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Toru Omae

欧米ミステリを中心に読んでいます

欧米ミステリを中心に読んでいます。 自分のは書評とかレビューみたいな大それたもんではなくて「これ面白かったから読んでみて!」レベルの感想文ですが…よろしくお願いします。

990

コメントした本

悪しき狼

邦訳が出ると必ず読むシリーズの一つであるドイツの警察ミステリ。 貴族階級出身の刑事とその相棒の女性警官が主人公という設定だけ見るとスタイリッシュな作風かと思われるのだがナチスや環境問題などのテーマに挑んでおり毎作けっこう重厚な内容になっているところが特徴。 凄まじい虐待を受けた跡のある少女の死体を巡る捜査と、以前はドイツでも有数の刑事弁護士で羽振りの良かった男の落ちぶれた生活、扇情的な報道番組で敵の多い美貌のジャーナリストが暴行された事件、の大雑把に三つの話が並行して進み…やがてそれが収斂して、という形式。主人公達や各々のストーリーの登場人物の人間模様も丹念に描きながら醜く凶悪な事件の真相が暴かれる結末に見事にまとめ上げている。ディーバーばりのどんでん返しも盛り込みつつのそれはかなりの芸当だなと感心しました。素晴らしかった。 作品と関係無いのだが…旦那さんがソーセージ職人で旦那の店の片隅に自主出版で置いていた小説が評判になってデビューした、というこの作家のエピソードがけっこう好きだ。

4日前

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ポイント・オメガ

アメリカではかなりの大物作家のうちの一人だが日本では全く売れてないこの作者。こう書くと自分はいろいろ読み込んでいるのかと言われるかも知れないがこれで邦訳読むのはたぶん三作目。短編か中編くらいの長さの本作。構成は大きく分けて二つ。ヒッチコックのサイコをゆっくり再生するインスタレーション(MoMAで本当に展示されているらしい)をひたすら見続ける男、もう一つはアメリカのイラク侵攻に関わったのち砂漠に隠遁した学者と彼のドキュメンタリーを撮りに来た男達。後者はそこに学者の娘が現れそしてある日突然忽然と行方不明になってしまう。イラクの大量殺人に関わりそれには罪の意識がないものの自分の娘の失踪には激しく動揺する学者。しかしながらそれとインスタレーションの関連が自分には最後まで分からなかった。学者のストーリーもいまいち説明不足というか…タイトルはイエズス会の神学者の説から取っているらしい、とかとか、一見軽く読めてしまうのだがちゃんと読もうとすると難解かも知れない。そういうところが日本ではウケない理由かも、とか思ったりしました。

11日前

拳銃使いの娘

どの賞がどうとかは言わないけど日本と違って欧米の文学賞にはハズレがない。それはたぶん出版社お手盛りじゃないからだと思うんだが、というわけでこの肩書きを見かけると必ず手に取るアメリカ探偵作家クラブ賞で最優秀新人賞を取った作品。作者は元々テレビの人それもかなりの売れっ子らしくこの作品もそれだからかスピーディーな展開が見事。主人公はどちらかというと物静かなスクールカーストでは下位の地味な女の子。ある日、刑務所から出てきた父親が学校に迎えに来たことからその生活が一変する。刑務所で白人ギャングの首領から妻子共に死刑宣告が出されたことを知り、しかも元妻が既に殺されていたことから娘を守りに来た父親。結局、父親と二人で逃避行をするうちに…という話。語り手をスピーディーに切り換えながら進むストーリーがスリルに富んでいる上に主人公の変化の描写も素晴らしい。作者はレオンや子連れ狼のような子供が出てくるサスペンスが書きたかったそうでそれは素晴らしく成功している。面白かった。

11日前

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解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯

