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Toru Omae

欧米ミステリを中心に読んでいます

欧米ミステリを中心に読んでいます。 自分のは書評とかレビューみたいな大それたもんではなくて「これ面白かったから読んでみて!」レベルの感想文ですが…よろしくお願いします。

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コメントした本

ジーザス・サン

アメリカの短編小説を語る時に外せない一冊、と言われているのに未読でありました。ジミ・ヘンドリックスを聞いて文章を書こうと思ったとか、その辺の発想からして凡人とは違う...。タイトルはルー・リードの「ヘロイン」の一節からとったそうで、基本的に同じと思われる主人公が語るヤク中、アル中の話。最後に立ち直りつつあることが暗示されているものの基本的には悲惨な話の連続が、詩のような文章で綴られており凄いことは分かりますが、これは読む人を選ぶなぁ、と。

8日前

コンビニ人間

芥川賞受賞作でタイトルとテーマに興味があったのだけど、当時はかなり待たなきゃだったのが図書館の書架に普通にあったので手にとってみた。これはどうなんだろう…。大学卒業後も同じコンビニでバイトし続ける36歳独身女性が主人公。全く社会に適合できないのだがコンビニ店員であろう、マニュアルに従おう、とすることで辛うじて社会性を保ってる、という設定なんだけども…。生い立ちのエピソードからも主人公がいわゆる「普通の人」ではなくて精神に異常を持っていることは明らかで…そうすると物語も普遍性を持たず「どこか狂った人のお話」にしかなっていないような気がした。勝手に現代社会に対する批判のような視点を想定していたこちらのせいではあるのだけど…なんとなく腑に落ちない読後感。

10日前

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集落の教え100

友達から薦められたので手にとってみた。建築関係の本でその筋ではかなり有名な作品らしい。建築家が世界の集落を観察し、その集落を構成するに至った人々の考えに迫ろうとした作品。正直なところ集落の写真には強く心を惹かれたのだけど書いてある文章は自分には難解すぎて理解できたとは思っていない。しかし集落の写真を見てタイトルと文章を眺めているとなんとなく感じるものがあるというか...かなり古い作品で最寄りの図書館でも保管庫から借り受けたのだけどアマゾンでも普通に売っていたのでこれは買って何度か眺めてみたいと思いました。とても面白かった。

17日前

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アウステルリッツ

ノーベル賞も確実と言われながら事故で亡くなったドイツ人作家の遺作。 表紙に惹かれたので手にとってみました。 語り手である私が偶然出会ったアウステルリッツという建築史研究者。彼の語りを聴くうちにどんどん悲劇的な歴史が現われてくるという構成。 独特な写真が配置され、小説ともエッセイともつかない独特な作風が面白い。 前半が退屈だったのだがどんどん物語世界に引き込まれてしまった。いい作品でした。

23日前

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日の名残り

言わずと知れたノーベル賞作家の有名作。自分はこの人の作品は二作〜わたしを離さないで、夜想曲集〜しか読んだことが無く途中で挫折したものもあったりで、なんとなくリズムが合わないな、と思っていたのだけれど改めて読んでみるかと思って手にとってみた。昔は貴族の、今はその屋敷を買い取ったアメリカ人の執事として働く男が休暇旅行を兼ねて昔の女中頭に会いに行く、というだけの話で正直なところ中盤くらいまでは何が面白いのか…と思っていたのだけど後半にかけての広がりが素晴らしかった。尊敬し仕えていた貴族の没落やなんとなくお互いに愛情を持っていた女中頭との関係など、事実関係を描くことなくそれでいて状況を読者に分からせながら、なんとも言えない喪失感を漂わせてくる辺りがやはり只者ではないなと。それでいてそこはかとない希望も感じさせられ読後感も悪くない。これは評価されるわけだ。途中で投げ出した他の作品も改めて読んでみようと思った。

