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Toru Omae

欧米ミステリを中心に読んでいます

欧米ミステリを中心に読んでいます。 自分のは書評とかレビューみたいな大それたもんではなくて「これ面白かったから読んでみて!」レベルの感想文ですが…よろしくお願いします。

902

コメントした本

殺意

生きてる間は全く評価されなかったノアール界の大物。最近まで存在を知らなかったのだけど一作読んでみたら面白かったのでまた手にとってみた。これはかなり後期の作品らしくちょっと小慣れてる感があって粗削りの魅力は薄いけれど楽しい作品だった。海辺の街が舞台。ゴシップ好きで街の鼻つまみ者の女を巡る話。街には夫も含めてこの女を殺したいと思っている者だらけ。検察官や顧問弁護士までが殺意を持っているという状態。最後に殺されるわけだけど果たして殺意を持ってる人間のうち誰が、というフーダニット。個々の登場人物の独白の連続で語られていくストーリーが斬新で戦前の作品とは思えない。死ぬ間際に「俺は約10年後に有名になるから原稿は取っておけ」と言い遺したというエピソードもかっこいいこの作家。他の作品もポツポツ読んでいきたいと思います。

6日前

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暗殺者の潜入〔上〕

暗殺者グレイマンシリーズの邦訳最新。今、一番優れたアクション・シリーズと思うのだけど本作もまだ勢いを保っている。元CIAの軍事組織で最高級の腕前とされていた主人公、身に覚えのない理由でCIAから「見つけ次第射殺」とされていたのも昔の話、今はCIAからも発注を受けるフリーランスの立場で活動している。本作ではシリアの反政府組織からフランスに来ているモデルを拉致してほしいという依頼を受ける。このモデルがシリアの大統領の愛人で、内戦を止め得る情報を持っているからということだったのだが…拉致してみるとシリアに大統領との間に産まれた子供を残してきているということが分かってしまう。仕方なく民間軍事会社の戦闘員に偽装して内戦中のシリアに渡り、子供と子守の二人を救い出すという困難に挑む、という話。冒頭から主人公がイスラム国に処刑されつつある捕虜の状態で現れる作品。ゴルゴ13の小説版と思って貰えばだいたい間違いないのだが、本作はシリア内戦という現在進行形の危機を舞台に名前こそ変えてあるが実在のシリア大統領夫妻を彷彿とさせる人物も出てきてよりリアルな印象。強力な悪役も出てきて今後もますます目が離せないシリーズ。

13日前

決定版 天ぷらにソースをかけますか?: ニッポン食文化の境界線

タイトルに惹かれて。日本における食べ物の嗜好の分布をネットを使って調査し考察を加えたもの。じつに面白いしとても重要な作品とも思う。彼我の相違について、「違うからこそ面白い」と「違うからおかしい」という捉え方の違いには言葉にするより大きな差があると思う。少なくとも後者の立場を取る人間にはなりたくない。さて、本作における調査項目は以下のとおり。これが想像以上の違いがあって面白い。皆さんはさてどうでしょう?(笑) ・天ぷらにソースをかけますか、またはかけていたことがありますか。 ・紅ショウガの天ぷらを知ってますか。 ・小豆やお餅が入った甘い食べ物をなんと呼びますか。 ・中華まんには何かつけますか。 ・呼び方は肉まんですか、豚まんですか。 ・鉄板で焼くコナモンが好きですか。 ・釣鐘型のたこ焼きはありますか。 ・お肉とは牛肉、豚肉、それとも? ・豆の炊き込みご飯はありますか。 ・いわゆる「冷し中華」を何と呼びますか。 ・それにマヨネーズをつけますか。 ・甘納豆が入った甘い赤飯を食べる地域ですか。 ・茶碗蒸しに砂糖を入れますか。 ・茶碗蒸しに栗の甘露煮は入りますか。 ・卵焼きは砂糖入りで甘いものですか、出したっぷりで甘くないですか。 ・味噌汁に唐辛子など辛いものを入れますか。 ・ニラの味噌汁は普通にありますか。 ・漬物を煮ますか。 ・福神漬けをなんと読みますか。 ・カレーライスに卵を乗せる場合、生卵ですか。 ・住んでる地域にカレー蕎麦はありますか。 ・納豆は好きですか。 ・納豆に砂糖を入れますか。 ・正月に食べる「年取り魚」は鮭ですか鰤ですか。 後半は嗜好の境界線を体感するために東海道を歩いて京都まで行ったり、糸魚川沿に新潟から静岡まで行ったりとにかく労作。素晴らしかった。