いやはや凄い人がいたもんだ、というのが率直な感想。医学がまだおまじないとどっこいどっこい、むしろ体に悪い~体液のバランスを直すと言って病人の血を抜いたりかん腸したり、悪いところはちょん切っちゃうだけ~の18世紀にあって人体や生物の構造を正しく理解し本当の治療を行うためには何が有効なのか、をひたむきに追求した男の生涯。人体のことを詳しく知るために数限りない解剖を行う。そのために墓泥防と結託して違法に死体を入手したり動物実験で生体解剖を行ったり...と負の側面はもちろんあるのだけどそれらを差し引いても医学の発展に尽くした主人公が今ひとつ世に知られていないのは粗野な物言いが嫌われたり、嫉妬されたために業績を消されたりネガティブ・キャンペーンを張られたりした結果だという。あとは弟子のジェンナーが成し遂げた「天然痘撲滅」みたいな大向こうを唸らせる発見がなかったからかな、とも思う。しかし人間のみならず動物や昆虫も解剖し生物は複雑さの差はあるものの基本的な構造は同じ、ということを発見し進化論の先駆けとなるような思想に行き着いたりアダムとイブは黒人であったに違いない(故に神も黒人だったはず)という人類発祥の学説にまで行き着いたり、と明らかに時代の先端を行き過ぎた感がある。また、妬みと嫉妬で結果として矮小な人間と歴史に名を残した人達の哀れさは...他山の石とすべきかな。非常に面白い作品でした。

17日前

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毒ガス開発の父ハーバー : 愛国心を裏切られた科学者

第一次大戦でドイツ軍が毒ガス攻撃を行ったことはよく知られているがその開発の指揮をとったのがユダヤ人の科学者だったという皮肉に興味を惹かれて手にとってみた。冒頭から日本の函館が舞台となり驚かされたが科学者の叔父は外交官として開国間もない日本に赴任し通り魔的に不平士族に斬られて日本で亡くなっていたのだという。大気からアンモニアを取り出す技術を開発し後にノーベル賞を受賞した科学者の生涯がまさにドイツという国の興亡を象徴していることに驚かされる。元々、宗教に寛容なプロイセンがドイツを統一するとともにユダヤ人たちも国家建設及び経済的に社会進出を果たし、豊かな商人の息子も科学者となる。国家としての統一が遅れたため帝国主義的に出遅れたドイツが科学技術により国力を増大していく中でユダヤ商人の息子も優れた科学者としての能力でのし上がっていく。そして国を挙げての戦争に於いて原爆を開発した人たちと同じ理屈で人道的な兵器としての毒ガス開発に手を染める。祖国の敗戦による混乱、自身の戦犯指定も切り抜けノーベル賞も受賞した科学者だがナチスによって国を追われてしまう。ドイツの興亡と波乱に満ちた科学者の生涯が分かりやすく描かれておりかなり良い作品でした。面白かった。

23日前

東西ベルリン動物園大戦争

これは東西に分割されたドイツの中でさらに特殊な環境にあったベルリンという街だからこその話かもしれない。第二次大戦前から威容を誇ったベルリン動物園もイギリス空軍の爆撃を受け大きな被害を受ける。ナチ党員でゲーリングの友人という園長が赤軍を前に逃亡、当時珍しかった女性の動物学者で一職員が瀕死の夫を抱えながら赤軍に暴行までされてもなんとか残った動物たちを守り抜く。戦後に園長となった彼女は西側に残された動物園を園内でオクトーバフェストを開催して予算を補ったりしながら必死で立て直していく。娯楽の少ない時代、動物園の人気は絶大で一方の東側も「動物園に行く」という名目で西ベルリンに行く国民たちをよく思っていなかったこともあって新たに自領に広大な動物園を作る。タイトルからしてこの東西ベルリンの動物園同士が冷戦の代理戦争をしていたかのような印象なのだけど...直接の争いみたいな話はあまりなく動物園を取り巻く人間たちのエピソード集、といった印象。ドイツ最古の動物園である西側とそれに対抗するために作られた東側、ベルリンのそれぞれの動物園長同士は仲が悪く交流も無かったようなのだけど他の東西ドイツの動物園同士はけっこう交流があったということが意外だった。ベルリンの壁が崩れて動物園同士の競争を世界の変化が追い越していってしまう結末も感慨深い。非常に面白い作品もでした。