24日前

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東京「裏町メシ屋」探訪記

たまに興味深くブログを読ませて貰ってる方の本が出たので手にとってみた。タイトルからすると食べもの屋さんガイドのようだけどどちらかと言うと東京の観光ガイドというか紀行文というか。その土地の雰囲気を知るのに古くからやってる飲食店が分かりやすいから取り上げられているからであって、決してグルメガイドの類ではない。描かれている主な地域は板橋、銀座、日本橋、神田、上野、玉川上水沿い、北区、横浜、吉原、向島、葛飾、江東、品川、足立といったところ。徒歩か自転車で町を巡って特徴的な建物を見たり古くからの飲食店に入ったり、という内容。自分にとっては馴染み深い場所もあったり行ったことのないところがあったりしたけど馴染みあるところであってもこんなところがあったのか、という驚きがあったりでとても楽しかった。

24日前

ハックルベリー・フィンの冒けん

もう文句なしの名作で大昔に読んだことがあるけども好きな翻訳者の新訳ということで手にとってみた。なんとなく「トム・ソーヤー」がテレビアニメでやってたこともあってか子供向けの作品、という先入観があって読んでなかったのだけどヘミングウェイだったと思うがそういう自分が気に入ってる作家が褒めてたので試しに読んでみたらあまりの内容にひっくり返りそうになった記憶がある。その意味では「トム・ソーヤー」よりも本作のほうがより過激だという記憶があっての再読。まずやはり柴田さんの訳が素晴らしい。俺は英語ができないからあれだけどあとがきによると元々の原作は頭はいいけどまともな教育を受けていないハックルベリー・フィンが書いた、という体を取っているので文法や綴がめちゃくちゃで、喋り言葉そのままの感じなのか、でもリズムは良い、というものらしい。これを翻訳でどうにか再現しようとした結果がタイトルの「冒けん」にも現れている。ざっと見た感じ、ひらがなだらけでこれは読みにくいかも...と思ったけどもいざ読んでみるとするするいけてしまう、こういうところが名翻訳者たる所以なんだろうなと改めて感心した。昔読んだのはたぶん端正な翻訳になっていたと思うのだけどこちらのほうがなんというか文章に躍動感とリアリティがあって楽しく読めたと思う。ストーリーには今更触れる必要はないと思うけども大河を筏で進む様子や自然描写が改めて素晴らしいと思ったのと、貧乏白人、ペテン師やリンチなど今日にも通じる問題提起が実にうまく為されているなという印象。凄まじく悲しいシーンや思わず声を出して笑ってしまいそうな場面など何度読んでも素晴らしい作品。しかし時代背景から差別用語や差別的な内容がてんこ盛りで~もちろん作者は問題提起としてそうしているわけだけども~現代のアメリカ人、特に白人が読んでどう思うのだろうか、とも思った。

約1か月前

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潜伏キリシタン 江戸時代の禁教政策と民衆

最近読んだ本から。 世界遺産への登録がらみなのか店頭で似たようなテーマの本がフィーチャーされていてちょっと興味もあったので手にとってみた。維新で鎖国が終わった後に駐留する外国人のために作られた浦上天主堂に現れたキリスト教徒を名乗る日本人に欧米人は驚愕と感動を覚えたというが秀吉の禁教以来どのように信仰を維持していたのか、ということについては奇跡の一言で片付けられていたような気がしていた。そのあたりをすっきりさせたくて手にとってみた。キリスト教徒が潜伏できたのは大まかに言って次の通り、というのが作者の考え。島原の乱の記憶が為政者、農民ともに強烈すぎた。キリスト教徒以前に村落共同体の一員としての役割を果たせていた。島原の乱については領主たちもかなり悲惨な末路をたどっており支配者層にも農民側にもかなりのダメージを残したことが後の政治に与えた影響がよくわかった。また、江戸時代の農民がパブリックイメージとは異なってそれなりの地位と勢力を持っていた証拠に様々な裁判の記録が現在にも残されておりそれを丹念に読むことでキリスト教徒を穏便に見逃そうといった為政者側の理屈も分かるようになっていた。説得力もかなりあってなかなかに面白かった。