13日前

天皇はなぜ紙幣に描かれないのか: 教科書が教えてくれない日本史の謎30

タイトルに惹かれて。有名な先生なのかな…自分は存じあげなかったけれど…の歴史エッセイ集。新書とかで日本史ものが流行ってたのでその流れかもしれない。タイトルになった話もさることながら、お寺の落書きにまつわる話とか、古代ではなく近世の木簡の話とか、義経ジンギスカン説とか、騎馬民族征服説とか、よく言えば縦横無尽に、悪くいうとまとまりなく(笑)書かれた話がどれも興味深く楽しかった。役に立つかどうかは別として…雑学好きの人にはおすすめかな。

25日前

SPQR ローマ帝国史II――皇帝の時代

イギリスではかなり有名な古典学者が書いたローマ史ということで英国圏ではかなり売れたらしい。上下二巻で共和国編の方が人気があるらしく図書館の順番が回ってこないので下巻の帝国編を読んでみた。初代皇帝のアウグストゥスから帝国内の全ての自由民に市民権を与えたカラカラまで、が作者の思うローマ帝国でそれから後は実質的には異なる国、ということらしい。我が国では塩野七生さんの長大な労作があって、それも自分は楽しく読んだのだが、これはローマ帝国の長い歴史を俯瞰で見たうえでコンパクトにまとめられており、どちらかというと庶民の苦しい暮らしであるとか格差問題とか暗い側面によりスポットライトが当てられている印象。それだから面白くなかったかと問われるとこれが凄く楽しい作品であった。平易な表現とどこかユーモアのある語り口で飽きずに楽しく読めた。共和制編も凄く楽しみ。

約1か月前

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知ってるつもり――無知の科学

いろんなとことでいろんな人が褒めてたので手にとってみました。タイトルは日本人ならほぼ全員想像してしまうテレビ番組があるのでこれはちょっと考え直したほうが良かったのではないか、と思いましたが…。 我々人間の物事の認識や理解の力はもの凄いのになぜフェイク・ニュースとかエセ科学にひっかかってしまうのか、を気鋭の認識学者達が解き明かしたもの。なぜすごい能力があるのに知らないことや分からないことを安易に「知っている」と思ってしまうのか、についてが詳しく解説されていてエピソードがいちいち面白かった。世界のすべての仕組みを個人で理解しようとしてもしようがなく、もし理解できたとしたらそれはそれで壊れてしまうであろう我々は集団知をうまく活かしていくしかない、ということなのだが...今の世の中では非常に重要なことが書かれているような気がしました。これはじっくり読み返したいと思いました。

約1か月前

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IQ

欧米の有力なミステリ新人賞を総ナメにしたということですごく楽しみにしていた作品。舞台はロサンゼルス南部。主人公はイニシャルと頭の良さから「IQ」と呼ばれている黒人青年。唯一の保護者である兄を亡くしてからその才覚で一人生き抜いてきた無免許探偵という設定。本作では腐れ縁の元ギャングで現胡散臭い実業家から持ち込まれた「有名ラッパーを狙っている殺し屋を探せ」という事案に挑む。正直なところミステリとしてはかなり荒削りだけども、エキセントリックというかサイコパスというか…のかなりいかれてる殺し屋とか、売れ過ぎておかしくなってしまったラッパーなど、登場人物の設定や描写がかなり面白く、細部の描き方やちょっとした挿話も上手い。BGMとしてケンドリック・ラマーなどかけながら読んでみたらかなりハマった。これは楽しみな作家に出会えた。あとがき読んでびっくりしたのはこの作者、黒人ではなくて家が貧しくて黒人街で育った日系人で50過ぎてからデビューした遅咲きの新人なんだそうだ。早くも次作が楽しみ。

約2か月前

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すべての見えない光

2015年のピュリッツァー受賞作ということでちょっと重たい作品なのかなと躊躇しつつも手にとってみたが、さすがに素晴らしい作品で引き込まれてしまった。舞台は海に面した城壁で囲まれたフランスの街、サン・マロ。時代はノルマンディー上陸作戦の二ヶ月後くらい。資産家の大叔父を頼ってパリから父親と逃げてきた盲目のフランス人の少女と、炭鉱町の孤児院で育ったドイツの少年兵の二人が主人公。失明からパリから逃げ出してサン・マロでの生活に至る少女の物語と、優秀さ故に炭鉱町から抜け出しナチの士官養成学校に入ったものの若くして前線に送られてしまった少年の物語、それぞれの過去と現在が交互に語られていき、それぞれの人生が物語の終盤で一瞬交差する。もちろんヘヴィな物語なのだがサスペンスの要素も盛り込まれていて目が話せず一気に読めてしまう。生き残った者たちの後日談もあり読後感も良かった。素晴らしい作品だった。