約1か月前

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

これはベストセラーになるのも分かる。タイトルでお恥ずかしながらピンときてなかったのですがサピエンスとはホモ・サピエンスのことで我々が他の似たような動物達と違ってどのようにして今のような繁栄に至ったのか、を書いているいわゆる「通史」になるのかな。表現が分かりやすく例えや引用も適切で非常に面白い。農業革命に対する独特な見方とか宗教の役割、ずっと辺境で目立つことのなかった西欧が何故覇権を得るに至ったのか、などなどよくもこれだけ広範囲の知識を分かりやすく説明できるものだと感心しました。作者曰く現代は人類が革命的に発展するかもしれない段階に来ているらしくその将来展望はいかに…ということで次作も思わず買ってしまった(笑) こういう作品って往々にして分かりやすすぎるが故に作者の意見を丸呑みしてしまう危険があると思っていて多少懐疑的な目で読んだつもりなのだけどおかしいところとか破綻してるロジックが見受けられず素晴らしかった。次作を読むのが今から楽しみ。

約1か月前

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ジョー・グールドの秘密

一流雑誌ニューヨーカー随一のライターと言われた作家の作品集第四弾。なんとも残念なことに本作でこの作家の作品は全て読んでしまったことになる。あとがきを読んで驚いたのだが最高傑作とされるタイトル作を発表してから30年と少し、ずっとニューヨーカーのオフィスに通いながらついに一つの記事も発表しなかったのだそうだ。職場に通いながらの隠遁というスタイルを許した会社も凄いけれどそれだけ作者への評価も高かったということだろう。本作も有名人とは程遠い市井の人々の姿を描いた素晴らしい作品ばかり。なんとも物悲しく印象的なタイトル作をはじめ既出の作品と同じテーマをリライトしたものもいくつかあるがそれらを読み比べるのも楽しいだろうな。手許に置いて何度か読み返したい、そんな作品集。素晴らしかった。

約2か月前

あなたを愛してから

もはや巨匠と言ってもいいかもしれない作者の邦訳最新。この作者のすごいところはデビューしてしばらくはシリーズ作を出していたのだけどもここ数年はほぼ毎作品違う舞台設定、異なるテーマで読み応えのある作品を出し続けているところで、本作は珍しく女性が主人公。構成も凝っていて女性が夫を射殺するエピローグ、一生目は女性の生い立ちとジャーナリズムの世界でのし上がる過程、そして自分で自分のキャリアをぶち壊すまで。二章目は彼女の再婚と再生が描かれる。で、この作品はそもそもミステリなのか、という疑問が湧いてきたところで最終章が怒涛のサスペンス、というかなり実験的な作品。ちょっと前半はダレてしまいそうだけど思ってもみない後半の展開が凄い。さすがの作品でした。面白かった。

約2か月前

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病気をしない暮らし

こちらはよく売れた人間がなぜ病気になるのかを説明した本の二匹目の泥鰌として出されたものらしい。タイトルのとおり、病気になりにくくするために日常どういう注意をすればよいか、という作品。前作と異なってこちらは専門用語も少なく非常に分かりやすく自分にもほとんど理解できたと思います。風邪とインフルエンザの違いや、どうして風邪に対する解決策がないのか、またどういう注意をするとよいか、についてが特に良かった。いや、知らなかったな。これは。他にアルコール依存の問題や癌についてなど興味深い内容でした。こういう内容を非常に楽しく読めるというのは意味があるなと思いました。

