重要なエッセイだと思いました。中国の震災遺構保存の例や、WTCのメモリアルに見る「保存しようという政治」の問題の危うさに著者は気づきつつも、3・11については、個々の被災者の気持ちともまた別に「保存しないようにする政治」がいま発動されつつある。それは原発再稼働も含んだ、復興という名の大きな忘却の時流と、期せずして一緒になっている。著者は、建築が、建造者や保存者の意図とも別に「歴史を忘れない」働きに賭け、なるべく多くの人に当事者になってもらい、震災遺構の意味ある保存とその形を考えようと誘う。「今でも遅くない、見にきてほしい」と呼びかける。それがたとえもう嵩上げされた更地であっても。正直怖くて、自分とゆかりある被災地すら、僕は行けていない。もう、腰を上げようか。

約4年前

王とサーカス

一度解けた謎が、振り返ると面白くなくなっている、というのは正しい。むしろ、この小説が言っているのは、私たちの人生に稀に訪れる謎解きは、一度解けてしまえば、最初の高揚はあっけなく去り、砂を噛むような風景が広がり、ただ巻き込まれるしかなかった無力感ばかりが襲うような、そんなものだと。けれども、この小説の主人公 太刀洗は考え続ける。ある区切られた範囲でしか生きられない自分と世界の関係を。拒否と非難を、自分に正面から告げてくれたひとの「親切」に感謝しながら。ああ、いい小説だった、もう一度読もう。

約4年前

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田紳有楽・空気頭

アフォーダンスの佐々木正人先生の書評で教わった本、ぐい呑と茶碗が語り合う「リアリズム小説」!? 以来、藤枝小説、愛読してます。次は「異床同夢」が文庫になるといいな。

4年前

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東京の昔

「本郷信楽町」という架空の町に住む主人公と、ご近所さん、学友たち。中島京子の『小さなお家』が女性の見た戦前東京郊外だとすれば、ここには、まだ何かを探している、大人になりきれない男の戦前の東京旧市街がある。

4年前

ダウン症の歴史

自身もダウン症の妹を持つ家族として、常に共感と暖かさのある、知的発見に溢れる書。「蒙古症」といういまでは不適切な命名の、当時なりに真剣な探求も意外。

4年前

紙の動物園

奇怪で懐かしい架空の未来。日本人の皮膚感覚のとても近い所にくるディテール。どれも味わいある短編集だが、海底トンネルの話は、日本とアジアの近代史の地層を描きつつ、びっくりするような視座の転換が、読む人を「自国史」の外に連れていってくれる。そこを生きるしかなかった人間の悲しみと、その肯定とともに。

4年前

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S,M,L,XL+: 現代都市をめぐるエッセイ

原著を当日必死で読んだ時には日本のAVのモザイク処理の事がこんなに書かれているとは思わなかった(笑)。読めてなかったんだな。

4年前

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原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年

「原爆供養塔」とは、テレビによく映る丹下健三の「慰霊碑」の方ではなくて、公園内に今は塔も失った土饅頭のほう。慰霊碑が名簿を納めるのに対して、この土饅頭には多数の遺骨が眠る。恥ずかしながら知らなかったし、またコツコツと遺族を見つけ、遺骨を帰し続けた女性の人生があったなんて、ますます知らなかった。

4年前

辰野金吾

従来の人物像が緻密な接近で覆る良質の伝記ノンフィクションの楽しみと建築史学が合体した魅力。実はアムステルダム駅とは似ていない復原なった東京駅に思う: 辰野は西洋建築の輸入業者ではなくて、真に「日本最初世代の近代建築家」だったのだ!と。

4年前

巨匠とマルガリータ (上) (群像社ライブラリー (8))

いくつか別翻訳があり、どれもいいですが、最初にこのすごい小説に出会わせてくれたこの翻訳が忘れられない。YouTubeにロシアで公開されたテレビドラマは、1930年代の実写も巧みに取り入れた佳作。英語字幕あり。

4年前

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記憶よ、語れ――自伝再訪

出た!若島訳のSpeak, Memory! ナボコフ生前の構想だったという「偽書評」の章も入ってます。

約4年前

改訳 アウステルリッツ

文中に掲載されている印象的な写真は、すべて虚実入り乱れ、そこに直接話法・間接話法が入り乱れた、誰かの記憶と事実が混在する原文を巧みに訳したテクストとが相俟って、他と全く違う小説体験ができる、いや、追い込まれる。

4年前

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ディテール別冊 近代建築を使い続けるためのデザイン 2014年 08月号

東京駅丸の内駅舎の復原工事、昔に戻ったのかと思いきや、一部の壁はセットバックしている(中央線の高架が地震で揺れた時レンガ壁を破壊しないように)、など類書にない情報も満載。一方、戦争直後の復旧工事で使われた当時の最新技術(プレキャストコンクリート)、軍用機用と言われているジュラルミンのドーム(この事自体は有名だが、ジュラルミンの曲げ加工が困難なのをどうしたかと言うと…)、そして3階建てを2階に直した際、オーダーの曲率がちゃんと補正してあった(つまり、ギリシャ、ローマ式の柱の「エンタシス」まわりをちゃんとバランス取った)、など、昭和20年代の応急工事に当たった人々の、モノも何も無い中での誠実、工夫、努力も、この本のテーマの一つと思った。

4年前

マイナス・ゼロ

昭和初期の銀座の街角は、自動車よりもゲタの音が大きい!戦前の生活空間への愛惜と、凝ったタイムマシン・パラドックスの融合。

4年前

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李光洙――韓国近代文学の祖と「親日」の烙印

「民族の裏切り者」はどんな植民地空間を生きたか。理想、希望、現実、挫折、弱さ。いま韓国で流通している脱色された義士たち、銅像になった「ハルモニ」よりも、この本の李光洙は、私の一番近くで、一番厳しい眼を私に向けている気がした。彼を長年追ってきた気鋭の研究者による新書。

4年前

長いお別れ

認知症のお父さんを内側から書くのは、最初の章の最後の数行、幼かった頃の娘の感触のぼんやりした記憶…、その娘達の枕元のおしゃべりに送られて、お父さんが旅立つまでの数年。介護は大変、介護は辛い、でもそれも込みの人生の肯定。

4年前

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百年の旅人たち

「どれ、「砂漠谷」に向かうかな」……、戦後在日の生活史を考えるとき、必ず思い浮かぶこの本のラストシーンです。

4年前

ドイツで100年続くもの (私のとっておき)

美味しそうなお菓子! かわいいブラシ!に、2度の戦争と分断と、それを生きた人のストーリーが浮かぶ佳品。

4年前

冥途・旅順入城式

「泣くなよ」。映画のスクリーンに映る兵士の行進に、いつの間にか自分が加わっている不思議、よく読み直すとそんなこと全く書いていない不思議。

4年前

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沖縄彫刻都市

すっかり数が減ったらしい沖縄のコンクリートブロック建築。その造形に打たれる事もさることながら、沖縄の現代建築史の概観としても大変な本。著者の建築家らしいディテールや施工への着目も素晴らしい! 写真多数。

4年前