約2か月前

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世界から消えた50の国 1840-1970年

こういう滅亡ものがなんか好きなんで手にとってみた。作者は学者ではなく建築家なのだが切手収集を趣味としていて今は無き古い切手を発行した国について思いを馳せてみた、という感じの作品。なので深い掘り下げとか政治的にどうこうといった話はなくて印象的なエピソードが少し採用されているくらい。日本の関連では満州国と琉球が取り上げられているがそれぞれ731部隊と集団自決だけが取り上げられていて正直なところ少し不快だったのも事実。こんな歴史もあったのか!とエピソードを広く眺める分には良いかな、という感じ。

約2か月前

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イラクサ

短編の女王とも称される作者。以前読んだものどれも素晴らしくじっくり味わいたいので手に取るのを控えていたのだがたまらず読んでしまった。女性の作家にこういう表現が良いのかわからないけども骨太かつ繊細な作品が9編。短編集の原題は「Hateship, Friendship, Courtship, Loveship, Marriage」という。このタイトル作の邦題が「花占い」。 とにかくこの人の短編、これまで駄作があった記憶がない。強いていうとこういう邦題のつけ方くらいかな…不満があるのは。舞台はだいたいカナダの片田舎、設定が突拍子もないわけでもなく大事件が起こるわけでもなく…なのにこれだけドラマを感じさせる短編が書ける人も珍しいのでは。本作ももちろん全編が素晴らしかった。ノーベル賞受賞後しばらくして断筆宣言してしまった作者。まだ翻訳されていない作品や読んでない作品がいくつかあるのが救い。まだ楽しみたいと思います。

13日前

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花殺し月の殺人――インディアン連続怪死事件とFBIの誕生

久しぶりにここまで酷い話を読んだ。ノンフィクションであることが恨めしいくらい。 アメリカ先住民にオセージ族という部族がいて、他の先住民と同じく白人に住んでた土地を追い払われ荒れ果てたオクラホマの片田舎に居住地を与えられる。彼らが他の部族と異なったのはその居住地〜ちょっといいところだとまた白人が奪いにくるからと自らわざわざ僻地を選んだ〜から大量の石油が出たこと。さすがの白人達も気が引けたのかそこからも更に追い払うことはせず定期的に国から金を払うことにした、というのが物語の前提。そのオセージ族で謎の連続殺人が起きる。インディアンが何人死のうが構わないという風潮の中、FBIを立ち上げようとしていたフーヴァーがこの事件に目をつけて優秀な捜査員を送り込み、という話。ちょっとネタバレになってしまうのだけどオイルマネーを奪おうとあの手この手で犯罪を犯す連中の悪辣さにはもはや驚きしかなく、人間はここまで悪くなれるのか、という印象。フーヴァーのクソ野郎ぶりも聞きしに勝る感じで読んでて本当に切なくなる。しかもエピローグの章で更に打ちのめされて、という構成。ものすごく嫌な話だけど読み物としてはかなり面白かった。嫌な話でも平気、という人にはおすすめします。改めていうけど…これがノンフィクションとは…。

25日前

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鬼煙管 羽州ぼろ鳶組

個人的に今、一番ハマっている時代もの娯楽作品。楽しみを後回しにできない弱い人間なので次々に手に取ってしまう(笑) 本作では舞台が京都に設定されており京都町奉行の長谷川平蔵(あの鬼平の父親)から支援要請を受けた主人公たち江戸の大名火消しの主要メンバーが慣れない京都で連続放火魔に立ち向かう、という話。朝廷と幕府のある種の争いが背景に設定されておりスケールの大きな事件が描かれている。四作目の本作でもテンションは全く落ちておらず見事な出来。はやくも次作が読みたくてたまらない。お見事です。

約1か月前

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コンクリンさん、 大江戸を食べつくす

日本文化にはまったガイジンさんのお話。ちょいちょいこの手のは出てくるけども本作に興味を持ったのは作者が個人的に馴染み深い人形町在住ということ。読んでみてびっくりしたのは作者が最初に暮らしたのが我が郷里の奈良県で、そのあと住んだのが人形町ということで、自分の生活圏とけっこうかぶってるところかな。知ってる街やお店が出てきて楽しかった。