2か月前

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凶犬の眼

映画化もされて非常に話題になった前作が面白かったので続編のこれも読んでみました。 前作で型破りなマル暴刑事の相棒を務めた結果、山奥の駐在所に左遷された若手警官が主人公。その頃、日本最大の暴力団が分裂抗争しており一方の組織の組長が暗殺される、というまんま山口組と一和会の抗争のような事件があり、主人公がくすぶっている山奥の工事現場にいわくありげな男が流れてきて、という話。もっとも男の正体はすぐに判明してしまうので謎解きというよりもこの状態がどういう展開になりどのような結末になるのか、という興味で読ませるタイプのミステリ。暴力団と警察の一線を超えてしまった結果、無惨な最期を迎えた先輩刑事から主人公は何を学びどう行動するのか…という意味でも登場人物の関係性を押さえる意味でも前作から順に読まれることをお薦めします。少し暴力団を美化し過ぎでは、と思わなくも無いですが作品としては非常に面白かった。

4日前

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鯖

62歳無職、住所不定の作者のデビュー作、しかもこの装丁にこのタイトル、ということでかなりの期待と共に手に立ってみた。 本当にそんなものがあるのかは知らないが紀州には固定した港を持たず全国を渡り歩く一本釣り漁師の一団がいてその末裔というか成れの果ての一団が主人公。海の雑賀衆と言われた漁師弾も今ではトラウマや異常性を抱えた5人だけとなり日本海の無人島の小屋に雑魚寝、その日暮らしでなんとか生きている。彼らの作るヘシコの存在に目をつけたIT長者とそのビジネスパートナーの中国人女性が彼らへの投資とアジア市場への展開を申し出たことから生活が一変し…という話。正直なところ作者の背景とタイトルなどから中上健次のような重厚な作品と思い込んでいたので生臭く現代的な展開は意外だった。どちらかというと桐野夏生的な作風かな。嫌いとかダメとかではなく勝手な期待と違っていたので個人的にはダメだったけどよく出来た作品だとは思います。

11日前

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承久の乱 日本史のターニングポイント

サブタイトルの「日本史のターニングポイント」というコピーに興味を惹かれたので。正直言うとかなり地味な乱という印象で世間知らずの朝廷が源氏の断絶に調子にのって兵を挙げたらあっけなく潰されました、的な記憶しかなかったので何がターニングポイントなのかと。まずは鎌倉幕府とは何か、という定義で元々は東国の武士たちの互助会のようなもので自分たちの権益だけ守れたら良く国全体をどうこうしようという意志はなかった、という説明があり、故に別に頭目は源氏の正統でなくてもよく実力者が務めればよいという構造だったので得体の知れない豪族だった北条氏が権力を握ったのだということが分かる。しかし権力を握るまでの時政、義時親子の日本史でも稀に見る陰険さが凄まじい。そして乱を起こした後鳥羽上皇が経済力でも武力でも当時においては日本一であったということが説明される。つまり時勢の読めていない貴族が起こした乱ではなくじゅうぶんに勝ち目があると踏んだ権力闘争であった、ということで結果として朝廷側が敗北したのはなぜか、その結果はどういうことになったか、という内容です。小説ではなく感情を廃して簡潔にまとめられてるので読み易く非常に面白かったです。