約1か月前

奇妙な同盟 I

タイトルそのままに第二次大戦の勝者側の三人のリーダー達の駆け引きを英国のジャーナリストが丹念に追ったもの。ドイツの脅威を直接受けているイギリスとソ連、勝つためにアメリカを戦争に引きずり込みたいイギリス(チャーチル)となるべく戦争には直接かかわらず、ドイツと日本にはソ連に対処をさせたいアメリカ(ルーズベルト)、それに自国民の犠牲よりもむしろ戦後の勢力関係構築に目が行っているソ連(スターリン)の実際のやり取りが詳細に記述されていて興味深い。新たな発見や説はなくてだいたい一般的に知られている内容をより詳細に描いているな、という印象に。ただ詳細に過ぎてちょっと冗長かな、という気もした。ジャーナリストらしく会話内容はもとより食べたものや飲んだものも記述がなされていてこの時代の支配層の過大な飲酒と喫煙量には驚かされた。もう少しコンパクトであれば再読したいという印象。

3日前

ダ・フォース 上

以前から巧いミステリ作家だったけども、麻薬カルテルと警察の凄まじい闘いを描いた「犬の力」「ザ・カルテル」という凄い作品を世に出して大作家的な位置に来た感のある作者の邦訳最新。これもまた凄まじい作品だった。 主人公はニューヨーク市警の部長刑事で「マンハッタンノース特捜班」というエリート部隊を率いている。荒っぽい手入れで何度も派手な成果をあげており一般市民にも顔が売れている存在だが、マフィアから賄賂を取り、手入れでは現金をくすね、検事や内部監査の担当までも金の力で押さえているという汚れた警官でもある。彼を取り締まるものは一見誰もおらず言わ王様として街に君臨している存在。そんな彼はあるドミニカ人麻薬ディーラーの手入れで無抵抗の麻薬ディーラーを殺し、金だけではなく大量の麻薬をくすねることで一線を超えてしまう。そんな男が連邦警察に目をつけられて、という話。いわゆるヒーローの転落話なのだけどそこはこの作者の巧いところでとことんまで転落しきった主人公に最終章で光を当て直し、という展開でストーリーを単なるノワールに終わらせない。次にどうなるのかが気になってどんどんページを追っていってしまい眠れなくなる感じの作品。素晴らしく面白かった。これはおすすめ。

3日前

B.C.1177

今のギリシャ、トルコ、シリアからパレスチナ辺り、イラン、イラク、エジプト、当時の国名だとミノア・ミュケナイ、ヒッタイト、ミタンニ、カッシート朝バビロニア、エジプトといった辺りは紀元前1300年頃をおそらくピークとしてかなり高度な文明がありグローバル文明としか言いようのない交流と繁栄をしていたのだという。これが紀元前1177年辺りに一気に崩壊し、エジプトを除く国々は滅んでしまいギリシャに改めて文明が興るまでに数百年を要した、そしてこれら文明の消滅は「海の民」による侵略と破壊が原因と言い伝えられているのだという。本作はその滅亡の原因が本当に侵略によるものなのか、を検証しようという試み。前半では滅ぶ前の繁栄が描かれているのだがこれが想像を超えて素晴らしく、沈没船や粘土板に彫られた文書から多くのことが分かっているのだが、当時の大国同士は縁戚や貿易で頻繁にやり取りしあっており貿易の量も銅が10トンとかそういうレベルでやり取りがされていたのだそうだ。文書も大量に発見され解読されており例えばパビロニアの王がエジプトのファラオに「金を贈ってくれたら娘を一人差し上げます」みたいなものまで発見されているのだという。後半ではそれらがいかに滅んでしまったか、の検証が行われるのだがこちらもかなり説得力のある論旨展開がされており興味深かった。かなりの面白さ。図版の類がもっとあるとより良かったと思う。おすすめです。

10日前

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羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季