約1か月前

熊と踊れ(上)

スェーデンのミステリで何年か前に凄く話題になってたなということで今頃手にとってみました。彼の国では数年前まで有事に備えて国のあちこちに武器庫があったらしく、そこから軍用の強力な武器を盗み出した兄弟を中心とした強盗団の話。酒を飲んでは暴力的になる父親の強烈な影響の下に育った兄弟の生い立ちと現在の犯罪が交互に描かれる。複雑な筋書きではないのでさらっと読めてしまうし、暴力的な父親も基本的には外部に力が向かうタイプなので読後感もそこまで悪くない。しかしあとがきを読んで何より驚いたのはこれが実話をもとにした話で作者の一人は実際の強盗団とは兄弟だったということかな。なんと最近続編が出たらしく…いったいどういう内容なのか興味が尽きない。面白かった。

約1か月前

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制裁

スウェーデンの人気ミステリ・シリーズの一作目ということで手にとってみた。子供を狙ってレイプし惨殺する、という凶悪な犯罪者が脱獄した。そのニュースを見た作家は脱獄犯が娘を送った保育園の外にいた男だと気づく。急いで保育園に駆けつけたのだが…という話。読む前の予想では新たな事件を防ぐ話なのかと思っていたけども、そんなことは無くて北欧のミステリにありがちな暗く救いのない展開になる。シリーズものらしくアクの強い刑事たちは出てくるのだけども狂言回しにすらなっていなくて本作ではあまり登場してる意味がない感じ。かなりきつい感じでシリーズの他の作品の読んだものか悩んでしまったが最後まで読ませる実力はあった。あとがきで知ったが作者二人のうち一人は元犯罪者ということで刑務所内の描写が妙にリアルな感じで迫力があった。

約1か月前

九紋龍 羽州ぼろ鳶組

最近の時代ものでは今、一番のお気に入りのシリーズ。本作は三作目。火付盗賊改の長官が長谷川平蔵(あの鬼平の父という時代設定)で無くなったこともあり、火付けをしてその隙に大店を襲い子供まで皆殺しにしてしまうとう凶悪な賊が江戸に戻ってきた。火消の立場でこの事態に臨む主人公たちに、突然国元から乗り込んできた藩主一族の有力者がコスト削減を言い渡し、更には個人の能力では最高と言われる町火消の頭の謎の動向が絡んできて...という話。サスペンスの要素もあり火事から人の命を救うという目的で連帯する火消したちの熱い気持ちがあり、恋愛あり涙ありでもうほんとに素晴らしいエンターテインメント。自作も楽しみでならない。

約2か月前

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終焉

おそらく三部作の完結編。ナチに職場を追われたユダヤ人敏腕刑事の物語。配偶者が支配民族だったので収容所送りにはならなかった彼が、ゲシュタポの秘密捜査のために使われる一作目、友人で自分を匿ってくれたドイツ人女医にかけられた殺人容疑を晴らすために奔走した二作目を経てついにソ連軍によってベルリンが陥落させられる本作。前作の結果、妻と二人で暗黒街の顔役が持つビール工場に隠れ住んでいる主人公。たまたまいわくありげな男も同じ場所に匿われたことからソ連軍がドイツの核技術情報を捜す手伝いをさせられることになり、一方で妻はソ連兵に暴行され、その報復をなんとか図りたくて…という話。陥落寸前、そして占領されたベルリンの様子が緻密に書き込まれていて迫力があり素晴らしく本筋よりもそちらに気を取られてしまう。本作ではミステリもさることながらアクションがより多くなっており迫力もあって読み応えがあった。この作者の作品は今後も読んでいきたいと思う。

約2か月前

夜哭烏 羽州ぼろ鳶組

面白い時代ものが読みたい、面白い娯楽作品が読みたい、という人がいたら真っ先に薦めるだろうこちら。ほんとに面白い。旗本家をクビになった火消侍がとある小藩の火消を立て直すべくスカウトされチーム編成をする過程が中心の前作から、本作では幕閣の権力争いによる凶悪事件が前面に出された感じ。当時の火消にはまずそのテリトリーを受け持つ火消団体が鐘を打たないと他の火消は手を出してはいけないというルールがあったそうでそれを逆手にとった連中が主だった火消の家族を攫い鐘を打ったり出動したりしないように脅す、という話。火消たちの連帯感や謎解き、火災シーンやアクションシーンの見事さなど本作も素晴らしい完成度。実に面白かった。次作が楽しみでならない。

2か月前

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