17日前

無敗の王者 評伝ロッキー・マルシアノ

名前だけはなんとなく知っていたヘビー級チャンピオンの生涯をジャーナリストが綿密に調査しまとめ上げた評伝。1947から1955にかけてプロボクサーとして活動する中で49戦無敗という未だ破られていない偉大な記録を持つボクサーは名前で分かる通りイタリア系移民としてマサチューセッツの工業地帯の産まれ。ボクシングをまともに始めたのは兵役に就いていた24の時、ということに驚かされた。180cm、85Kg前後という現在ならクルーザー級で当時としてもあまり恵まれていない体格、しかも足も遅く到底プロボクサーとして大成しないと誰もが思っていた男は凄まじい破壊力を持った右フックと打たれ強さを持っていた。ボクシングというスポーツは本来は相手のパンチを巧くかわし、適度に有効打を入れれば勝てるはずなのだがそれでは人気が出ず、足を止めての殴り合いが好まれる。いかに巧くても人気が出なければ良い対戦が組まれず上位も狙えない。その意味ではまさにこのスポーツにうってつけの素質を持っていたことが分かる。作者はジャーナリストらしくかなり綿密な調査を行なって偉大なチャンピオンの人生とそれを取り巻く人たちを丹念に描いている。ただの礼賛本ではなく暗い側面のこともあからさまににしており迫力があった。チャンピオンと母親の関係など泣かせる要素もふんだんにあって今のところ本年読んだ中では最高の作品だった。非常に面白かった。

23日前

FACTFULNESS10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

ビル・ゲイツが2018年に大学を卒業した学生の希望者全員にこの本を配ったというエピソードを聞いて興味を引かれたので(それにしても同じ成功者でも日本の成金とこうまでお金の使い方が違うものか...。)手にとってみた。筆者はお医者さんで途上国の公衆衛生の改善に貢献してきた経歴の持ち主で、その経験を通じて思い込んでいた「事実」と実態の間には乖離があることに気がつき、データに基づいて正確に世界を把握することの重要性を世界に知らしめることを自分の使命として活動された方。「いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいる?」みたいな設問と三択の回答形式のクイズがいくつかあってほとんどの人が高得点が取れない、それはなぜか、みたいな説明があって事実を踏まえて世界を把握するコツみたいな説明がなされる形式。自身の死期を悟っていたからか自分の失敗も反省もさらけ出していて迫力がある。個人的にビジネス書が苦手でちょっとそれっぽい雰囲気のところは苦手でしたがそれにも増して重要な内容の作品だと感じました。

約1か月前

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ブルーバード、ブルーバード

実は全くの勘違いから手にとった(昔すごく好きだったグレッグ・ルッカという作家の久々の新作だと思っていた...。なぜ間違えたのか…と思って調べたらルッカの作品の主人公がこの作者の名前に似ていたのだ。読みはじめてしばらくわからずずいぶん作風変わったなと思っていた。)のだけど...アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞、英国推理作家協会スティール・ダガー賞、アンソニー賞最優秀長篇賞の三冠を取った作品は伊達では無かった。主人公はテキサス・レンジャーの黒人捜査官。身内の犯罪に巻き込まれて休職中のところを旧友のFBI捜査官に頼まれてテキサスの田舎町で相次いで起きた殺人の周辺捜査に加わる。一件はシカゴから来た黒人弁護士の殺人、もう一件は田舎町のバーの白人ウエイトレスの殺人。テキサスの田舎町の黒人女性が営むカフェと貧乏白人のたまり場のようなバーの二箇所を中心として人種の対立や主人公と田舎町の人々、それぞれの過去やしがらみが徐々に暴かれていく。ミステリとしての謎解きも素晴らしいのだけどむせ返るような湿気というかアメリカ南部の雰囲気、そしてタイトルもジョン・リー・フッカーの曲から取られているのだが全場面に低く静かに流れているようなブルースの感触が素晴らしい。本国では続編も出てるみたいでそれも楽しみ。面白かった。

約1か月前

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サカナとヤクザ: 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う