発表されたときにかなり話題になったのを覚えていたのと最近読んだ本で取り上げられていたので手にとってみた。イングランド北部の湖水地方と呼ばれる丘陵地帯で昔ながらの牧畜を営む羊飼いが書いた本。600年もこの地で羊を飼ってくらしてきた一族に産まれ作者は生まれたときから家業である牧畜を継ぐものと自分でも思っていて学校も十代半ばでやめてしまう。しかし父親との確執から大学に行くことを決意しオックスフォードに入ってしまう…面白いのは大学に入ったことで父親との仲が修復され、世界でも珍しいオックスフォード卒の羊飼いを現在営んでいる。祖父の代からの羊飼いの日常と歴史を描いているのだが殊更に家業を美化することもなく周囲の自然を殊更に持ち上げることもなく淡々と描いているところに好感が持てた。自分が子供の頃通っていた学校の話が出てきてそこは正直なところ鼻につくし読みにくいしそもそもおかしいとも思うのだけど...全体としては非常に面白かった。変なイデオロギーの話が無かったところも良い。

17日前

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偽りの銃弾

スポーツ・エージェント兼探偵が活躍するマイロン・ボライター・シリーズが気に入ってるこの作家の名前を久しぶりに見たので手にとってみたこれは単発もの。主人公は元軍人で戦闘ヘリコプターの操縦士をしていた女性。しかも大富豪の息子と結婚している。中東で民間人を攻撃してしまったことを暴露サイトですっぱ抜かれて今は退役している、という設定。夫である大富豪の息子が殺されてしまうのだが、自分の不在中の娘が心配で仕掛けた隠しカメラに死んだはずの夫が写っていることを発見してしまう。実は夫のところで働いていた自分の姉も殺されており。夫が殺された事件に何か裏があるのでは、という思いから独自に調査を始める...という話。正直、設定に現実感がなく次々に「実は」みたいな話が出てくるので9割がた読んだところまででこれは久しぶりに酷評しなければいけないのか…と思ったのだけど最後の数十ページが見事などんでん返しだった。やはりこの作家は上手い。しかし…マイロンのシリーズがやはり読みたいな、とも思ってしまった。込み入った前半分に耐えられる人にはおすすめかも...

17日前

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猫はこうして地球を征服した: 人の脳からインターネット、生態系まで

猫好きなものでなんとなくタイトルに惹かれて手にとってみた。作者に指摘されて改めて考えて見ると猫というのは実に不思議な生き物で、犬や家畜などと違って人間と共に生活している動物の中で唯一、人間の役に立つことがほぼ何もない。ネズミ駆除、と言われているが実際には自らの娯楽以外の目的でネズミを狩ることもないらしい。更に読んで知ったのだけど他のペットや家畜と違って人に飼われるための進化を殆どしていないらしい。ほぼ形態が変わらないのでいつから猫が人に飼われだしたのか、ということが分からないらしい。更にいうと人に飼われている、というのも怪しいらしくニャーと鳴くのもそれによって人が反応するからやっている、つまり人をコントロールしているらしい。鼠と同じくらい繁殖力を持ちある種の寄生虫まで媒介する生態系の破壊者とほぼダークな側面がこれでもかと描かれているのだけど…筆者が猫好きだからか嫌な感じは皆無でますます猫に興味が湧くという不思議な作品でした。面白かった。

24日前

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吉原で生きる

何故か心惹かれてしまう性風俗モノ、飛田、売春島の話が面白かったからこれもまた特殊な街、吉原を描いたものを読んでみようと思って。残念ながらというか自分は吉原はちゃんと行ったことがなくて千束のめっちゃ美味い立ち食い蕎麦やさんに行ったついでの昼間にちよっと覗いてみただけなのだけどやはり異様な雰囲気だった…。本作では現役や引退したそれも高級店や大衆店のソープ嬢や地元の自治会長、吉原専門のタクシーの運転手やソープ嬢専門のカメラマンなどなど吉原という街で生きてるいろんな職種の人達のインタビューを纏めたもの。こういう世界もあるんだなぁ、とただただ驚き。江戸時代から続く色街の今と今後が興味深かった。