タイトルを見た瞬間にポチりそうになり...結局中身を見ずに買ってしまいました。潜入ルポを得意とするライターが密漁の実態と暴力団の関与について告発する、という内容なのだけど、一方的かつ独善的な告発になっていないところがよく、分かりやすい記述ということもあってすいすい読めてしまう。本作で作者は移転前の築地市場の仲卸で働く他に、主に北海道の港を巡って密漁の実態を調べていく。アワビとナマコの暴力団による密漁や県が認めた最大漁獲量の10倍ものシラス(稚魚)が平然と流通しているウナギ、暴力団の組長が漁協のトップに君臨していた銚子など、近年はコンプライアンスの重要性が叫ばれ暴対法などでヤクザも厳しく取り締まられているというがここまで「黒い」業界があるのか、という驚きがあった。北方領土についての国の無策もあって密漁せざるをえない根室のケースを除けば日本の漁業の殆どが暴力団の資金源なのでは、と思わせられる。それにしても金のためとはいえ真夜中の海にこっそり潜ってアワビやナマコを採るとかちょっと自分には考えられないな…と思った。近年、鰻を食べるのを止めているが高級な海産物全般について食べるのをためらわさせられる内容。まぁそんなもの滅多に食べる機会もないのだけれど(笑) 我々はもう少し自分が口にするものについて真面目に捉えなければならないな、と思わさせられました。面白かった。

約1か月前

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宿命 警察庁長官狙撃事件 捜査第一課元刑事の23年

悔しかったんだろうな。とにかく行間からその気持ちが溢れているような作品。その昔、警察庁長官が狙撃され瀕死の重傷を負うという凶悪事件があった。同時期に発生したオウム真理教の犯行だとされた挙句、結局うやむやのうちに迷宮入りしてしまったのだが、その捜査にあたった元警官が真犯人を特定し、捜査の経緯を記した作品。驚かされるのはその地道な捜査内容。些細な証拠もきちんと裏どりし海外の捜査機関にも協力を求めて現地にも足を運ぶ。重要な証人とは信頼関係を結び、という具合で本当に丹念な捜査を行った結果、犯人を特定し容疑者もほぼそれを認めていたにも関わらずよく分からない理由で事件解決に至ることを妨げられてしまうまでが丹念に描かれている。小説と違って捜査していた本人と容疑者の語る内容だからドラマチックではないけれど迫力がある。卓越した能力を持ちながらも思想によって道を踏み外していく容疑者の存在も迫力があり見事な作品でした。面白かった。

約2か月前

サイレンズ・イン・ザ・ストリート

前作が荒削りながらもかなり面白かったので手にとってみたテロが最も激しかった頃の北アイルランドを舞台にした警察小説の邦訳二作目。本作から登場人物紹介の他に登場組織一覧が付録されるようになった。北アイルランドはプロテスタントの住民が多く、独立したアイルランドとは別にイギリスの一部となっている。本作の舞台となっている時代はカトリックの独立派テロ組織IRAを始めとして複数のテロ組織と国家権力が入り乱れて争う一番荒れていた時代。大学で心理学を学んだけども警察官を志した主人公はカトリックでIRAからは裏切者として命を狙われている。住民は警察車両にも平気で投石や発砲をしてくるし車に乗る前には爆弾の有無をいちいちチェックしなければならない。前作で逸脱しながらも大活躍した主人公は勲章を貰い昇進を果たしている。本作ではスーツケースに詰め込まれて捨てられていた首なし死体が地道な捜査から米国人のものだとわかり周辺捜査から別の殺人が浮かび上がり…という話。一作目よりかなり洗練された印象。謎解きにも無理がなく娯楽作品としても優れている。このシリーズはしばらく追いかけてみようと思っています。

約2か月前

こわいもの知らずの病理学講義

お恥ずかしい話、病理学って何?というレベルの私。正直に言うと半分くらいしか理解できなかったと思う。人間の体はどうやったら病気になるか、半分くらいは癌のメカニズムを平易に説明されているのだが用語がちんぷんかんぷんでなんとなく雰囲気が推測できる、くらいの理解度だったと思う。それでも基本的なところはなんとなくわかったし、昨今巷に出回っている怪しげな説に惑わされない、または惑わされそうになったときに何を参照すればいいかがわかった、と思う。非常にお話が上手く気さくな先生だったけどもほんとはもの凄く偉い方なんだなとわかったのも良かったです。さ

2か月前

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