24日前

ギリシア人の物語III 新しき力

作者最後の「歴史エッセイ」ということもあり、また取り上げるテーマがアレクサンダーということもあって楽しみにしていた作品。そうかエッセイなんだ...確かに小説ではないし歴史書にしては作者の感想や思いが前面に出過ぎているし、と思っていたがエッセイと言われるとなんとなく納得感がある。それにしては長いけども。ギリシャで遂に民主政が破綻し都市国家の力が衰たところに取って代わるように勃興してきたマケドニア王国のフィリッポス、アレクサンドロスの二代記。ハンニバル、スキピオ、カエサルと古代の名将が口を揃えて最高の武将と評するアレクサンドロスの戦争と征服がいかなる動機といかなる方法で為されたものでそれを作者がどう表現するか非常に楽しみにしていたのだけども期待は裏切られなかった。ギリシャの各都市国家から半蛮族扱いされオリンピックにも呼んでもらえなかったマケドニア王国、都市国家テーベの人質となることで都市国家の良いところ、特に軍事面において、を吸収し国力を一気に高め、ついにはオリンピックの主催者となり名実ともにギリシャの代表者の地位を得たフィリッポス。そして父の暗殺により若くして王位についたアレクサンドロス。彼の幸運は国をまとめ上げ、かつ素晴らしい教育をほどこしてくれた父を持ったこと。それによって国の内情に煩わされることなく、王位についた瞬間から長年ギリシャ諸都市を苦しめてきたペルシャ王国の圧迫に立ち向かうことができた。従ってアレクサンドロスの征服とは自分の王国を拡大し富を得ることが目的ではなく、ペルシャ王国の圧力を完全に排除することが目的で支配できた地域もペルシャ王国の領土である、ということが分かる。富貴を求めず常に軍団の先頭...文字通り騎馬軍団の先頭に立って敵に突っ込んでいくのだ...に立って戦い続け将も兵も分け隔てなく扱い、敗れた者への扱いも公正、好奇心に満ち溢れた若者の姿が作者独特の思い入れ溢れる筆致で生き生きと描かれている...ためにアレクサンドロスが亡くなったあとが急に尻すぼみになってしまうところも楽しい(笑) これで最後か、と残念に思う半面、書きたいことを書き尽くしたんだろうな…お疲れさま、というねぎらいの気持ちもある。本当に長い間楽しませてもらってありがとう、という思い。いい作品でした。

約1か月前

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ムシェ 小さな英雄の物語

前作「ビルバオ・ニューヨーク・ビルバオ」が良かったバスクの作家の第二作。スペインとフランスの間にあって独自の言語と文化を維持するバスク地方はスペイン内戦の際に共和国側についた結果、民族の悲願に一歩近づく自治州の地位を手に入れる。その結果…ファシスト側の攻撃対象となりヒトラーやムッソリーニの手助けを得たフランコの攻撃対象となりかの有名なピカソの名作を生み出すことになった。本作ではファシストの空爆を受けて2万人のバスクの子どもたちが欧州のいろんな国に疎開した史実をテーマとしている。三部構成で、一部は主に疎開する子どもについて、二部は受け入れたベルギーの里親が対ナチスのレジスタンスに身を投じた結果、悲劇的な最期を遂げる様、三部でそのまとめ、という流れになっている。疎開した子どもと里親の交流については最小限に抑えられており、それぞれを淡々と描くことで逆に当時の理不尽さを浮き彫りにする形となっている。楽しいテーマではないが興味深く読ませる作品だった。

約1か月前

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寵 臣 鬼役

すごく悪いやつがいて理不尽に酷い目に合う人がいて...でも最後は強い主人公がばっさりと悪を成敗してくれて良かった、という22巻までと同じ流れだが主人公の後ろ盾だった高位の幕臣が壮絶な最期を遂げてこれからどうなるんだ、という展開になった。しかし...これだけ悪い奴ばっかりいたら幕府も大変だっただろうとか思わんでもない(笑)

約1か月前